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読書感想『ドヴォルザークに染まるころ』町田そのこ

私には綺麗に見えたことなんてない。

廃校が決まった田舎の小学校で最後の秋まつりが開催される。
在校生の親、元生徒だった生徒たち…全校生徒は30人も満たないその学校で迎える最後の秋祭りに参加する5人の女の連作短編集。
子供のころ、担任が放浪の画家と駆け落ちしたことが忘れられない主婦。
バツイチ子持ちの男との恋愛に行き詰まりを感じる看護師。
夫とのセックスレスに悩む主婦。
父と離婚した母に引き取られて転校することが決まった少女。
発達障害の娘を抱えるシングルマザー。
小さく、昔ながらの価値観を引きずる町で人生を懸命に生きる彼女たちを描いた一冊。


なかなかぎょっとする一文から始まり、田舎の町で足掻く女性たちの苦悩を描く町田そのこ作品んんん…って感じの一冊です。
田舎の、濃すぎる人間関係の中で呼吸が難しくなってしまった5人に、同じ日同じ場所でのそれぞれが描かれる。
5時になるとドヴォルザークが流れるその場所で、夕日に染まるその町で彼女たちが何を選び、これからどう進むかが描かれている。
子供よりも大人の方が数が多く、それも昔ながらの価値観が根強く残るその場所で、押しつぶされそうにある様が生々しく息苦しい。
人からは幸せそうに見える人、でも実情は違っていて…何事もなく過ごしているようで実は抱えているものがあって…な、彼女たち。
ただいつもとは少し違う秋祭りの中で、少し違う考え方を見つけ、次の一歩を自分で選び取っていく。
ちょっと笑ってしまうくらいに女の見えてるものと男が見てるものが違うのもリアル。
読んでいて息苦しいのに、泥沼に足を取られたようにズルズルと引きづりこまれてしまう一冊でした。
個人的に小説家の玄さんがマジで気持ち悪いのが最後ちょっと強烈に印象に残っちゃったw
相いれない価値観の人に正論を振りかざしても受け入れてもらえない感じや、親が子供を自分の意思だけで動かそうとする感じとか…もう、全話随所随所に閉塞感が漂っていて終始息苦しい。
美しくあたりを染める夕日が檻にしか見えないというのがめっちゃわかってしまった。
彼女たちが少しでも生きやすくなって欲しいと思いました。

こんな本もオススメ


・宮西 真冬『毎日世界が生きづらい 』

・寺地 はるな『水を縫う』

・根本宗子『今、出来る、精一杯。』

閉塞感に押しつぶされそうになりながらも最終的には呼吸の仕方を見つけられるような本たち。
こういう閉塞感ってみんなどこかしら覚えがあると思うので胸がチクチクしちゃいますね。

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