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詩集 幻人録

322
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2024年6月の記事一覧

夜の終わりの隅端で

夜の終わりの隅端で

何者でもない私です

罪なら山の星の瞬き程に

小さな恥をばら撒いております

心は街のお月さんの様に

わざわざ見上げんと傍観できずにいます

人間の喜びは命の詩を歌うこと

命の詩は産声の如く

涙の湖に小舟を出すこと

真っ白な夜に愛などは無く

いるのは擬態の愛の虫

しかしながらにどんな夜にも

慈悲の白雲は我々を信じ罪と心を隠します

穏やかな夜に嘘なき笑みを

しなやかな程に真っ直ぐ

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芙蓉の花は悲しみにも似た

芙蓉の花は悲しみにも似た

庭に咲いた芙蓉の花は
私を涙園に誘ってくる
暑く揺らぐ季節の向こうで
窓から見える花弁が儚く

心の奥の虎に噛まれた傷痕に
甘い香りが染み込んでいく
それはじんじんと滲みては
私の記憶を掘り返す

あなたからの最後の言葉
それは刹那の花の美しさ
白い戸惑いは夕立に揺らされ
あの頃の生活が胸の奥の映写機で投映させていく

私は今から枯れない様に
綺麗な罠にかからない様に
生命の可憐さに恋をして
花が

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哀愁の庭園

哀愁の庭園

花の香
清く寂しさを纏い
憂いの帯びた
庭にする

それは私が
悲しみの膜のなかで
ひっそりと
生きているから

甘い香
それは幸せの偶像
皆の涙は色がある
燈色の美しい

私の透明の涙は
価値もない
堕天の
象徴

花の香
優しく包み込む様に
本当は私を
愛してくれてる

花の色
それはピンと張ったベッドの
綺麗なシーツの色
白く安らかな程

私次第で
花の香
変わるの

涙の色も
花弁に染み込

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涙を抱いて

涙を抱いて

涙を抱いて
時間を止めて
この世界の記憶を
無くさせて

あなたと居れた
この部屋のなか
幸せのソーダ水
気が抜けた

古い日記は途中で
途切れてしまったけど
新しい物語がほら
始まるの

涙を抱いて
時間が進む
心に水をやり
花が咲いてく

受け止めたから
感じ取ったから
あなたは好きに
生きればそれでいい

その先に私の幸せも
きっとあるから

仔犬も震えるか

仔犬も震えるか

生きているのは今なのです
昨日を生きてるわけじゃない
心の淀みは透明ではないが
今を歩いているのです

裸足ではなくつっかけ履いて
今を歩いているわけで
どこを歩いてもいいのです
知らない路地の裏の方でも

生きているのは今なのです
明日を生きてるわけでもない
心配ごとなど肥溜めに
捨ててしまえばいいのです

裸ではなくべべを着て
意識は薄暮の中でさえ
研ぎ澄まされているのだから
ここを進めばいい

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