読書感想『首木の民』誉田 哲也
大学の客員教授の久和は、窃盗と公務執行妨害で逮捕された。
彼の車から発見されたのは、血痕の付着した菊池創という他人の財布だった。
久和は内閣府が設置する経済財政諮問会議に参加したこともある経済政策通なのだが、すべての公務員を信用しないと公言し取り調べにもまともに応じない。
財布の持ち主である菊池が何者かを探っていた中田は、やがてフリージャーナリストの菊池創にたどり着くが本人とコンタクトが取れない。
やがて菊池が調べていたという交通事故が財務省のある人物とかかわりがあることが見えてきて…
誉田哲也先生の警察ものだ~きっとまた凄惨でグロいことでしょうよ…と思って読みだしたら、何やらだいぶ様子が違う。
なんか刑事は割とのんきだし、事件としては窃盗と公務執行妨害というなんだかちょっと長閑な感じで始まって…
取り調べが始まって、え、あ?ちょっと待って急にめちゃめちゃ経済語り始めた!?な謎の展開に…
取調室は完全に経済の講義室と化し、財布の持ち主を探す中田たちはなかなか持ち主・菊池には出会えないまま、菊池の調べていた事件に目を向けて事件は展開していく。
取り調べには応じないものの、経済講義は止まらない久和に振り回されつつ、そもそもそんな長期間久和を拘留しておくべき事案なのか?という疑問とともに徐々に明かされる事件の真相はなかなか予想の斜め上で面白かった。
うん、なんか…警察ものを読んでるんだか、経済小説読んでるんだか悩みつつ、読めば読むほど自分の無知さに気づかされる一冊でした。
いやこれ、この小説の本質として久和のいうことをそのまま受け取って財務省ってやつは!?って憤慨するのも思考停止で怒られるやつなのか…。
財務省の企てとか、国債や税金の仕組み解説などは興味深く、経済に疎い人間にもわかりやすかったので面白く読みました。
んですが、個人的には…曲者刑事たちがエグい事件と相対する誉田作品が好きなので…
これじゃない感…といいますか、なんかもっと生きるか死ぬかのピリピリしたのが読みたかったなぁーってのが正直な感想。
ううーん、一個前のやつも微妙にキャラクターがみんなぽやんとしてた印象を受けたので、なんか作風が変わられてしまったなぁってちょっと思ったり。
これはこれで面白いんだが、個人的にはもっとピリピリしてるやつのが好みかな。
そういう意味ではちょっと残念。
こんな本もオススメ
・池井戸潤『鉄の骨』
・額賀 澪『弊社は買収されました! 』
・葉真中顕『そして、海の泡になる』
あんまり進んで読むジャンルじゃないなーって気づいたわ経済小説。思いつくのはほぼ池井戸潤作品でした笑