秒でブチ切れる日本人/ 『喧嘩両成敗の誕生』(1日1冊/6冊目)
理不尽な慣習
「喧嘩両成敗」
日本人なら誰もが一度は耳にしたことがある言葉だろう。
念のため意味を確認しておく。
他の辞書も引いてみたが、詰まる所「どちらの主張が正しいかどうかに関係なく、両方とも処罰(原則処刑)する」というニュアンスが多い。
なんとも物騒で非合理的な法だ。今回はそんな喧嘩両成敗の歴史について見ていく。
参考文献は清水克行先生の『喧嘩両成敗の誕生』だ。
長い話が嫌いな人はおまけだけでも読んでください。今日から使える面白雑学です。
秒でブチ切れる日本人
喧嘩両成敗の誕生に触れる前に、中世の日本人について語る必要がある。
皆様は「日本人」にどのようなイメージを持っているだろうか。
「温和で大人しい」や「争いを嫌う」等々。
今でこそ「大人しい国民性」的なイメージがあるが、昔の日本は全然そんなことなかった。
中世の日本は殺伐としていたのだ。
いくつか興味深い事件を紹介する。
子供に笑われてガチギレ➡大乱闘
時は永享四年。金閣寺を訪れた一行。彼らは金閣寺の門前で立小便をしている僧と出くわす。この時、一行の中の子供が僧を笑った。笑われた僧はブチ切れ、一行との喧嘩に発展する。最終的に他の僧や近隣の町人も含む大乱闘となり、金閣寺の門前は血の海となった。
遊女に笑われて殺人鬼と化す
酔った田舎者がある不始末をしてしまい、それを見た遊女に笑われた。
怒り狂った田舎者は遊女を切り、ついでに遊女屋の主人も斬殺して上で自害した。これだけでも十分恐ろしいのだが、後日田舎者に賛同する者たちによる復讐が行われた。
どうだろう。
日本人に対するイメージが変わったのではないか。
当時の人々にとって自分より低い身分の者に笑われることは耐え難い屈辱であったのだ。
とはいえ上記のような突発的な喧嘩ばかりが問題なのではない。
長年の恨み憎しみによる喧嘩の方がはるかに重要な問題であった。
次章では敵討について語る。
正当化された「敵討」
親の仇を討つ「親敵」、浮気男を討つ「女敵」など、当時敵討は多く見られた。ではこの敵討が合法なのかというとそうではない。
公権力の制定法は敵討を禁止しているのだ。しかし敵討が罰せられなかったことからもわかるように、敵討は慣習として受け入れられていた。
つまり人々にとって「慣習」>>>>「公権力」だったのだ。
この価値観が喧嘩両成敗誕生に関わってくる。
喧嘩両成敗誕生
しばらくの間正当化された「敵討」
しかし時が経つにつれて人々の間にある考えが浸透していく。
「復讐とはいえ人殺して無罪っておかしくね?」
この考えは権力者を大いに困らせた。
「敵討は無罪」と「殺人は有罪」。
悩んだ挙句、「双方ともに罪する」という喧嘩両成敗が生まれた。
同等の罰を与えることで双方の溜飲を下げることは現代でも見かける。
ちなみに「喧嘩した者は理由に関わらず処刑。でも手を出されても我慢したなら無罪。手を出した方は有罪。」という形をとることが多かった。
「非がなくとも殴り返せば死刑にされる」かつ「我慢したら政府が相手を罰してくれる」この二つの理由により、人々は慣習で解決するのではなく公権力に任せるようになった。
以上、喧嘩両成敗についてである。
本の内容がかなり濃いのでだいぶ端折った(重要)
おまけ雑学
本書に載っていた面白い雑学を書いときます。
サシバラと伊達降臨呪文
某アイドルじゃありません。サシバラ(指腹)です。
自分の死をもって強制的に相手を自害させるという慣習。
カードゲームにありそうな設定がリアルにあるの怖すぎる。
次に伊達降臨呪文について。
恨み言を書き残して自害した場合、戦国大名の伊達家が相手を成敗してくれるという分国法。弱者にとって最後の反撃法だったみたい。
理不尽な裁判
どちらが悪いかはっきりしない時、神様に決めてもらうことがあった。
その具体的方法をいくつか紹介。
籤引き・・・そのまんま。完全な運ゲー。
湯起請・・・熱湯に手を突っ込んで中の石を拾い、火傷してたら有罪。
鉄火起請・・・湯起請の進化版。灼熱の鉄板を握らせて行う。
現代人から見ると理不尽極まりないが、「神の意思」という納得しやすい理由を示すことができた。
意味わからん判決
ここでクイズです。中世の人になったつもりで考えよう。
男に死刑宣告or懲役!!!
と思うじゃん?
まさかの寝取られた妻が死刑である。
男は当然妻が好き。間男も妻が好きだろう。ってことで妻を殺せばお互い愛する人がいなくなるのでイーブンだね!!
理不尽すぎるだろ。
このような規範は江戸300年の間も引き継がれ、形式上は明治時代までのこった。。。
最後に
一日一冊もついに六冊目に突入。
ビジネス本、小説と続いたので歴史の本にしました。
教養はついたけど一日で読むのキツかった。。。
最後まで読んでくれてありがとう。
それでは、また。
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