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【読書録】『Y字路はなぜ生まれるのか?』

今回読了したのは、
『Y字路はなぜ生まれるのか?』
著:重永瞬
著者は、地理学を学びながら、まち歩きのツアーガイドも勤める大学院生。
この本は、「Y字路」をテーマに、路上観察のおもしろさを紹介している。

合理と現実の狭間で

日本では、古くから碁盤の目型を基本として道を作ってきた。
真っ直ぐな道は、見通しが良く、最短で目的地に辿り着ける。
道に区切られる土地は、四角形となり測量しやすいうえ、建物も立てやすい。
碁盤の目の道は、とても合理的なのだ。

だが、すべての道が碁盤の目かというと、そうではない。
現実の道は、様々な要因によって、複雑な形状になっている。
その一つが、Y字路だ。

「Y字路」が生まれた理由

本の中で、様々なY字路が写真や地図で紹介されている。
初見だとどれも違いがないように見える。
だが、本を読み進めるうちに、「ここにY字路が生まれた理由」がそれぞれ違うのだとわかってくる。

ある場所は街道の合流点だったり、またある道は高低差によって道が分かれていたり。
他にも、川や用水路があったり、区画を横断して鉄道や幹線道路が通っていたり、区画整理の時代と目的が違っていたりと、土地によってその理由は様々だ。

Y字路がその場所に存在するのには、理由がある。

そしてその理由は、その土地の地理や地質、歴史的経緯に深く結びついている。

土地の個性を物語るY字路

日本の街は区画整理が進み、古くて複雑な道の多くも、碁盤の目に作り直されている。
整備された道は、便利な反面、その土地の個性が覆い隠されてしまう。
無個性で、どこにでもある街になってしまう。
私のように、街歩きを趣味にしている者にとっては、寂しく思ってしまう。

だが、そんな均一化された街の中にも、Y字路は存在する。
地理的に碁盤の目にしづらい地形だったり、歴史的な経緯があったり、はたまた開発地域から外れてしまったり、と様々な理由でY字路は今も存在する。

Y字路は、その土地の個性そのものであり、その土地固有の地理や歴史を物語る行き証人でもあるのだ。だ。

「なぜここにY字路が生まれたのか?」

そう想像しながら歩いてみると、路上観察がより一層楽しくなると思う。

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