読書感想『火のないところに煙は』芦沢央
『神楽坂を舞台に怪談を書きませんか?』
今まで怪談は書いたことのない作家・芦沢央はその依頼に驚愕した。
神楽坂を舞台にした怪談に心当たりがあったのだ。
それは、芦沢が忘れたいと願う哀しい過去に結びついていた。
あの過去は一体本当は何だったのか…それを知るためにも執筆を決意した芦沢は、その1作をきっかけに新たな怪談に向きう会う事となる。
ひとつの短編をきっかけに集まりだした怪談はやがて思いもよらぬつながりを見せていく…
作者である芦沢央の手記のように綴られる5つの怪談と結果現れる1つの怪異の話である。
これ、発売当初に読んで久しぶりに再読しただが…やっぱりよく出来てる…怖いし、気持ち悪いけどやっぱりしっかりミステリーなのよね…。
個人的には一本目の『染み』の持つ吸引力でしっかり惹きつけられ、一見関係のない次の怪異次の怪異がそれぞれ面白くて、その上で最後そこに行くのね!?って感じで…
怪談としても面白さがあり、人が怖い側面もあり、ちゃんとミステリーしてるのに最終恐怖で終わる感じがもう秀逸。
何度読んでも、よくできた一冊だな!って叫びたくなっちゃう。
同時に芦沢先生ご無事ですよね?って心配にもなっちゃうくらい気持ち悪い…
いやぁ…秀逸だわ。
なんだろうな、怪談の程度がいいというか…なんか本当にそんなに派手ではなくて、いったいあれは何だったんだあろう?って出会った本人たちだけうっすら気持ち悪い感じも絶妙で…
個人的にあまり派手なホラーは読んでて面白いけど現実感なさ過ぎて入ってこないことあるんだが、なんかほんとに間近にありそうな気持悪さなのよ。
うおおーこええ…って思わず素直に受け取っちゃう絶妙さ。
そして同時に、結局怖いのは人間なのでは…とも思わせる部分も多々あり、絶妙にリアル…。
適度に記憶が薄れたころにもう一度じっくり読みたくなる一冊です。
こんな本もオススメ
・小野不由美『営繕かるかや怪異譚 』シリーズ
・綾辻 行人『深泥丘奇談 』
・山白 朝子『エムブリヲ奇譚 和泉蝋庵シリーズ』
日常で微妙に歪むくらいの怪異が好きですね。