渋谷系って何なのさ
わたしの年末年始は渋谷系プレイリストと共に過ごしている。Twitterのタイムラインでこんなプレイリストを見つけてしまったからだ。
ポップカルチャーニュースサイト 音楽ナタリー
「1990年代生まれが作る渋谷系プレイリスト」
https://natalie.mu/music/column/361381
渋谷系が流行ったのは1990年代だから、プレイリストを作った彼らは「世代」ではない。ちょうどその頃に生まれたのだからリアルタイムの記憶はほとんど無いに等しいのだけど、それでもよく知ってるなぁと思わせる選曲をするのは、彼らが身を置いている音楽業界にとって渋谷系が与えた影響が大きいということだろう。
渋谷系の代名詞であるピチカート・ファイヴやフリッパーズ・ギター、スチャダラパーは、実は30代後半であるわたしもリアルタイムの世代ではない。今40代前半くらいの年代がちょうど多感な年頃の時代が渋谷系の全盛期だ。
シティポップを聴きながらゲレンデに連れてってもらったり波の数だけ抱きしめてもらう時代が終わった頃、つまりバブルが崩壊した直後に渋谷系は生まれた。渋谷系にはこれといった音楽ジャンルのカテゴライズは無い。ラウンジのようなリラックスした音楽や、ギターポップ、ヒップホップなどジャンルはアーティストによって様々だが、おおむね共通しているのは脱力したような歌唱法や旋律だろう。Wikipediaでは「オシャレ」「メインストリー厶との絶妙な距離感」と表現されている。
バブルの時代は、がんばればがんばっただけ豊かになれた時代だ。こんなことを言うとバブル時代を駆け抜けてきた人たちに、そんなに簡単なもんじゃないよと言われそうだが、進むべき道は簡単な一本道で、ひたすら真っ直ぐに進めば普通の幸せが手に入る世の中だったんじゃないかと想像する。
だけど当たり前だった価値観は泡のようにハジけた。真っ直ぐ進んだってどうせどうにもならない。真っ直ぐに進めるかも分からない。それならばいっそ肩の力を脱いて今を楽しもうよ。そうやって閉塞した時代の空気から必然的に生まれたのが、「脱力」して「オシャレ」で「メインストリームとの絶妙な距離感」をもった渋谷系なのではないだろうか。渋谷系は新しい時代の価値観を生みだしたのだ。
だから渋谷系は年が生まれ変わる年末年始に相応しい。今までの価値観を壊し、新しい何かが生まれる予感が旋律と歌詞に宿っている。
地方出身者が消えてガランとした年末年始の街中でわたしは渋谷系を聴いている。新しいわたしが生まれるかもしれない、っていう他力本願な気持ちで。
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