見出し画像

社内研修講師として登壇をするときのポイント


1. はじめに:社内研修講師を頼まれたらどうする?

社内研修の講師を頼まれたとき、「何をどう話せばいいのか」「うまく進められるだろうか」と不安を感じる方も多いのではないでしょうか。普段の業務とは異なる役割を担うことになり、受講者にとって価値のある研修を提供しなければならないというプレッシャーを感じるかもしれません。

しかし、研修講師は特別な才能やセンスがないと務まらないものではありません。もちろん、話が上手な人や場を盛り上げるのが得意な人もいますが、講師のスキルは学ぶことができ、場数をこなせば一定のレベルまで確実に向上します。実際、経験を積むことで、受講者の反応を見ながら進行できるようになり、より効果的な研修を実施できるようになります。私自身も人前で話すのは苦手でしたが、ある程度経験を積むことでお金を頂く講師として活動することができております。

また、社内研修は「社内の誰かが講師を担当するからこそ、実践的な内容を共有できる」という利点があります。外部講師と違い、社内事情を理解した上で具体的な事例を紹介できるため、受講者が実務に直結する学びを得やすいのが特徴です。そのため、一方的な講義ではなく、受講者の関心を引き出しながら進める工夫が大切になります。

そう考えるとジェネラリストとして幅広く社内の他部署と関わる経営企画担当に講師を依頼されるケースは多いと思います。私自身も財務会計やフランチャイズ、コンプライアンス、経営企画業務について、など様々なテーマで社内講師として登壇しました。

本記事では、社内研修講師を担当するときに気を付けるべきポイントを 「準備」「実施」「研修の成果を最大化する工夫」 の3つの視点で解説します。研修を頼まれた際に、どのように準備し、どのように進行すればよいかのヒントをお伝えするので、ぜひ参考にしてください。

2. 研修の目的と内容を明確にする(準備編)

社内研修を成功させるためには、研修の目的を明確にし、受講者に合った内容を準備することが不可欠です。研修の準備がしっかりできていれば、自信を持って講師を務めることができ、受講者にとっても有意義な学びの場になります。

特に社内研修では新人や若手社員が対象になることが多いため、基本的な知識を分かりやすく伝えることが求められます。ここでは、研修を設計する際に意識すべきポイントを解説します。


(1) 研修の目的とゴールを明確にする

研修を依頼されたとき、最初に確認すべきなのは 「この研修は何のために行うのか?」 という点です。上司や人事部と事前に話し合い、以下のような質問をもとに研修の目的や期待される成果を明確にしておきましょう。

  • この研修を実施する理由は?(背景・課題の整理)

  • 受講者にどんな知識・スキルを身につけてほしいか?

  • 研修後、受講者にどのように行動してほしいか?

例えば、「新入社員が業務の基本を理解し、早く戦力化できるようにする」という目的であれば、基礎知識のインプットだけでなく、業務の流れや実践的なケースを盛り込む必要があります。目的を明確にすることで、研修の内容がブレるのを防ぐことができます。


(2)受講者のレベルやニーズを把握する

社内研修では、新人や若手社員が受講するケースが多いため、受講者の知識レベルや理解度に合わせた内容にすることが重要です。以下の点を事前に整理しておきましょう。

  • 受講者の経験値:新卒なのか、中途採用なのか?職種ごとに知識の差はあるか?

  • 業務のどこでつまずいているか:現場の先輩社員にヒアリングして、実際に困りやすいポイントを把握する

  • 受講者の意識:研修に対するモチベーションの高低を考慮し、興味を引く工夫をする

特に新人・若手向け研修では、「知らないことが前提」で話す必要があります。専門用語や社内の慣習を当たり前のように話すと、受講者が理解できないまま進んでしまうので、簡単な言葉で具体的に説明することを意識しましょう。


(3)分かりやすい研修構成と資料の作り方

研修の構成は 「導入 → 本題 → まとめ」 の流れを基本にすると、分かりやすくなります。

  • 導入:なぜこの研修が必要なのか?(研修の目的、学ぶメリットを説明)

  • 本題:研修のメインとなる内容(実務に役立つ知識やスキル)

  • まとめ:学んだことの整理と、現場での活用方法のアドバイス

特に導入部分で「この研修を受けると、〇〇ができるようになります」と具体的なメリットを伝えると、受講者の関心を引きやすくなります。

スライドや配布資料のポイント

  • 1スライド1メッセージ(詰め込みすぎず、伝えたいポイントを絞る)

  • 図やイラストを活用する(視覚的に理解しやすくする)

  • 業務に役立つチェックリストやテンプレートを配布する(すぐに実践できるようにする)

文字ばかりのスライドや資料は、受講者の集中力を削ぐ原因になります。「シンプルで、直感的に理解できる内容」 を意識して作成しましょう。

3. 受講者が学びやすい研修の進め方(実施編)

研修の準備が整ったら、いよいよ当日の実施です。しかし、どれだけ入念に準備をしても、研修が「一方的な講義」になってしまうと、受講者の理解や定着にはつながりません。特に新人や若手社員が対象の場合は、研修内容に興味を持ってもらい、積極的に学ぶ姿勢を引き出すことが大切です。ここでは、受講者が学びやすく、実務に活かせる研修の進め方について解説します。


(1)研修の冒頭で「なぜ学ぶのか?」を伝える

研修の最初に、「この研修がなぜ必要なのか」「学ぶことでどんなメリットがあるのか」 を明確に伝えることで、受講者の関心を引き、積極的に学ぶ姿勢を作ることができます。

受講者に響く話し方のポイント

  • 「この研修を受けることで、〇〇ができるようになります」 と具体的な成果を伝える

  • 「先輩社員がよくつまずくポイントなので、これを知っておくと業務がスムーズになります」 など、実務との関連性を示す

  • 「これは私自身も新人の頃に悩んだことですが…」 など、講師の経験談を交えて話す

特に新人や若手社員は、「研修を受けることが仕事」と考えがちですが、「この知識があれば、仕事で評価される」「早く一人前になれる」 といった実務的なメリットを伝えることで、学ぶ意欲を高められます。


(2)一方的な講義にせず、双方向のやり取りを取り入れる

長時間、講師が一方的に話し続ける研修は、受講者の集中力が低下し、理解度も下がります。受講者が「考える」「話す」機会を増やすことで、より効果的な学習につながります。

双方向のやり取りを増やす工夫

  • 質問を投げかける

    • 「この場面で、皆さんならどう対応しますか?」

    • 「これまでの経験で、似たようなケースに遭遇したことはありますか?」

  • グループディスカッションを取り入れる

    • 実際の業務に関連するテーマで、受講者同士で話し合ってもらう

    • 「業務の優先順位をつけるとしたら?」など、考える機会を作る

  • 簡単なワークを実施する

    • 例:ロールプレイング(営業・接客・クレーム対応など)

    • 例:クイズ形式で理解度を確認する

特に新人・若手向けの研修では、「とにかく覚えなければならない」と受け身になりがちです。講師が問いかけを増やすことで、受講者の考える力を引き出し、理解を深めることができます。


(3)受講者の理解度を確認しながら進める

研修をスムーズに進めることも大事ですが、それ以上に重要なのは、受講者が本当に理解しているかどうかを確認することです。講師側の自己満足にならないよう、随所で「理解度チェック」を行いましょう。

理解度を確認する方法

  • 小テストや簡単なクイズを実施する

    • 「今の説明をもとに、〇〇の手順を3つ挙げてみましょう」

    • 「これは正しい?間違っている?」と、簡単な選択問題を出す

  • 受講者に説明してもらう

    • 「今の内容を、隣の人に簡単に説明してみてください」

    • 「この手順を新人に教えるとしたら、どう伝えますか?」

  • 途中で質問の時間を設ける

    • 「ここまでで、分かりにくい点はありましたか?」

    • 「実務で使うイメージが湧かない部分はありますか?」

理解度をチェックすることで、講師側も**「どこを重点的に説明すべきか」「どんな言葉で伝えると理解しやすいか」** を調整でき、より実践的な研修にすることができます。


(4)研修の最後に「行動につなげる」アドバイスをする

研修を終えたあと、受講者が学んだ内容を現場で活かせなければ意味がありません。最後に**「学んだことをどう実践に結びつけるか」** をしっかり伝えましょう。

実務に活かすためのアプローチ

  • 「明日からできること」を具体的に伝える

    • 「このチェックリストを活用して、業務の抜け漏れを防ぎましょう」

    • 「この報告の仕方を、来週の会議で試してみてください」

  • 「学んだことを同僚に説明する」機会を作る

    • 「学んだことを、来週のミーティングで1分間話してみましょう」

    • 「同期に今日のポイントをまとめて伝えてみてください」

  • 研修の内容を、業務の中で試すよう促す

    • 「まずは1週間、意識して取り組んでみてください」

    • 「実際にやってみて、分からないことがあれば相談してください」

研修の最後に**「この知識を活かすことが評価につながる」「実務に取り入れれば仕事が楽になる」** というメッセージを伝えることで、受講者が研修後も意識して行動しやすくなります。

まとめ

社内研修を効果的に進めるためには、「なぜ学ぶのかを伝える」「双方向のやり取りを増やす」「理解度を確認しながら進める」「学びを実践につなげる」 というポイントが重要です。特に新人や若手社員向けの研修では、知識のインプットだけでなく、実務に活かせる形で理解を深める工夫が求められます。

研修は「話して終わり」ではなく、受講者が学びを自分の業務に落とし込めるかどうかが成果を左右します。受講者の立場に立ち、学びやすい環境を作ることで、研修の効果を最大化できます。

研修講師は経験を重ねることでスキルアップできる仕事です。今回紹介したポイントを意識しながら、自信を持って研修に臨んでください。

いいなと思ったら応援しよう!