ロシア式ヨーグルト
「ロシア人はこうやってコーンフレークを食べるらしいよ」
今時よほどの高級ホテルでなければ、宿の朝食は大抵ビュッフェ形式だ。
年末に泊まったホテルで、夫は娘と自分のためにコーンフレークにヨーグルトを掛けたボウルをを毎朝せっせとテーブルに運んだ。
ごく普通のコーンフレークに、ごく普通のヨーグルト、そして蜂蜜やベリーソースを大量に掛けたものだ。
それを食べながら、夫はそれがロシア式の食べ方である、と言った。
「何かで読んだの?」
「いや、どっかのホテルで朝ごはんの時に誰かが話してた。ドイツだったかな」
夫は時々海外出張をするが、ロシアには行ったことがない。
英語で語られたロシア人のヨーグルトの食べ方を、ドイツのホテルで日本人が小耳に挟んだということになる。
全くの誤りであってもおかしくない伝言ゲームだが、私はその話を妙に気に入った。ヨーグルト発祥の地とされるブルガリアはロシアに近いし、あながち嘘でもないかもしれない。
そして、食べてみるとなかなかあなどれない美味しさなのだ。そう言えば私の母はロシアではなく北部九州の出身だが、こんな食べ方をしていた気がする。
日本でもやっている人はやっているであろう、身近な食べ物の組み合わせ。手軽で経済的。それをロシアという、地理的距離以上に心理的距離がある国の人もやっていると思うと、そこはかとなく安心するのはどういう心理であろう。本当に食べているのかはわからないけど。
甘さたっぷりのコーンフレークヨーグルト掛けは癖になって、年が明け自宅に帰っても私たちは毎朝のようにそれを食べ続けている。
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