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読書感想『夢の上1-翠輝晶・蒼輝晶』多崎 礼

輝晶となった夢を見る…それが夢利きです。

王に謁見した夢売りは、六つの輝晶を取り出した。
叶わなかった夢の結晶であるという輝晶…6つそれぞれに込められた夢が今、語られる。
翠輝晶に込められたのは、小さな領国の娘・アイラが願ったささやかな幸せ。
蒼輝晶は、何でも手に入った男が他者に託した夢…
空のない国で叶わなかった六つの夢―――


『レーエンデ国物語』が面白かったので、文芸書で出直している作品をついつい購入。
作者本人が『この作品がなければレーエンデ国物語は書けなかった』といわれるだけあり、その壮大さというか…一つの国をめぐるいろんな角度からの思惑の入り乱れる感じはかなり通じるものがあるなぁ~とか思ったり。
出来るだけまとめて読みたかったので、3巻まで刊行してから読み始めたのですが…いやぁ、読み応えあるわ…。
六つの輝晶の存在がまずあり、1巻ではそのうち二つが語られる。
同じ国、同じころ、違う場所の全く違う話が展開していきながら、一人の王子・アライスの存在がその物語を結び付けている。
いや、もうね、再出版なので…最後まで読まれた方がいてるので、まだ1巻しか読んでない僕、相当的外れなこと言って呆れられそうですが…
これは…今夢を聞いてる王の正体は…もしかして…って考えずにはいられないやつですね…!!!!
いや、ネタバレもしたくないからふわっと…ふわっとしか何も言わないんですけど…←それもどうなのか…
愛する夫と一緒に生きていくために過酷な道を選んだアイナの話と、見目が良く武芸の才もあり望めば大抵のものを自分で手に入れられたアーディンが手に入れられなかったものの話が語られる一巻…
繋がりはあるものの、それぞれが独立した話としても十分に楽しめ、2本の中編による重厚感がまず圧巻。
ただそれは、叶わなかった夢の話なのだと幕間幕間の夢売りと王の会話で思い出され、彼らの望んだ夢の決着点は今のところ謎に包まれている構成も、こんなん続き読みたくなるに決まってんじゃん!!!な作りで、しっかり魅了されてしまった。
レーエンデ国は壮大な長い時間をかけて語られていくのに対して、こちらは今のところは数十年期間の物語が多方面で展開している感じなのだが…これはあと4話もそうなのかしら??
どちらにも共通しているのは革命の物語であるってとこだな、と思いつつ、その革命がすでに過去であろう今作がどこに着地していくのかが非常に興味深い。
今まだ語られているのは、革命の中心ではなく、その革命を起こすために力添えをした人々の物語であり、歴史として語られるときには無視はできなくとも深く語られることのないような人々だ。
大きな出来事に翻弄されながら叶うことのなかった夢の物語であり、6つの叶わなかった夢の末にいったい何がなされたのかが非常に楽しみである。
これは記憶が鮮明なうちに次々読んでいこうと思います…
いやぁ、改めて…状況説明というか、物語の語る分量の采配が絶妙だなぁ…。
個人的にファンタジー作品って好きなんですけど小説で読むの苦手で敬遠しがちなんだが…めっちゃ面白いわ…。
いい作家さんに出会えてホクホクです。

こんな本もオススメ


・多崎礼『レーエンデ国物語』シリーズ

・ミヒャエル・エンデ『はてしない物語 』

・高殿 円『忘らるる物語』

ファンタジーってまずその世界を理解するところに失敗しがちで入り込めないから苦手なんだが、相性ですね…面白い本は面白い

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