わかおの日記162
大学入学以来いちばんの趣味は「暇」なんじゃないかと思うほどに暇していたぼくだが、ここ最近週末の予定が埋まるようになってきた。喜ばしいことだが、のび太くん的なぼくのバイオリズムには明らかに適していないので、戦々恐々としている。
土曜日は阿波踊りのサークルで、神奈川大学の文化祭に出た。ぼくは阿波踊り界でも希少な存在である三味線弾きである。中学生のころから左投げのアンダースローやナックルボーラーにあこがれていたぼくにとっては垂涎のポジションで非常に収まりがいい。というのは表面的な理由で、最初に参加した練習のあとに行った飲み会が楽しかったので、積極的に参加している。
高校生のころ、父親の会社が飲みニケーションを推奨していると聞いて理由もなく反感を抱いていたが、今では自分が飲みニケーション中毒になっている。飲みニケーション最高!お酒の力でチームの結束を高めよう!!!
さて、三味線弾きは孤独である。楽屋で踊り手たちが本番前の確認や練習に励むのを尻目に、ぼくはずっとジャンププラスで漫画を読んでいた。結局コミュニティに所属したって、自発的に動かない限りバラ色の青春は訪れないのである。小学校の頃入っていたテニスクラブでも、コミュ障すぎてクールキャラだと思われていたもののその割にテニスが絶望的に下手くそだったのでなんか気を遣われていた。そうなりたくね〜な〜。
そんな心配をよそに本番後の打ち上げは盛り上がり、楽しく過ごすことができた。友達の前では謎に格好つけているが、ぼくなんかただの広肩幅さくらんぼ男子なので、ほろ酔いになった女の子と喋っているだけでちょっと好きになってしまった。あまりにもちょろすぎる。お前その打ち上げでちょっと穿った目線の発言をすることでウケ取ってただろ、そんな簡単に人を好きになるなよ。ちょっと前まで眉間にしわ寄せながら三田キャンパスを練り歩き、「愛とは……」「人生とは……」みたいな小難しいこと考えてたのは全くの無駄だった気がする。
哲学とか文学って、高尚そうな雰囲気を帯びているだけで実はモテないやつの僻みなんじゃないか。そこに気づいてしまったら、今まで積み上げてきたものがすべて瓦解してしまいそうなので、そっと目をそらして、眉間にしわを寄せることにした。