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読書感想『野良犬の値段』百田 尚樹

私たちは、ある人物を誘拐しました。
この人物を使って実験をします。

突如ネット上に出現した謎の『誘拐サイト』
「私たちが誘拐したのは以下の人物です」
という文言と共に公開されたのは6人のみすぼらしい男たちだった。
これは狂言なのか?真実なのか?
半信半疑の警察やメディア、ネット民を尻目に日々更新されていく『誘拐サイト』は、ついに大手メディア数社を相手に身代金を要求する―――
前代未聞の「劇場型誘拐事件」が幕を開ける。


長らく積読で放置してたのを引っ張り出してきたり…
もっと早く読めばよかった…めっちゃ面白いじゃねえか…。
現代だから成り立つ「劇場型誘拐事件」である。
誘拐されたのは6人のホームレス。
彼らには家族も仕事もなく、いなくなったことを誰にも心配されないような男たちばかりだ。
個人としては誰かに価値を見出してもらえず、社会のお荷物のような扱いを受ける彼らの命を救うため、大手新聞社やテレビ局に対して身代金が要求されるのである。
その企業とは何の関係のないホームレスの命を救うために身代金が要求され、その一部始終が『誘拐サイト』にて公開されているのである。
普通に考えれば払う義理のない身代金なのだが、ホームレスの命に対して大手メディアがどのような決断を下すのかを国民がリアルタイムで見て、世論が動くのである。
いやあああああー面白かった。
どこの誰かもわからないホームレスの人命に対して、メディアにその価値を投げかける誘拐事件、事件が動くごとに変化していく世論とそれによって問われるメディアの在り方…
現代だからこそ成り立つ劇場型誘拐は、いったい誰が、何を目的に起こしたものなのか…
その真相をふくめ、現代メディアへの強烈な皮肉を含みつつ、一冊のエンタメとしてしっかり完成しており一気読み必須の一冊となっている。
メディアの裏側をよく知る百田尚樹らしい一冊であり、誘拐物の小説として完成度が高く、物語の決着までハラハラドキドキできる仕上がりである。
あっはっは、何年も放置してないでさっさと読めばよかった。満足。
ちょっとあんまり語るとネタバレになりそうなのであんまり何も言えない…。
出来るだけ前情報を入れずに読まれることをお勧めする一冊である。

こんな本もオススメ


・東野 圭吾『ゲームの名は誘拐』

・呉 勝浩 『ロスト』

・芦沢 央『いつかの人質』

誘拐を軸にしたミステリーってかなり色々な切り取り方があるよな、って改めて思ったり。
いや~でも今作はだいぶ異質だったわ。面白かった~

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