
46 ぶちまける
今回の帰省は両親の高齢者住宅入居が目的であったが、もう一つ大きな目的があった。
それは家の売却に向けての大々的な片付けである。
両親が在宅中は明らかに使わない物を、収集日に出すためにごみ袋に入れて屋外にある物置に置いておくと、いつの間にか母が家の中に持ち帰るという恐ろしい悪循環を繰り返していた。
その為全くもって片付けがはかどらなかったのだ。
誰かにあげるから
まだ使えるから
バザーに出すから
うんざりするほど母の口からはこの言葉が発されていた。
その為両親が入居後1週間ほど私は1人で実家にいた。
何か緊急事態があったり必要なものがあれば新居に届けるという目的と、
片付けを阻止する人たちがいなくなってから、一気に家を片付けようと思ったのだ。
両親が高齢者住宅に入居した翌朝、12月の北海道にもかかわらず私は家中の窓を開け放った。
1階も2階も全て。
数分開け放っていると重苦しい空気がふと軽くなった。
私は大好きなDJKroのリミックスを大音量にして小躍りしながら母のクローゼットの中身を思いっきり引っ張り出した。
想像以上の開放感だった。
古い靴下やら下着やら頑なに捨てる事を拒否した不要物を、どんどんごみ袋に放り投げた。