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読書感想『トリカゴ』辻堂 ゆめ
普通に生まれ育った。
それがとても恵まれているなんて知らなかった。
幼い兄妹をペットの鳥たちと一緒の場所に閉じ込めて飼育していたという虐待で日本を震撼させた鳥籠事件。
保護された兄妹は言葉を話すこともできず、その振る舞いが鳥のようだと週刊誌が書き立てたこともあり脚光を浴びたが、のちに二人が誘拐され行方不明となったため未解決事件となってしまった。
それから20数年、蒲田署刑事課の森垣里穂子は殺人未遂事件の容疑者としてハナと名乗る女を取り調べる。
戸籍がないと語る彼女を調べるうちに、彼女が育てられた無戸籍の人々が隠れ住むコミュニティに行き当たる。
捨て子だったというハナとその兄リョウ…二人が鳥籠事件の児童ではないかと考えた里穂子は捜査を開始する。
無戸籍者の現状を知るごとに何をすべきかがわからなくなりながらも里穂子は事件の解決と彼らのこれからのために奔走する。
無戸籍…出生届を出してもらえず、いてることを認識してもらえない人々に焦点を当てた社会派ミステリーである。
幼いころ鳥籠事件の報道を見た里穂子は、自分よりも幼い子供が受けた虐待にショックを受け、自分は何もできないと思い悩む。
その事件を忘れられなかったからこそ里穂子は、出会った無戸籍の兄妹に鳥籠事件のの行方不明児童との共通点を見出すのだが…
うぅーん…ミステリーとしては面白かったし、続きが気になって一気読みしたのは事実なんですが‥‥
個人的には、ちょっと…詰め込みすぎ?やりすぎ??
無戸籍であることの悲惨さや大変さを描きたいのはめちゃくちゃ伝わるし、すごく勉強になったんですが…
え、里穂子の動機、弱くない…???
6歳の時に見たニュースが衝撃すぎたにしても…自分に何らかかわりのない事件のことでそこまで引きずれる???とか、他の登場人物たちも…難か微妙に物わかり良すぎてちょいちょい引っかかってしまいました。
事件の真相も…いや衝撃ではあるんだけど…誘拐事件が起こってその後までの時間とか…うぅーん、そこまでするか?って感じで…。
こう、こういう事件だって決めたうえでそこに無理やり無戸籍問題を詰め込んでふくらましちゃったのかな?感が拭えず…。
なんだろうな…おもしろかったんだけど…最終的にふ~んって思っただけだったというか、衝撃は確かにあるけどそれ以上にえぇ?ちょっと絵空事過ぎない?感が強かったというか…
うん、なんかそんなにはまらず…。
里穂子のやることなすこと独りよがり感ある感じも、推理というか思い付きで捜査してる感じも共感しづらかった原因かも??
なんだろうな、もうちょっと書きたいこと絞って欲しい感じでした。
こんな本はいかが?
・葉真中顕『Blue』
・降田 天『朝と夕の犯罪 神倉駅前交番 狩野雷太の推理』
・丸山正樹『デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士』
なんだろうなぁ…身近ではないけど、こういうことがあるんだよって知ってないといけないなって思わせる本たちですかね。