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読書感想『彼女が探偵でなければ』逸木 裕
それでも私は、答え合わせがしたい
高校生の頃から探偵業にのめり込んでいた森田みどり。
人の「本性」を暴くことに執着し、その答え合わせをせずにはいられない彼女もすっかり2児の母親になり、探偵社でも部下を持つ立場になった。
探偵社に持ち込まれた案件はもちろん、たまたま出会った謎でさえ、彼女は暴かずにはいられない---
時計職人の父を亡くした少年、千里眼を持つという少年、父親を殺す計画をノートに書き綴る少年、クルド人と日本人の間に生まれた少年、陶芸家の母親との折り合いが悪かった少女…
子供たちが関わる謎に関りながら、すべての謎を暴くことで他者を傷つけてきた自分の探偵業と向き合う。
シリーズ二冊目の連作短編集である。
森田みどりは、どうしようもなく『探偵』であり、自分が行き当たった謎を徹底的に解き明かさないと気が済まない。
その真実が、誰かを傷つけたり追い詰めたりしてしまっても、彼女はただ謎を解いてその答え合わせがしたいのである。
一作目「五つの季節に探偵は」の時、まだ幼さと未熟さでその刃を容赦なく振るっていた彼女は、今作で2人の母親となっている。
仕事でも部下を抱え、謎を解き明かして突き付けてしまう事の残酷さをよくわかるようになっているのである。
ただ、彼女は、それでもやっぱり謎を暴かずにはいられないし、その答え合わせをせずにはいられないのである。
真実が人を救うことも、逆にどこまでも追い詰めてしまうことも、傷つけてしまうことも良くわかったうえで、でも謎を解き明かして真実を暴くことをやめられないのでだ。
ただ、みどりはその残酷さを重々承知したうえで、真実を白日の下に晒した自分が傷つけた人にもっとできることがあったのではないかと悩めるようになっているのだ。
自分と同じように興味があることに没頭すると周りが見えなくなる息子を心配し、大事な家族を二の次にしてでも謎を解き明かしたい自分を自嘲しながら色々なものに折り合いをつけているのである。
なんだろうな、表面でわかったふりをするのとは全く違う、全部本当にわかって、その上で何ができるかを考えるみどりが個人的には1巻よりずっと良くて、どの短編も良かった。
静かに、淡々と、自分の性質を反省しながらもそれを曲げることが出来ない不器用なみどりが、それでも思いやりや優しさを忘れているわけではなく真摯に向き合う姿が印象的。
それぞれの謎も人の感情が絡んだものが多く、読んでて色々立ち止まりたくなる一冊だった。
これはシリーズとしてこれからも続くのかしら???
個人的には1巻より今巻のほうがより好きだったので、続くならこれからも期待しちゃうシリーズだ。
こんな本もオススメ
・逸木 裕『五つの季節に探偵は』
・東野圭吾 『ガリレオの苦悩』
・ガイリッチー監督『シャーロック・ホームズ シャドウ ゲーム』
最後のは本じゃないけど…ガイリチ版のホムズ、もう全部解き明かさなきゃ気が済まなくてワトソン君を怒らせてるのがもう呪いじみてて、みどりさん見てて思いだしたので(笑)
もちろん映画、1から見ていただきたいが、シャドゲの畳みかけてくる勢い好きなのであえてシャドゲ