宇野常寛

宇野常寛 (評論家/「PLANETS」編集長) 連絡先→ wakusei2ndあっとyahoo.co.jp 070-6449-6489 著書に『ゼロ年代の想像力』『リトル・ピープルの時代』 『母性のディストピア』など。

宇野常寛

宇野常寛 (評論家/「PLANETS」編集長) 連絡先→ wakusei2ndあっとyahoo.co.jp 070-6449-6489 著書に『ゼロ年代の想像力』『リトル・ピープルの時代』 『母性のディストピア』など。

マガジン

  • u-note(宇野常寛の個人的なノートブック)

    宇野常寛がこっそりはじめたひとりマガジン。社会時評と文化批評、あと個人的に日々のことを綴ったエッセイを書いていきます。いま書いている本の草稿や没原稿、なども載せていく予定。SNSでは書く気にならないことを、実はかなりマメに更新しています。月に数万字は余裕で更新しているので、かなりお得です。

最近の記事

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「個人的なノートブック」を再開します。

突然ですが、個人のノートブック(定期購読マガジン)を再開します。3年ほど前に、実は少しだけやっていたことがあるのだけれど、そのときは手が回らなくて(ウェブマガジン「遅いインターネット」)の立ち上げの時期でした)数ヶ月で閉じちゃいました。でも今回はしっかり続けたいと思っています。 なぜ、このタイミングで再開するのか……というと、書きたくなったからとしか言いようがありません。この4年ほど、僕はどちらかといえば編集者としての仕事ーー「遅いインターネット」「モノノメ」などーーに注力

    • ネットリンチで「安心」するのではなくて、話を聞きに来てください!

      音喜多駿がXのアカウントで、僕らPLANETS主催の年末(12.21)のイベントを告知したところ、「このメンツはダメだ」ということで、左派の人たちから引用リツイートで罵詈雑言を浴びせる「祭り」が展開されていることに、知人から指摘されて昨晩気が付いた……。 どうも、左派の人たちが嫌悪する論客が多数参加しているので、「これはけしからん」ということらしいが、中には登壇者の容姿を攻撃するものまであり、まあ、今どきのSNSなんて「こんなもの」なのだろうけど、真面目にコメントすれば悪質

      • 陰謀論を用いた情報戦が常態化するリスクについて

        先日、音喜多駿との対談を収録した。話題は兵庫県知事選挙、先の衆院選、メディアと民主主義の関係、これからの市民運動やシンクタンクの在り方……など多岐に渡ったのだけど、その翌日に音喜多さんのXの投稿を観て、少し「あれっ」と思ってしまった。 たしかに、彼は収録時に斎藤元彦に同情的な立場ーー「そもそも」の問題を煽ったマスコミが一番悪いーーという立場で話していた。しかし僕の考えは仮にそうだとしてもそのカウンターとして立花孝志が今回行ったような陰謀論の流布などの行為は、倫理的に一発アウ

        • 兵庫県知事選挙について

          さて、本当は来月1年ぶりに出す新刊の宣伝をした方が良いのだろうけど、今日は兵庫県知事選について考えたことを書こうと思う。 このけんに触れると、その瞬間に「お前はどちらの味方か」と問い詰められそうだけれど、僕がしたいのはそういう話じゃない。とりあえず僕が兵庫県に暮らしていたら斎藤元彦には投票しなかっただろうと思うが、僕の興味はもうちょっと手前の、メディア状況とか民主主義の制度疲労とか、そういったところにある。 最初に確認しておきたいのは、今回のけんで一番醜悪なのは後だしジャ

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        • u-note(宇野常寛の個人的なノートブック)
          ¥980 / 月

        記事

          46歳になりました。そして「家」ではなく「庭」の話を

          【46歳になりました……。そして1年ぶりに本を出します。渾身の一冊です!】 来月、1年ぶりの新刊を発売することになりました。 タイトルは『庭の話』ですが、情報社会論の本です。「プラットフォーム化した資本主義とどう付き合っていくのか」という大きな話を、消費とか労働とかケアとか制作とか、そういった小さな身近なものごとを手がかりに考え抜いています。「群像」で1年半連載したものを、丸1年かけてブラッシュアップしました。たぶん、今までの僕の本の中で一番遠くまで行けた本だと思います(

          46歳になりました。そして「家」ではなく「庭」の話を

          (公開の場で大勢と)「議論」するとき僕たちが考えるべきこと

          今日は少し事情があって、僕より若い世代の人たちにテレビなどの討論番組やトークセッションの振る舞い方、みたいなことについて話す機会があった。その関係で、少しこういったメディアやイベントでの「議論」というものについて考えたことがあるので、それを書き留めておきたい。 僕がもう10年以上もまえにNHKの『ニッポンのジレンマ』に出たときに考えたことがある。この番組は司会の堀潤(当時NHK所属のアナウンサーだった)や駒崎弘樹などその後の仕事仲間と出会うことになった……なんというか、僕の

          (公開の場で大勢と)「議論」するとき僕たちが考えるべきこと

          もうJTC(的なもの)には戻れない僕たちが「うっかり騙されない」ために必要なこと

          先日、ある企業リーダー向けのリベラル・アーツ研修のようなものに講師として参加したのだけど、そこでちょっとした議論になった。どういう議論かと言うと、それはプラットフォーム資本主義下の共同体についての議論だ。 参加していたのはいわゆる「JTC」と呼ばれがちな昭和の大企業の幹部職員たちで、僕よりも10歳くらい年上の人が多かったと思う。そしてこういう研修に前のめりに参加するような人たちなので、当然「JTC的なもの」に開き直って「朝礼も飲み会も社内行事も必要」とかは全然思っていなくて

          もうJTC(的なもの)には戻れない僕たちが「うっかり騙されない」ために必要なこと

          なぜ「パターン破り」はすぐに「パターン化」するのか

          先週、PLANETSCLUBのオンライン講座に青田麻未さんに登壇してもらった。テーマは「日常美学」。これはその名の通り日々の暮らしのなかの物事ーーたとえば部屋のインテリアだったり、食事だったり、近所の散歩だったりーーを対象にした「美学」だ。僕はまったくこの分野のことを知らず、少し前に出た青田さんの著作を手に取って、とても考えさせられた。そこで、一面識もないのに公開されているメールアドレスに連絡して登壇をお願いした……というわけだ。 講義の内容(ちなみに、とても充実していた)

          なぜ「パターン破り」はすぐに「パターン化」するのか

          とりあえず「再分配よりも互酬性」と言ってしまう「罠」について

          少し前に、宇沢弘文没後10周年記念イベントの、あるセッションに登壇した。占部まりさんの司会で、安宅和人さん、安田洋祐さんと議論した。そのときの話は以下の記事に書いたのだけど、週末に部屋を整理していて当日のパンフレットが出てきた。そこに掲載されていた僕たちが登壇したもの「ではない」セッションのプログラムを眺めながら、少し考えたことがあるので、今日はその話をしたい。 この手の議論では、資本主義は行き詰まっている、したがって個人化に歯止めをかけ、共同体ベースの社会を再構築して互酬

          とりあえず「再分配よりも互酬性」と言ってしまう「罠」について

          トランプ復活問題から、日本の「冷笑」と「ネトウヨ」を考える

          今日もドナルド・トランプの大統領復帰について考えたことを書いてみたい。あれから2日、案の定後出しジャンケン的に負けた方を叩いて自分を賢く見せたがる人たちがSNS上に溢れかえっているが、いちばん卑しいのはこういう輩なので、まずはその手の人をしっかり軽蔑することからはじめるしかないのだなあ、とつくづく思う。というか、こういった誰かを貶めることによる瞬間的な共同性への接続(承認の獲得)が圧倒的に「コスパが良く」なってしまったことこそが、現代のポピュリズムの……というかトランプ現象の

          トランプ復活問題から、日本の「冷笑」と「ネトウヨ」を考える

          アメリカ大統領選について考えた3つのこと

          さて、今日はアメリカの大統領選挙について考えてみたい。最初に断っておくけれど、僕はハリスに当選してほしかったと考えている。しかしトランプが政権に返り咲いたことで、暗黒の時代がはじまったと嘆きあうことで「共感」し合って安心するコミュニケーションには興味が持てない。そしてトランプの当選を利用して、「だからリベラルはダメなんだよ」と後出しジャンケン的に自分を賢く見せるパフォーマンスにはもっと興味が持てない。僕たち日本人がいちばん最初にやるべきは、こういう言説を用いてセルフブランディ

          アメリカ大統領選について考えた3つのこと

          「教育」の基本は「親ガチャのキャンセル」と「外の世界につなぐ」こと

          来月、PLANETSから(つまり、僕のプロデュースで)白井智子さんの『脱学校論』が出版になる。白井さんについては、広く知られているように日本にフリースクールという制度を根付かせたパイオニアといえる存在で、この本は彼女が30年の経験の中で考えてきた教育論の集大成だ。今の日本の公教育のどこがダメなのか、現場で何が起きているのか(未だに続く「管理教育」の弊害、「親ガチャ」格差、塾依存の受験指導、教員の労働環境のブラック化……などなど)、システムのボトルネックはどこにあるのか、そして

          「教育」の基本は「親ガチャのキャンセル」と「外の世界につなぐ」こと

          「オタク」的な感性の二つの政治性、「押井守的なもの」と「ゆうきまさみ的なもの」

          さて、今日は久しぶりにアニメのこと……というかオタク的な感性について書いてみたい。 それは、ゆうきまさみ(新人類世代)と押井守(遅れてきた全共闘世代)のあいだにある「社会」や「政治」についての距離感の違い、についてのことだ。年長のアニメファンに分かりやすく言えば、劇場版「パトレイバー」の「1」と「2」の違いだ。これは僕と同世代のアニメファンの間でよく話題になるテーマで、たとえばニッポン放送の吉田尚記とは、何度このテーマで議論したか分からない。そして僕よりも数歳上の吉田は「1」

          「オタク」的な感性の二つの政治性、「押井守的なもの」と「ゆうきまさみ的なもの」

          土地と人間のかかわり、その二つのアプローチ(『マタギドライヴ』の旅 #11)

          今日は、一連の秋田取材旅行記の最終回ということで、ちょっとしたまとめのようなことを書いてみたい。それは土地と人間のかかわりかた、のようなものについてのことだ。 鈴木さんのお手製の熊鍋で腹を満たした僕たちは、そのまま彼の納屋に案内された。そこには重要文化財の指定を受けているような、マタギ猟にかんするさまざまな道具や資料が収められていて(普通に、しかも割と無造作に「火縄銃」とかがある)、ちょっとした博物館のような空間になっていた。 鈴木さんはその一つ一つを丁寧に解説してくれた

          土地と人間のかかわり、その二つのアプローチ(『マタギドライヴ』の旅 #11)

          「語り口」は「空気」に抗えるか? ーー加藤典洋『敗戦後論』を再考する

          さて、今日は加藤典洋について書こうと思う。これは昨日の記事の続き「でも」ある。独立して読むこともできるけれど、できればさかのぼって読んで欲しい。 加藤典洋の『敗戦後論』は、戦後50年の節目に当たるタイミングで発表された論考で、歴史認識問題や憲法9条の問題に代表される戦後日本社会のアイデンティティをめぐる混乱に、一つの解決策を提案することを目的にしている。その回答とは、「新しい主体」を立ち上げることだ。そのために加藤はまず、日本国内の戦没者を追悼することを提案する。ときに侵略

          「語り口」は「空気」に抗えるか? ーー加藤典洋『敗戦後論』を再考する

          「冷笑」のルーツを考えるーー吉本隆明から糸井重里へ

          さて、昨日はネットの「冷笑系」と、団塊ジュニア(とその前後)世代男性のアイデンティティについて分析したのだが、今日はこの問題をもう少し違った角度から考えてみたい。 現代日本の言論空間における最大のガンであるところの「冷笑系」のメンタリティが、この世代の男性に顕著な「被害者意識」の回復と結びついているというのが、前回の論旨だ。「失われた30年」とジェンダーギャップの相対的な解消(特に後者)により、自分が手にできるはずのものを「損なわれてしまった」と感じる男性たちが、その尊厳を

          「冷笑」のルーツを考えるーー吉本隆明から糸井重里へ