読書感想『真実の檻』下村 敦史
亡くなった母の遺品整理をしていた大学生の石黒洋平は、自分の本当の父親が死刑囚だということを知ってしまう。
元検察官であり、母の両親を惨殺して収監されたその事件は『赤嶺事件』と呼ばれるセンセーショナルな事件だった。
父親のことを知りたい思いで事件を調べているうちに『赤嶺事件』に冤罪疑惑があることを見つけ…
洋平は父親が無実だと信じ、事件を調べ始める。
冤罪事件をテーマに展開するミステリーである。
主軸になるのは実の父であり既に死刑判決を受けている『赤嶺事件』の真相究明であり、その冤罪には警察や検察の組織ぐるみの隠ぺい工作があったのではないか、というなかなか大きなテーマなのである。
全体的にはサクサクと読みやすいんだが、まぁ、ちょっと色々一気に詰め込みすぎてるかなぁ????感が…
冤罪、死刑、組織、隠蔽など、まぁ切り離せない色々なので盛り込み気味になるのは仕方ないんだが、そこに追加で赤嶺死刑囚が背負っているものとして過去の冤罪疑惑事件まで絡まってくるので一個一個のエピソードが駆け足で過ぎ去っていく感があるのがとっても残念。
そのうえであぶりだされる真相と、それを自白させるための方便などはよく出来てるとは思うのだが、若干洋平の心のありどころに疑問を感じてしまうのも事実。
うぅーんん、面白いことは面白いんだが、なんか若干もやっと感が残る感じ…。
ちょっとサクサク進みすぎなのかな…色々盛り込みすぎなのかな…
主人公である、母親が死んで初めて自分の父親が今まで育ててくれた人ではないと知った洋平…実の父親が死刑囚であると知り、彼の冤罪を晴らしたいと思うところは全然気にならないのだが…
それまで自分を育ててくれた父親…それも今まで実父だと信じて尊敬していた…という割には情が薄い気がしちゃう…。
実父に対して存在を知ってわずか数カ月しか関係性がないのにあそこまで信じられる(まぁ、自分の将来への保身もありますが)わりに、今まで育ててくれた父親に対しての行動としては割と違和感かなぁ…。
うーん、やっぱりちょっとページ数の割に盛り込みすぎなんだろうなぁ…。
面白いことは面白く、赤嶺死刑囚がどうして冤罪で捕まってしまったのか、なぜ再審を要求しないのかなどは予想を上回ってきて、こういうタイプの冤罪事件もあるのかも!?と思わせてくるy。
うん、展開、真相は面白く、事件ものとしては楽しめるのだが、人間模様としては若干説得力不足な感じかな?
ストーリーだけ追いかける人は単純に面白いと思います。
がっつり人間模様の機微を楽しむ人にはちょっと違和感かなぁ…な一冊でした。
こんな本もオススメ
・東野圭吾『白鳥とコウモリ』
・貴志 祐介『兎は薄氷に駆ける』
・伊坂 幸太郎『ゴールデンスランバー』
こう、警察やら検察とか、組織に犯人だって認定されたら容易には自分の潔白の証明ってできないんだろうな…って怖くなるよね…。
疑われる余地ないくらい清廉潔白に生きていかなきゃだめだね…