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48 階段を降りられない

両親が施設入居し数日が過ぎた。
私は予想以上の物の量にかなり辟易していたし、気持ちと裏腹に体力がついてこないのだ。
実家の2階には大量の本がありそのほとんどが一度も読まれたことはないであろうインテリアとしての文学全集、百科事典、絵画集などとにかく大きくて冗談みたいに重い本が大半を占めていた。
それらを本棚から出し、階段まで運び、一階に下ろす。
これを半日繰り返したら、なぜか足の甲が痛くなり普通に階段を下りる事が出来なくなった。
おそらくなれない作業で普段あまり使っていない筋肉を酷使したのであろうか
階段を降りるときは手すりにつかまって横向きで降りないとならない。
本を階下に下ろしながら私は悪態をつきまくった。
そしてその言霊によってかよらぬか私の身体は疲労困憊し体中が痛くなった。
何度か叔母から手伝いに行く旨の連絡をもらっていたが丁重にお断りした。
叔母は整理整頓はプロ級に得意で元気ではあるが、80代半ばである事や心臓に持病がある事、最も大きな理由が両親の愚痴を聞かされる事を避けたかったからである。
電話でのやりとりでさんざん過去の事を聞かされてきたし、冷たい言い方だが長い事離れて住んでいるので親子とはいえお互いの事をあまり知らない。

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