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47 寝室の押し入れにあったもの

両親が高齢者住宅に入居するや否や、私は家の中を盛大に片づけ始めた。
手始めに母の服が収納されていた部屋の押し入れに着手した。
普通サイズの押し入れと服を書けてある収納のほんの小さなスペースに、よくもここまで物を詰め込んでいたと驚くほどの物が出てきた。
押し入れ用の収納ケースだけで20個、その中には私が生まれた頃使っていた母の手編みの掛け布団もあった。
当時は生まれるまで性別がわからなかったので、男女どちらでも良いように薄い黄色のパッチワークの物だった。
余談ではあるが両親は男児が生まれると思っていたようで、たくやという名前を考えていたそうだ。
結果両親が望むような女の子らしい女児ではなく、がさつでアウトローな生物学上女児に分類される人間が生まれた。

そんなわけで後生大事に押し入れにしまわれていた思い出の物たちは、私の手によってどんどんとごみ袋に詰められていった。
午前中だけで45リットルのごみ袋の山ができて行った。
ベッド2台を置いていた寝室は、押し入れから出したものであっという間にいっぱいになった。
古い物を動かした時特有の倦怠感があったが、それを上回る開放感で夕方まで一気に片づけた。

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