他でもない秋山のピンチだというのに、自分は何もできないのだろうか?
長編ファンタジー小説 獣の時代〈第1部〉第1章 4.金の鉤爪、銀の斧①
その施設に関しての認識はあった。ただ、砥上は訪れたことはなかった。
甲州との洲境近くに作られたトリックアートを集めた美術館。開館当時は話題になったが、一帯の観光地化も進まず、交通量も少ない場所であったことから集客も悪くすぐに閉鎖してしまった。その後建物は再利用もされずにかれこれ10年ほど放置されているだろうか。
駐車場を挟んだ雑木林の中でも比較的大きな木の枝から、砥上は建物を見た。
今まで