熟睡できる酒を求めて
自分が、これほど酒に弱い体質だと知ったのはキッパリと酒をやめてからだ。
そう偉そうに言えるほどまだ時が経過したわけでもないのだが、今はもう一度酒を飲みたいという気分より、再びアルコールに口をつけてしまったら、元通りに飲み出してしまうのではないかという恐怖感の方が強い。そして、自分がなぜそういう感情に囚われているのかもよく分からない。
だが、今はこのまま継続してアルコールを控えたままにしておくほうが良い気がする。
なぜなら、アルコールを入れずに就寝し、目覚めた時の眠れたという感覚が今までと全く違うからだ。そしてそれは、翌日の気分や頭の回転、仕事のパフォーマンスにも直結していて、日中に感じていた抗い難いほどの眠気にもほとんど襲われなくなったことからも分かる。
持て余すかと危惧した晩酌の代わりの時間も、あれこれと雑事を片付けたり、これまで通り動画などを見て過ごしたりしていると、意外なほどすんなりと過ぎていっている。
しかし、今日のように今年の仕事も一段落して、帰り道に横丁から焼き鳥の匂いなどが鼻をくすぐると、ビールが喉を通っていく記憶が頭を擡げる。
面白いのは、それに惹かれて酒を欲する感覚より、酒を楽しんでいた頃の自分を懐かしく感じる気持ちの方が強いことだ。
別に老人の回顧録ではないが、そんな誘惑に駆られる時、酒の味を知っておいて良かったと心から思う。
それでも未練がましいのは、もし熟睡を保証してくれるような酒があるなら、アルコールに身を任せたいという気持ちがあることも否定できないところだ。
酔うという、あの感覚は魔力だ。
一年の締めくくりに、どこかでタガが外れてしまえばよいと、やぶれかぶれになっているのだろうか。
今夜は少しお茶を熱めに淹れて眠ろう。