![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/133355145/rectangle_large_type_2_bc1f58044f53cc047bc0b658b3b3165b.jpeg?width=1200)
奈良和歌山の農村和式民家:家屋の向きに着目しよう
⛅⛅⛅ 夏の自由研究 ⛅⛅⛅
(この記事は去年、別のブログに掲載していた内容をリライトしたものです)
▼普段、非合理的な観念、行為を口汚い言葉で罵り倒している「メディアの寵児」などと称される人たちにも、日本で育った以上逃れられない非合理的な観念と行為があります。
それは風水、そして家相。
▼風水や家相の類は、どんなに理路整然とその非合理性を説得されても、そうやすやすと捨て去ることはできません。事実、南向きの部屋は北向きのそれよりも価格が高いですし、家屋のレイアウトもなぜか風水を前提に考えてしまうものです。では実際はどうなのか、調べてみました。
▼サンプルは、和歌山県橋本市賢堂(かしこど)地区としました。賢堂地区を選んだのは、単に土地勘があるからという理由のほかに、北向き斜面が迫っている場合の家屋の向きを確かめたかったからです。
▼位置は下図をご覧下さい。
![](https://assets.st-note.com/img/1709944794598-T3LCvD0Ds0.jpg)
▼さらに拡大します。下図で色の付いた範囲が和歌山県橋本市賢堂地区です。橋本駅から南下して紀ノ川を渡ったところにあり、地区の家々は紀ノ川左岸の旧氾濫原と高野山地北麓の傾斜地の両方に建てられています。
![](https://assets.st-note.com/img/1709944927309-ic7IsayN7Z.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1709945294318-UqqVdLfCwU.jpg)
![](https://assets.st-note.com/img/1709945036466-RerFx9IuMm.jpg?width=1200)
▼さてさて、建物は、①和式住宅、②洋式住宅、③和洋折衷住宅、④集合住宅・公共施設・商業施設等、⑤倉庫・ガレージ等の5つにカテゴライズしました。これらのうち、殊に和式住宅と洋式住宅の違いは「雰囲気」で分類しました(本物の研究ではないからこれでよい👻)。調査は、安直にもグーグルストリートビュー❗❗を活用しました(歩くの暑いし…)。基本的には、玄関の向きを調べました。そして、わからないところは無理をせずブランクとして残しました。
▼下図が調査結果です。
![](https://assets.st-note.com/img/1709945465719-XaW5Rkp8qw.jpg?width=1200)
▼まず、集落左上にある家々は旧高野街道(大阪から高野山に至る街道)沿いに建てられたもので、これらは町家と同じく、街道の方向に玄関が開放されがちです。次に、集落中央を斜めに横切る大きな道路は比較的最近開通した国道370号線で、この周辺の家々も道路に合わせて建てられた形跡がみられます。そして、南海高野線以南(線路以南が山間部)は和式住宅が圧倒的多数を占め、玄関もまた圧倒的多数が南向きに開放されています。
▼結局、家の向きというものは、その家が接している道路のあり方に大きく左右されると考えられます。上図でいえば、新しい国道370号線沿いに建てられた家屋はその道路に合わせた配置になるでしょうし、国道周辺も区画整理が行われており、それに沿って家屋の玄関が開放されがちです。問題は南海高野線以南の山間部で、これらの家々は道路に合わせて作られておらず、その玄関もまた道路に接していないものが多く見受けられます。つまり、住人は家を建てる際に正面や玄関を南側に向けることのみに留意しており、道路の存在をほとんど無視しています。おそらく、道路はもともと人が歩ける程度の小道で、ずっと後になって舗装・拡幅されたのでしょう。
▼北向き斜面に立地しているのに玄関を南側に設けるという、古来の和式住宅における力技が実に非合理的で、管理人にとっては実に魅力的です。この斜面の和式住宅の多くは高持百姓特有の構造を持っており(上図を拡大してみて下さい)、家屋正面の庭が広いため、南側に玄関を配置してもそれほど圧迫感がないのかも知れません。
▼なんとなく抱いていた「和式住宅は南向きが多い」という仮説は平地、傾斜地いずれにおいても概ね支持されたといえますが(仮説があるのにフィールドワークを行うという方法論は反則)、それも道路次第というのが結論です。しかしながら、今回、玄関が南西方向に開放された家は極めて少ないという新事実が判明しました。理由は分かりません。また一つ課題が加わってしまった・・・