
読書感想『夢の上2-紅輝晶・黄輝晶』多崎 礼
私の幸せは、私が決める
叶わなかった夢が結晶化した彩輝晶…夢売りは王に新たな夢を見せる…
故郷を滅ぼされ、愛する人を喪ったハウファは、その復讐を果たすために後宮へ入ることを決意する。
光神王を殺せるのは、その血を継ぐ者だけ…復讐を果たすために、ハウファは子を産む(紅輝晶)
母親のおなかの中で影に憑かれてしまったしまった、生まれつき影憑きであるダカールはその事実をひた隠しにしていた。
影に時空を奪われないために、すべての感情を封印し石のように生きる彼の前に、女でありながら騎士になろうとする少女が現れる。
無謀すぎる夢のために足掻く彼女に、ダカールは徐々に惹かれていくが…(黄輝晶 )
多崎礼の贈るもう一つの革命の物語第2巻。
1巻の記憶が薄れないうちに読み進めてるのですが…
あぁぁぁ…上手いな…構成がうまいよ…
現光神王を倒して、その娘であるアライスを新たな王にするために足掻く革命の物語であるのだが、1巻で語られたのはアライスが如何にして革命に加わり、誰がそれに賛同し決起したか、である。
語り手を変え、視点を変え、いろんな角度から革命に加わった人々の胸の内が明かされ、そして少しずつ革命が進んでいく。
2巻では1巻の先はもちろん描かれるとともに、アライスの人生が母親であるハウファと、従者であるダカールの目線で解き明かされる。
どうしても同じ時間が繰り返されているため同じ場面が出てくるので読んだわりに進んでねぇな!!と思わんでもないが、物語の革新への迫り方が上手くて非常に面白く何度でも読めてしまう感じである。
語り手も徐々にアライスに近しい人になってきてる感もあり、これは最終巻の話は…と期待させる構成である。
いやぁ、うまいわ…しかも輝晶が残っている…ということは、誰かの叶わなかった夢だという事実もなかなか重い。
出てくるキャラクター達には自分の本音を、命を犠牲にしてでも手に入れたい理想があり、そのためにいろんなものを犠牲にしていく。
どの語り手たちにも夢があり、恋焦がれるものがあり、それは必ずしも個人の幸せとは合致してくれない。
誰かを愛し、誰かに愛され、誰かを想い…でもそれらをすべてなげうってでも邁進してきた彼らに対し、2巻ではそんな彼らの象徴でもあるアライスの本音がこぼれはじめており不穏な終わりを迎えるのも興味をひかれる。
こんなんそのまま続き突入するに決まってんじゃねぇか!!!
…いや~…最初の刊行当時、続き待って多々人たちめっちゃ苦痛だったでしょうよこれは…
各章200ページ越えの大作なのに全然さっくり読めちゃうのが凄いね、上手いなぁ…
こんな本もオススメ
・天童荒太『青嵐の旅人』
・辻村 深月『かがみの孤城』
・恩田 陸『ネクロポリス』
ファンタジーあんまり読まないので時代変革なのが一冊混じってますが…誰かの願いで物事が動いてきたんだなって思う本なので全然楽しめると思います。