読書感想『なんどでも生まれる』彩瀬 まる

一羽のチャボが巻き起こす、人の出会いと再生の物語

外敵に襲われ逃げ出したところを茂に助けられたチャボの桜。
まだ幼い桜を大事に守ってくれた茂だが、茂は仕事がうまくいかず心に深い傷を負ってしまい部屋から出ることさえできなくなってしまう。
茂の力になりたい桜だが、如何せんチャボの桜は何もできず弱りはてていた。
そんな茂と桜を助けてくれたのは、金物店を営む祖父母だった。
東京下町の商店街の金物屋の二階に保護されたものの、そこで引きこもる茂。そんな茂を外へ連れ出してくれる人を探しに行こうと桜は決意する!!
主人公はまさかのチャボ。
チャボの桜が引き寄せる、出会いと再生の物語。



…か、かわいい……!!
仕事があわず人間関係もうまくいかず追い詰められてしまった茂だが、彼は本来優しくて誠実な青年である。
敵に襲われて逃げ出した、まだひよこだった桜を保護しとても大切に育てたのである。
結果、桜は茂が大好き、茂のために頑張るキュートなチャボとなっている。
…か、かわいい、かわいすぎるよ、桜さん…!!!!
茂を守るために他者を威嚇したり、勇気づけたくて膝に乗ったり、何より一緒にいたくて肩に居たり…とにかく、やることがキュート。
そのうえであくまでチャボなので、人間の雄、人間の雌、つがいって人間を表現するのも可笑しみがあり、とにかく桜さんがどんどん愛おしくなる。
茂が桜を『桜さん』と呼ぶので、桜は茂を『茂さん』とさん付けで呼ぶのもめちゃくちゃいい。
桜さんの言葉はもちろん茂には伝わらず、そのことを理解しながらも茂に寄り添い、茂を前に進めたいと見守る桜。
そんな桜さんの思惑はもちろんわかってはいないが、自分がボロボロになると同じようにボロボロになってしまう桜さんのために何とかしないとと思える茂も素敵な人で読んでて終始ほっこりしてしまう一冊でした。
桜さんに見守れながら、一歩ずつ前に進もうとする茂を見守ってくれる商店街の人々も優しいくて良い。
桜さんの話し相手はもちろん鳥たちで、インコから野鳥まで鳥の視点で差し込まれる言葉たちも面白い。
何ともかわいい本を読ませていただいた…
これは読んでて幸せになる一冊だわ…。
続くのかしら?続いてほしい…桜さん卵温めたそうだったし…(笑)

・『水車小屋のネネ』津村記久子

・『うらはぐさ風土記』中島 京子

・『有頂天家族』森見 登美彦

人のすぐそばにいる人じゃないものに、進むきっかけをもらえることは多々あるなぁ~
人目線じゃない小説って思いがけない視点があって笑っちゃったりもしますよね。

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