シェア
若草
2020年5月21日 22:20
『銀河鉄道の夜』みたいだ。--黒猫である吾輩・朔(さく)は、生まれて初めて乗る電車を見てそう思った。何しろ、人生(ネコだから猫生だろうか?)の大半を、ご主人様の家で過ごしてきたのだ。ご主人様が語ってくれる電車なんて乗り物は、小説の中でしか存在しない空想上のものだと思っていた。それなのに、吾輩は人間•サクラと電車に揺られている。ご主人様の知らないところで。「電車の中に入ったら、大人しくして
2020年5月18日 22:39
「クロ、起きてる?出かけよう」吾輩は猫である。そんな毎度お決まりの挨拶をする暇もなく、サクラは空が明るくなる前に、吾輩をカバンの中に押し込んだ。思い返せば、サクラは昨晩から様子が不自然だった。「ただいま」いつものように玄関まで迎えに行ったが、サクラはしゃがみ込んでしばらく動かなかった。顔を隠して、何も言葉を発しない。お腹でも痛いのだろうか。ミャーと鳴いて声をかけてみる。サクラはやっ