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読書感想『夢の上3-光輝晶・闇輝晶』多崎 礼

あなたのために、光神王になる―――

叶わなかった夢の結晶、彩輝晶…
光神王を倒し、国を解放した彼らの物語最終章。
父である光神王を倒すため、革命の象徴となり太陽姫と呼ばれたアライス。
だがアライスには、誰にも言えない願いがあった。(光輝晶)
反逆罪で国を追われたアライスと違い、光神王の後継者として王宮を出ることはなかったツェドカ。
母に疎まれ、初恋の人を目の前で亡くした彼は一人何を思い、何を願ったのか…(闇輝晶)
革命の中で叶わなかった夢の物語、本編完結巻。



6つの破れた夢からなる革命の物語、最後の二話である。
主人公になるのは、現人神を父に持つ二人の子供、アライスとツェドカだ。
革命の先頭に立ち、国民に愛されたアライスと、王宮で一人その革命を見つめていたツェドカの真実が語られる。
あぁぁぁ…構成が、うまい…。
いや、ほんとに…一つの革命の話がいろんな角度から語られるので物語の大半は重複しており、いささかまどろっこしい部分があるのも事実なのだが、それでもそれを凌駕するだけの面白さがあった。
何回同じシーン見せるねん…と思いつつも、実はその時にそれぞれの見ていたものが違い、考えていることが違うという、当たり前のことに気づかせられる。
主要人物それぞれの願いを丁寧に描くことで、重厚感と厚みのあるファンタジーに仕上がってるなぁと巻を進むごとに思わされ、最後のツェドカの章で明かされる真実はそれまで見えていた革命の裏側が明かされて唸らずにはいられない。
いやぁ…面白かった…。
幕間で夢利きをしている人物は、まぁはっきり言って予想通りなんだが…それを促してる人物については完全に想定外。
うわぁ…そう来たか…と、納得と同時にとても切ないラストが待ってました。
いやほんと…同じシーンが繰り返されるので読みながらどうしても若干疲れちゃう部分はあるものの、そのたびに新たな事実に行き当たるため楽しめました。
そしてアライスを中心にずっと革命の表を描いていた物語は、最終章のツェドカの夢で影の部分を描いているのもいい。
国民に愛され、革命の象徴となったアライスと、倒されるべき現王の後継者となってしまったツェドカ。
二人の叶わなかった夢と、成し遂げられた革命を最後まで見届けて欲しいシリーズでした。
…これ、もう一冊サイドストーリーがあるのよね…刊行が楽しみだわ。 

こんな本もオススメ


・森 博嗣『スカイ・クロラ』シリーズ

・伊坂 幸太郎『重力ピエロ』

・辻村深月『スロウハイツの神様』

最後まで読んで見えた世界に思わず最初に戻りたくなる本をおススメしてみたり。
スカイクロラシリーズは本の装丁考えると文芸書で全巻揃えたいやつですわ。

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