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詩集 幻人録

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2023年7月の記事一覧

静寂と生活

静寂と生活

傷を負った流れ星
すぐに楽になるからね
薬を飲んだ満月は
今夜はぐっすり眠れるね

静かな夜には乾杯はいらない
必要なのは見上げた夜空の深い海

汚れた詩を丁寧に
磨いて今日に蓋をしよう

声をひそめて歌いましょ
あの頃の子守唄のように

風が吹いただろう
この夜だけは静かに生きよう

静寂と生活

煌々

煌々

私が嘘をついても
魂は裸のまま
何遍もの物語を
渡りなぞって
今ここにいる

煌々と光る
命の翡翠を
丁寧に磨いても
芋洗の様にしか
ならない私の髄

痛みを宿した
その身体が
一番の標本なのだから
私はその身体を作品にしたいと願う

ただの余計なことだらけ

松に蟻

松に蟻

松の木の影に沿
蟻が歩いている
松の木の影が無くなると
蟻はぐるりぐるりと回ってみせた

それだもんで私は
松の木の一部になった
蟻は私の身体の影枝を
沿って歩き出した

私は幸福感に満ち
松の木のふりをした
何処へ向かうか蟻んこよ
そんなもんは私には関係のないこと

晴れ渡る午後の
日陰の話

優しい言葉

優しい言葉

優しい言葉
頭を撫でてくる
子供の様な
瞳で私をみるの

心の隙間
たくさんの風景画
かき集めたら
ゆっくり旅にでるの

淋しいときは
当たり前かの様に
唄を歌うの
少しうなだれた唄

沈んだ朝の夢を
蹴飛ばしたなら
繋いだ手
離していいよ

一人で歩くの
疲れたのなら
私がいる
傍になぞって

散歩の途中で
ふざけた犬の
鳴き声がただ
今の幸せ

優しい言葉
頭を撫でてくる
子供の様な
瞳がどこ

もっとみる
水色の忘却

水色の忘却

水色の忘却
心を通るは
炭酸水の痛み

あどけない日常
揺らいだ先の身の振り
決めるのは私

脊髄に種を
こまめに水やりを
私を支えるのは私

青い時代の
淡い記憶
あなたが笑った
遠い記憶

今日よりきっと
景色が変わる
期待をしたい
空色の空白

水色の忘却
忘れないから

季の移ろいが
赤色になっても

今はそっと
水色の風景