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生産の最適化から収益を生む #193 サプライチェーンマネジメント(SCM)

企業会計(アカウンティング)の観点から、組織をプロフィットセンターとコストセンターに区分する考え方があります。
プロフィット・センターとは、売上と経費が集計される部門であり、売上から経費を差し引いた利益を高める(プロフィットアップ)ことが課題となります。
対して、コストセンターは、経費のみが集約される部門となります。

製造業であれば、工場は、コストセンターの典型でした。
そのため成果を高める手法と言えば、コスト削減の一辺倒であったかに思えます。

対して、工場のプロフィットセンター化を目的にしたものが、サプライチェーンマネジメント(SCM:Supply Chain Management)です。

サプライチェーンとは、製品やサービスの原材料調達から生産加工や在庫管理、流通や販売、各プロセスに携わる物流など、開発から消費者の手に渡るまでの一連の流れを意味します。
そもそもは製造業に限定されるものではなく、あらゆる業態に存在することになります。

それが産業の近代化に伴い、特に製造業においては複雑さを極めます。
そこで、サプライチェーンの最適化により収益を高める必要性が高まりました。

ポイントとなるのが利益、現金、コストと捉えています。

もちろん、利益を拡大させるために売上原価(変動費)や諸経費(製造固定費)などの無駄なコストの削減は必須事項です。

参考および活用書籍


しかしながら、これまで製造部門は利益を得ることに無頓着だったとも言えます。
まず、言えるのが、利益は、売上の内数です。
つまり、利益を得る、利益を高める手段として売上が必要です。

その売上ですが、注文に対して製品を出荷することで立ちます。
ところが、その製品が欠品したら、本来、立つところの売上が、その機会を失うことになります。

ならばと、今度は、欠品させないために在庫を増やす考えになるかもしれません。
ところが、注文を大きく上回る在庫を抱えることとなれば、それは過剰な在庫として現金が滞留することを意味します。
つまり、利益(粗利)に対して在庫が増えると現金が減ってしまうのです。

つまり、SCMでは、如何に社内に無駄な在庫を滞留させずに、欠品を発生させないかが重要な役割となります。
単純には、在庫の回転率を上げる取り組みとなります。
その上で、コストを削減させることが必要となります。

施策は多岐に渡り、その時の状況によって優先順位も変わってくると考えます。(以下は一例)

* リードタイムの短縮
* 精度の高い生産計画の立案
* 在庫の最適化
* 人的リソースの合理的な活用
* 経費(製造固定費)の削減
* 原価(変動費)の抑制
* サプライヤーとの関係強化
* 顧客の要望納期への対応

また、様々な課題を実行する上での代表的な手法もあります。

・ジャストインタイム生産方式
必要な製品を、必要な時に、必要な量を生産することを実現させることで、在庫を徹底的に減らして効率化させる取り組みです。
カンバン方式は、ジャストインタイム生産方式を推進するために考えられた手法です。

・TOC(制約理論)
サプライチェーンの中で、処理能力が与えられた仕事と同じか、それ以下の工程であるボトルネックを解消させる取り組みです。
サプライチェーンは、ボトルネックの処理能力に制約されてしまうので、ここを解消することで生産効率が高まります。

その他、AIやIoTなどを活用したDX、コンピューター、インターネット、ロボットなどの技術革新によってSCMをサポートするあらゆるサプライチェーン・システムが進化しています。

実際の運用ですが、SCMにおいても、PDCAを回してマネジメントしています。

P:計画
どのような製品がどれぐらい販売できるかを営業情報や過去の実績から予測する。
その予測を元に原材料の調達や生産計画を立案する。

D:実行
生産計画に基づき、実際の生産を進めます。
なんらかのトラブルによって、計画通りに実行出来ない場合のリスクマネジメントも重要となります。

C:評価
計画通りに実施して、望ましい結果が出たのかを検証します。
望ましい結果を得られなかった時は当然ながら、望ましい結果であった場合でも、その原因を仮説でも構わないので断定させます。

A:改善・調整
評価結果を受けて、次の生産計画の立案時に改善を織り込みます。
また、計画そのものを抜本的に見直す必要性なとの調整があれば対応します。

SMCですが、単なる生産管理と捉える方も少なくありません。
しかし、製造業にとって中枢的なマネジメント機能となります。
そして、経営としても質の伴った収益を生み出すことで、会社を存続させ続けるためにも大切な取り組みの一つとなります。

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