読書感想『ダブルマザー』辻堂 ゆめ
うだるような真夏日に、一人の女性が列車に飛び込んで死んだ。
彼女の持っていた所持品により、彼女は『馬淵鈴』であると警察は判断し、彼女の遺体を母親である馬淵温子に引き渡した。
彼女の葬儀をしましたものの鈴の死を受け止めきれていない温子は、彼女が死んだその日に持っていたカバンの中から見覚えのない財布とスマホを見つける。
鈴のものではないそれらは、どうやら『柳島詩音』という音大生のものらしい。
詩音に返却するべく連絡を取ろうとしたが、詩音には繋がらず、代わりに彼女の母がそれらを引き取りに来ることに…
ところがやってきた彼女は『鈴』の遺影を見て激昂する。
「どうしてここに詩音の写真があるのか!?」と…
亡くなったのは一人、彼女を娘だと認識したのは二人の母親…一体、死んだのはどちらで、もう一人はどこに行ったのか…。
性格も生活環境も全く違う二人の母親、彼女たちの共通点は娘のことを何も知らないこと…。
自分の娘を求めて、彼女たちは二人の娘の軌跡をたどり始める。
いろんな設定がぶっ飛びつつも、何故か妙にリアリティのあるミステリーである。
事のきっかけは一人の女性が自殺してしまう事なのだが、その自殺の理由がまず母親二人には全く分からない。
そしてこの二人の母親、がまぁ…どっちも、なかなかまともじゃないのである。
鈴の母親は、シェハウスに住み複数の男と関係を持ち、誰とも結婚はせずに、鈴はみんなの子だ、と言って育てていた。
詩音の母親は、旦那が会社から不正に持ち帰ったお金を正当化する自分勝手な女である。
二人の母親のそれぞれの視点と、鈴と詩音のパートが繰り返されながら物語は転化していくのだが、はっきり言って母親二人に全く同調できない。
彼女たちには娘を失くした喪失感となぜ自殺をしてしまったのかという疑問を解消するために行動をするのだが、重視何処か独りよがりな印象が付きまとうのである。
で、多分ね、僕もそうなんだが、自殺してしまった女性の正体については容易に想像がついてしまうんですが…
ただ、最終章で明かされる真相は予想よりグロくて、より二人の母親のいびつさが際立つ仕上がりになっており、想像がついても十分面白一冊に仕上がっている。
うわー…嫌なもの読んだ…⁽褒めてる⁾
この母親にしてこの子有りなのかもしれない…。
娘のことを根本的に理解してない母親二人と、逆に母親のことを正確に理解している娘のイヤミスですわ。
読後感、悪…⁽褒めてる⁾
こんな本もオススメ
・湊かなえ『母性』
・辻村深月『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』
・芦沢 央『悪いものが、来ませんように』
母と娘って…狂気を孕むことがあるのよね…。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?