見出し画像

読書感想『冷たい校舎の時は止まる』辻村 深月

私たちの誰かが、自殺、したってこと?

大学受験も間近に迫った雪の日、いつも通りに登校した8人の仲間たち。
だが教室どころか学校には自分たちしかおらず、いつの間にか閉ざされたドアが自分たちを学校へ閉じ込めてしまった。
凍り付く校舎の中で彼らは異常なことに気づく。
それは二カ月前の学園祭で起こったクラスメイトの自殺について、記憶が欠如してしまっていること…。
屋上からクラスメイトが飛び降りた…でもそれが誰かがわからない。
あかない扉、割れないガラス、止まった時計…異常事態に混乱する8人に誰かの悪意が忍び寄る―――


もう今さら何を語ることがあるんだ?といわれても仕方がない、言わずと知れた辻村深月先生のデビュー作である。
だいぶ前に読んで、辻村深月ワールドに一気に魅了されたのだが、まぁガッツリ長い本でもあるのでなかなか読み返す機会がなくて久しぶりの再読である。
…これが、デビュー作って…マジか…と、改めてその技量にノックアウトされてしまった。
舞台は学校…なのだが、同時に明らかに普通じゃない…見知った学校の振りをした一種の異世界である。
同じ時を過ごしてきた8人の仲間が閉じ込められ、彼らは否応なく2カ月前に起こった学園祭の自殺について考えさせられるのである。
友人関係に悩んでいた深月、彼女の幼馴染であり担任教師・榊の従弟でもある鷹野を筆頭に特につながりの深い8人の色々を明かしながら物語は進んでいく。
思い出せない自殺者に困惑しながら、実は自分たちの誰かが自殺をして既に死んでいるのではないか?と、設定はなかなかにファンタジーなのだが、内容はがっつりミステリーなのだ。
8人それぞれの事情が細かく明かされて行くのではっきり言って長い、長いよ!なのだが、それが全部、物語として必要な要素なのだからとんでもない…。
実はかなり久しぶりの再読だったのだが、一回目に読んだ時の衝撃が強くて(笑)、誰が自殺して、ここはどこで、担任・榊がどうしていないのか、今どういう状況なのかっていう大事な部分全部覚えてたんですが…
覚えてても問題ない、めっちゃ面白いし、やっぱり衝撃…。
圧巻…うん、圧巻ですわ。
なんちゅう作品で世に出てきたのよ、辻村先生…!?と改めて惚れる。
いやぁ…作家生活もすっかり長くなられて、著作は全部読んでるはずなんだけど幾分記憶が怪しくなってきたので改めて初期の作品が読みたい衝動に駆られての再読だったんですが、圧巻。
そりゃこのあと今まで読み続けるわ…とその筆力に脱帽です。
ミステリーとしてのタネももちろん面白いのだが、この方は本当に微妙な心情を書くのが上手いですね…。
高校生の自尊心とか自己顕示欲とか、劣等感とか、あの時代特有の友人への依存とか妬みとかが本当にヒリヒリ伝わってきて、胸が痛い痛い。
あぁ面白かった…ちょっとこのままじわじわ読み返していきたい。
好きだわ~辻村深月先生…。

こんな本もオススメ


・辻村深月『かがみの孤城』

・辻村 深月『ぼくのメジャースプーン』

・辻村 深月『オーダーメイド殺人クラブ 』

辻村深月作品…初期は異常に長いし手を出しにくい方はとりあえずこの辺いかがですか???
かがみ~は長いけど、いかにも辻村深月作品って感じなんでやっぱり読んでおきたい一冊ですよね。
あと最近だと『傲慢と善良』とか…←とか言い出すと結局全部読んで!になる気しかしない

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集