日本料理の食卓作法3‐B「会席料理のいただき方」お椀
2006年11月20日 (月)
3.お椀 別名:お吸い物・椀盛りなど…
「鱧のかるかん 小メロン 順才 梅肉」
「甘鯛と蓮根の長芋包み 火取りからすみ
三つ葉 一文字柚子」
「鰻百合根餅 京味噌仕立 くり抜き蕪 丸柚子 粉山椒」
「海鮮八つ橋 海老庄内麩巻き 京人参 芹 木の芽」
お椀は、日本料理のなかで重要な一品であることを前にお話しました。
そしてそれにふさわしく、使われるのは漆塗りの蓋付きであり、器や蓋の内外には美しい絵が描かれていることが多いものです。
この漆塗りの椀は、料理と同様に目で味わっていただきたいものの一つですから、運ばれてくるのをぜひ楽しみにしてください。
器の蓋の外側には、祝い事用に「鶴」や「亀甲」、季節により「梅」「桜」「すすき」などの文様が、金銀で描かれています。
蓋の内側にも、それに呼応する絵が描かれていますから、両方を楽しんでいただきたいですね。
召し上がるポイントは
「温かいうちに食べる」
これにつきます―。
温かいからこそ立ちのぼる香りとだしの味わいは、冷めてしまっては何の魅力もありません。
サービスの人間が、調理場からせっつかれてまで急いでお出しするのは、何よりもそれが理由です。
お椀の食べ方の基本は、簡単に言うと以下のようになります。
1.お椀のふたを開ける
2.両手で椀を持ち、だしを一口飲む
3.箸を取り上げ、実を食べる
以降、2と3を繰り返して、食べ終わったら、
4.ふたを元通りにしめておく
お椀は本来、だしと実を一緒に食べるのではなく、必ず交互に口にするものとされていますので、それに合わせた形で、詳しくご説明しますね。
ただし…これをやると必ず
「めんどくさ~い…」
という声が聞こえてきます…:笑
や、別に、いつもなさっていることをちょっと改まって書いているだけなんですけどね―。
動作を文章で書いて表すって、けっこう大変なことなので…。
1.お椀のふたを開ける
運ばれてきたお椀は、その左側を左手でをささえ、右手でふたを開けてからそれを両手で持ち、あお向けのままお椀の右側に置きます。
・左手で椀の横をささえ、右手の親指と人差し指で高台のふち
をつまみ、中指、薬指、小指はそのまま自然にのばして、
手前から右向こう側へ、「の」の字を書くようにふたを開け
ます。
・手前から右むこう側へふたを開けたら、そのまま椀のふちへ
ちょっと立てかけるようにしてつけ、ふたの内側に付いた
つゆを切ります。
・つゆが切れたら、ふたをそのまま右手であお向けにし、左手
を添えて椀の右側へそっと置きます。
・ふたが椀に吸い付いて取れないときは、椀の横をささえてい
る左手で椀のふちを強くはさみつけると、ふたと本体の間に
空気が入って、簡単に取ることができます。
(普通はこれで開きますが、開かない時はサービスに声をかけ
ましょう)
2.椀の中の“景色”をみて、だしを味わう
ふたを開けたお椀の中の盛り付けを、“景色”といいます。
季節感をあらわした様子を、一呼吸か二呼吸のあいだ楽しんだら、椀を両手で持ち上げ、だしを一口味わいます。
・両手で椀を持ち上げ、左手のひらに乗せて、右手を添え
ます。
・椀の本体に絵が描かれているときは、正面を避けるため、
左右に少し回してから、口をつけてだしを一口飲みます。
・そのまま、両手で椀を置きます。
3.実とだしを交互にいただく
もう一度両手でお椀を持ち、箸をとって椀種などの実を食べる。
・いったん置いた椀を、同じ手順で取り上げます。
・添えた右手を離して、箸をとり上げます。
・箸先を、椀を持っている左手の中指と薬指のあいだにちょっ
と挟みます。
右手を箸頭から回して下から持ち直し、箸先を左手から離し
ます。
・箸で椀の中の実を一口大に切っていただき、実を食べたら、
逆の手順で箸と椀を置きます。
※合い間に酒や飲み物を飲みながら、↑の2と3を交互に繰り
返します。
4.吸い口を通してだしを飲んでみる
「吸い口」とは、柚子皮や木の芽など、香りを楽しむものですから、箸で椀のふちに寄せ、それを通してだしを飲むと、一味違った楽しさがあります。
(その時口に入ったら、食べても問題はありません)
5.食べ終わったら、元のとおりにふたをしめておく
・右側に置かれたふたを右手で取り上げ、左手を添えて両手で
椀の上に持ってきます。
・右手を返し、また左手を添えて元のとおりにふたをしめてお
きます。
※間違ったお椀の扱い方
食べ終わったという印だと言って、お椀のふたをあお向け
にして本体の上に置く方がいますが、これは椀の塗りを傷
めますので、避けていただきたいことです。
これって、なぜか私が子供の頃から、まことしやかに伝わ
っているガセマナーなのですが、発祥はいったいどこなの
でしょうね:笑
私は、ご飯をフォークの背に乗せる食べ方とともに、ウチ
の母に教わった記憶があります。
また、片付けやすいようにと気を遣っていただくのか、他
の食器と重ねてしまう方もいらっしゃるのですが、これも
塗りを傷めるのでご遠慮ください―。
お椀は、口中に残った先附や前菜、酒の味をいったん洗い流し、次からの料理をまた美味しくいただけるようにする、という効果があります。
「何が出るのかな?」でも書きましたが、一口飲んで「薄いな…」と思っても、一椀全部飲んでみると、そこで初めて「ちょうどいい」と思える味付けになっているんですね。
化学調味料でない、上質の昆布とかつお節の一番だしを、ゆっくり味わってみてくださいね。