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5 息子と私を間違える母

父は80歳を期に免許を返納したため、それからはほとんど外出していなかった。
父は教師としての仕事には情熱を傾けていたようだが、プライベートでは趣味らしい趣味もなく家事も母任せで、ぼんやりとテレビを見たり昼寝をしたりして過ごしていたようだ。
仕事がらみで訪ねてくる人たちはいたようだが、親しい付き合いの友人と言っていた人たちとは年を重ねるごとに疎遠になっていったようだった。

北海道の小規模都市では車がないと移動が難しい。
唯一近所に歩いて5分のコンビニやドラックストアがあり、日頃のちょっとしたものは、健脚の母が買い物に行っていた。
しかし今年に入ってから、明らかに様子がおかしいことに私も気づき始めた。
息子の幼少期の写真を見て私に、あんたは昔から男みたいな顔をしていたと言ったり、
父の晩酌に付き合っていた夫に、あなたご家族は?ご結婚されてるの?
と聞いたりと明らかにちんぷんかんぷんな言動が増えてきたのである。
冷蔵庫に賞味期限の切れた納豆やヨーグルトが大量に入っていたり、冷凍食品が冷蔵の棚に入っていたり。
お惣菜などが入っていたプラスチックトレイを、綺麗に洗って食器棚に大量にしまっていたり。
そんなこともあり、実家を訪れるたびにまずは台所の片付けに取り掛かるのが恒例行事となった。

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