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ゴドーを迎えに、いざ最悪の方へ

サラリーマンの桃源郷

就業者6667万人に対して、雇用者は5973万人。
日本の就業者のうち、89.6%はサラリーマンです。
非雇用者は日本に693万人¹いることになります。

note然り、SNSでは起業家やフリーランスの文字をよく見かけます。

おそらく単純な話で、いずれも本人が広報に力を入れているからでしょう。

かつて私の目には、経営者・フリーランス・夢追い人たちの芝が生命力豊かに青々と映りました。

そして、自分が関心を寄せる情報の泡に閉じこもり、世の中には会社に縛られない人がたくさんいて、みんな自分の好きなことを仕事にして、自由で豊かに生きているんだと錯覚しました。

空想力が乏しくとも、アルゴリズムがフィルターバブルで包まれた私たちそれぞれの夢を突き詰めてくれる²ので、容易く理想郷を画面の中に見出すことができます。

一人で何かをはじめるのは、簡単なことじゃない。

独立が簡単だったら、9割サラリーマンやっていません。
一度独立して、挫折して、サラリーマンに戻ってきた方も多いはずです。

すでに好きなことを仕事にしている

元助教授で作家の森博嗣先生は、著書で以下のように語ります。

仕事におけるモチベーションは、第一に賃金を得ること、そして次には、仕事を覚えること(技術的な成長)だと思う。

森博嗣,『新書402 やりがいのある仕事という幻想』,朝日新書,p.164,2013.

もはや雇用形態は小さな問題です。
森先生の提言は、根本的に私たちが仕事に対して抱いている固定概念を見定め、取り外していきます。

好きなことがあれば、なりたい目標・職業があれば、すでにそこに向かってアクションを起こしているはず。

好きな業界で仕事をする。
大切な家族のためにお金を稼ぐことが好き。

「好きなことを仕事にしよう!」という耳タコなキャッチフレーズに惑わされずとも、すでに好きなことをしているかもしれません。

好きなことを仕事に!と売られる、情報商材にどうかつられないように。

お金のための仕事でいい

本当に楽しいものなら人に話す必要なんてないのだ。最も大事なことは、人知れず、こっそりと自分で始めることである。

森,p.196,2013.

じゃあ楽しいことは?
「楽しいことを仕事にしよう!」というキャッチフレーズははあまり聞かない気がします。
仕事は楽しくないものだからとも考えました。

でも、森先生の考え方を拝借すると、逆に仕事は楽しいものだからという前提もありうる気がします。

仕事をしていて楽しいと感じるのは、「これでお金がもらえるんだ」と思い出したときだろう。

森,p.148,2013.

金額の多寡にかかわらず、お金がもらえた!って喜ぶことができたら、どんな仕事だって楽しいもの。

ACT NOW, THINK LATER

社会貢献、利他、業界活性化、必ずしも高尚な目的を掲げなくたっていい。
ひとまずお金が稼げればいい。

好きなことがしたければ、すればいい。
それでお金になったら幸運。お金にならないのが普通。

稼げなくても、生活のためのお金を稼ぐ時間以外で好きなことをすればいい。
いつかお金になるかもしれない。ならないかもしれない。

悩んで、考えて、考え抜いても。
ついには実行している人には及ばない。

Ever tried. Ever failed. No matter. Try again. Fail again. Fail better.

Samuel Beckett,"Worstward Ho",1983.

挑み続け、転び続けても問題ない。

再び挑み、再び転び、次は前よりもうまく転べばいい。

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¹総務省統計局「労働力調査(基本集計) 2021年(令和3年)平均」,p.7,2021.
²笹原和俊,「ウェブの功罪」,一般社団法人 情報科学技術協会,『情報の科学と技術』,70巻6号,p.p.311-312,2020.


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