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読書感想『まぼろしの女 蛇目の佐吉捕り物帖』織守 きょうや

相生町の親分さんには、蛇の目がついてるんだね

本所一帯を縄張りに、「相生町の親分」と呼ばれた亡き父の後を引き継ぎ十手を預かる若い岡っ引きの佐吉。
亡き父の人徳で周囲に立ててもらっているが、自分の未熟さをかみしめている佐吉はいまだに自分に自信が持てない。
ある時、大川で若い女の死体が発見される。
裸に剥かれ、真新しいあざと傷だらけ、顔は腫れあがり髪まで剃られているという惨たらしい状態だった死体の身元を佐吉は調べ始めるか、何故かいくら聞きまわっても判然としない。
殺された女の身元が分かるよりも先に、下手人のほうが判明したのだが、その証拠固めの最中その下手人が殺されてしまう。
いったい女は誰で、新たな事件の犯人は誰なのか…(まぼろしの女)
表題作のほか、新婚早々に殺された妻と失踪した夫、死体のそばに二十四文を残す辻斬り、寿命寸前で殺された男などの事件に佐吉と、幼馴染の医者・秋高が挑む連作短編ミステリー。


江戸を舞台に新米岡っ引きの佐吉と、町医者・秋高が事件解決に挑むミステリーである。
江戸が舞台なのでもちろん時代物ミステリーなのだが、事件の根幹にジェンダーのことが組み込まれていたり、連続通り魔だったりとなかなかテーマが現代的で読みやすい。
まだまだ新米で自信がないながらも、父の背中を追いかけて真摯に事件に挑む佐吉は好感が持てるし、相方で着道楽の町医者・秋高の目の付け所には舌を巻く。
それぞれ復讐であったり、名誉であったりと自分のやるべきことを決めてしまった人々がおり、事件の真相にはそんな人たちの譲れない信念が大きく関わっている。
事件の真相を追いかける佐吉は、犯人を見つけると共にそんな犯人たちの信念を見つけることになる。
まだまだ自分に自信のない佐吉だが、その真相を見つけた時にただただ犯人を捕らえるわけではなく、その信念に沿って采配を振るおうと苦悩するのが印象的でいい。
その上で最終話の秋高の考察で事件の在り方が変わってしまったのも印象的で本の終わり方としてよかった。
亡くなった父親の跡継ぎとしてふさわしいように奮闘する佐吉と、そんな佐吉に協力を惜しまない秋高のコンビが魅力的で周りを固めるキャラクター達も個性的だ。
現代的な感覚の事件と、江戸時代の感覚の考え方が良い感じに融合しているのも面白い。
…これはシリーズになるのかしら???
シリーズになるなら続きも買っちゃうなぁ~

こんな本もオススメ


・宮部みゆき『きたきた捕り物帖』シリーズ

・宮部みゆき『この世の春』

・本多 孝好『こぼれ落ちる欠片のために』

現代チックな題材と時代ミステリーって意外と親和性高くて面白いな~ってのと…
なんか続けざまに事件を解決する人が犯人側の矜持に寄り添う感じのやつ読んだな…って感じ。どっちも面白かった。

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