読書感想『〈本の姫〉は謳う④』多崎礼
〈本の姫〉とめぐる文字回収の旅、ここに閉幕。
世界に災厄をもたらす〈文字〉回収の旅も終盤に差し掛かかるなか、世界の滅亡を目論むレッドの策略でアンガスは絶望に叩き落される。
今まで憎しみを広げないように努力してきたアンガスだったが、そんな信念も絶望に飲まれてしまう。
同時に語られてきた〈俺〉の物語も、いよいよ天使たちとの決戦の時を迎えていた…
交互に語られてきた二つの世界がついにつながる―――
長い物語もついに最終章となり、旅にも、レッドとの因縁にも決着がつき、〈本の姫〉にも終わりが訪れる最終巻。
若干、詰め込みすぎというか、最終巻めっちゃ駆け足だな!?感はあるものの、読みごたえと全員の終着点にはめちゃくちゃ満足なので、とても面白かった…。
いやほんと、全4冊、完全に続きものなので読むのには若干気合がいるシリーズではありますが、続きが気になって刊行がとても楽しみでした!!
自分ではない記憶を持ち、辛い思いをたくさんしてきたアンガス…巻を進むごとに世界の状況は悪くなっていくのに、彼の周りには仲間が増えていくのもよかったし、そのうえで4巻で起こる様々なことは読んでいるこっちまで絶望しそうになる。
同時に語られる〈俺〉の話も、どんなに追い詰められてもあきらめずに足掻くさまが胸アツで、何度も一緒に叩きのめられそうになりながらもたどり着いた最後、よかった…
最終巻、本当にちょっとね、駆け足!?怒涛すぎ!?と感じた部分は多々あったんだが(笑)、最初からきちんと作りこまれてたことが随所にうかがえておいて行かれた感じはしなかったですしね。
すでに印刷されている本、という媒体すら物語のモチーフにされているのも面白い。
観測されるまでは存在しない、けれどすでに未来は決まっている…的な捉え方に思わずうなりました。
最初から最後まで面白かったぁ~
こう、完全異世界のファンタジー小説って、実は滅茶苦茶苦手で…ましてこんな長編、途中で脱落するんじゃないかと思って読み始めたんですが、
世界の作りこみが丁寧なこと、そしてその説明が非常に上手く、物語の進めながらうまくそれを伝えてくる文章に助けられ、とても面白く読み進めさせていただけました。
これは…ファンタジー苦手だしなぁ~って無視しないでよかった…
いや~良かった…みんなこれからは幸せであってほしい…。
最後までぬかりのない幕引きに、レーエンデ国の最終巻も期待してます。
・上橋 菜穂子『鹿の王』
・宮部 みゆき『ドリームバスター』
・恒川 光太郎 『スタープレイヤー 』
ファンタジーってなんでもありなんですけど、やっぱりリアリティがないとのめりこめなかったりしません??