読書感想『叡智の図書館と十の謎』多崎 礼
どこまでも続く砂漠の果てに、古今東西の知識のすべてが収められ、至りし者は神に等しい力を手に入れる図書館があるという…
長い旅路の末、思考する石板を携えた旅人ローグはその場にたどり着いた。
ところが、図書館は鎖に封じ込められ、その扉の前には武器を携えた守人がいた。
鎖に縛められたその扉を開かんとするローグに守人が謎をかける。
鎖は十本、謎も十問。旅人は答えを間違えずに万智の殿堂へたどり着くことはできるのか?
守人の謎かけに対し、それの答えを導くための短話が語られるというちょっと変わった短編集のような長編。
十個の謎かけに対し、それぞれ時代背景や設定の異なる短編がはじまるので若干急に世界に入り込めない感はあったものの、それぞれの話は面白くて本としては上々。
最初のうちは割と世界が近く短編は短編でつながっているのか?と思ったので、それに関しては微妙に繋がったり繋がってなかったりな散文的でちょっと残念。
滅茶苦茶ファンタジーな短編(内容は割とグロテスク)から始まり、中世ぽい世界観から和風な時代背景のもの、そして最終的には守人の正体につながるSFまでと盛りだくさんである。
うん、多崎先生の幅の広さはよくわかる一冊になっている感じですね。
個人的に作品集としては面白く読みごたえはあったのですが、一つの長編としてはちょっと読みにくかったかな?
ただこの作家さん、状況の説明が非常に上手い方だな、と読むたびに思います。
いろんな設定を考えられる幅も広さもだが、それを的確に伝えてくる書き方が非常に上手い…。
ファンタジーは苦手な人でも読みやすいのではないかな?と思わせる方です。
・彩瀬 まる『骨を彩る』
・伊坂 幸太郎『残り全部バケーション』
・恩田 陸『spring』
ゆるゆると連鎖して別のものを紡いでいくって面白いんだよなぁ…。
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