ポジショニングの手順
今週もウェブ解析士の公式noteをご覧いただきありがとうございます。
さて、今週はWACAの外での学びを共有したいと考えています。「中の人」は先週、ブランド・マネージャー認定講座のベーシック・コースを受講してきました。色々なことを学んできたのですが、その中でポジショニングの検討方法はマーケティング、もっといえばウェブ戦略でも活用できるノウハウではないかと思います。
以前、ポジショニングの重要性や類型について触れたことがありますが、今週はポジショニングの手順について記していきます。
ポジショニングとは
ポジショニングは、マーケティングフレームワークのSTP分析のPですね。
STP分析はマーケティングの根幹となるものです。その中で、ポジショニングは「顧客の立場から自社製品がどう見えるか」をコントロールしていくものです。もっというと、自社製品と競合製品との違いを主張すること、すなわち差別化する方向性を示すことですね。
わかりやすい例を挙げてみましょう。「吸引力が落ちない掃除機」と聞いて、皆さんはどの商品をイメージしたでしょうか。ほとんどの方が「ダイソン」を思い浮かべると思います。こうした、私たち消費者にどのようなイメージを持ってもらうかを考えるのがポジショニングです。
ポジショニングの手順
では、具体的にポジショニング検討の手順を考えていきましょう。
セグメンテーションとターゲティング
ポジショニングを検討する前にやらなければいけないことがあります。それが前提条件を整えることです。ここで言う前提条件とは、「誰にとって」をはっきりさせることです。そのために、セグメンテーション(市場の細分化)とターゲティング(対象顧客の選定)が必要になります。STPのSとTですね。このやり方については、以前記事にしているのでそちらをご参照ください。
「中の人」はターゲティングの際はペルソナをしっかり作りこみ、一人の顧客像を基にした方がいいと考えています。と言うのも、ポジショニングの厄介なところは、実に相対的であり、顧客ごとに優位性が変わる点です。
例えば、テーマパークの絶対的王者、東京ディズニーリゾートは「夢と魔法の国」と言うポジションを築いていますが、同カテゴリの他社はどうでしょう。ユニバーサルスタジオジャパンは「世界最高のエンターテイメントのセレクトショップ」として様々なコラボアトラクションを展開し、富士急ハイランドは「絶叫パーク」としてスリルライドを揃えています。
アニメや映画が好きな人はUSJの方が良いと言いますし、スリルを楽しみたい人は、富士Q以外のパークでは物足りないと言うと思います。
なので、自社はどんなターゲットを顧客とするのか、を明確にするべきなのです。
連想マップをつくる
ターゲットを決めたら、すぐにポジショニングを考えるのではなく、考えるためのヒントを作っていきます。その手法が連想マップです。
連想マップとは、ターゲットの心の中でどのような連想連結が起こるのかを可視化するものです。以前書いた記事でSTPを紹介した際は「カメラマン」を例に挙げましたね。ここでも、カメラマンの商材である「写真」をテーマに連想マップを広げてみましょう。
この際の注意点は、上述した通り、ポジショニングの優位性は個人に委ねられるという点です。なので、できる限りターゲティングで作り上げたペルソナになりきって考えてみましょう。
実際にやってみたのが下図です。
最も多くの連想を起こしたのが「思い出」というワードでした。そのほかに多くの枝を生やしたワードが、「家族」と「おしゃれ」です。
こう言った感じで、ターゲットの心の中でキーワードになりそうな単語を抽出していきます。
ポジショニングマップの作成
次に行うのがポジショニングマップの作成です。ポジショニングマップは、顧客が知覚している各製品の特徴を空間的に示したもので、知覚マップとも言われます。
縦軸と横軸、2つの軸で検討するフレームワークですが、この最重要になるのが、何を軸とするかですよね。そこで登場するのが、先ほど抽出したキーワードです。先の例で言うと、「思い出」とか「家族」とか「おしゃれ」とか。軸にする際は対照語となるワードとセットにする必要があるので、抽出したワードの類語や言い換えなどを検討しながら、対照語も考えていきます。
例えば、「おしゃれ」を例にとると「カジュアル⇆フォーマル」のような感じですね。
「中の人」が受講した講座の中では、機能的価値・情緒的価値の2つの知覚マップを作成していましたが、実際には色々な切り口があるので、複数検討すると良いと思います。作る際には自社が自社が右上の象限にくるように軸を設定すると言いそうです。
例えば、こんな感じですかね。
「おしゃれ」と言うキーワードをベースに考えてみたマップです。
ここに、想定される競合のポジションも書き込んでいって、自社の独自性が確保できるのかを検討していきます。(実際には複数のポジショニングマップを総合して検討します)
言語化する
で、独自性が取れそうなポジションを見つけることができたら、最後に言語化をします。
ポジショニングにおける注意点の一つに、「提供価値を、シンプルに、エッジを効かせて伝達すること」と言うものがあります。せっかく独自性を見つけることができても、ターゲットに伝わらなければ意味がありませんし、伝わっても理解してもらえなければポジショニングは築けません。
例えば、USJは「世界最高のエンターテイメントを集めたセレクトショップ」としてのポジションを作ろうとした際に、「世界最高を、お届けしたい」と言ったメッセージでアピールしました。
カメラマンの例でいくと、カジュアル寄りのポジションを取ろうとしているので、「日常を切り取り、思い出にする」とかですかね。「思い出」と言うワードも連想マップでキーワードとして取り上げたので、ここで利用してみました。
(「STP分析を活用したペルソナの設定方法」の記事を読んでいただけると、選んだセグメントやペルソナとの一貫性も感じていただけると思います)
ちなみにですが、先週受講した講座では、これを「ブランド・アイデンティティ」と呼んでいました。
まとめ
ポジショニングを検討する際には、まず顧客像を1人に絞ることから始めます。そのために行うのが、セグメンテーションとターゲティングです。
ペルソナまで落とし込むことができたら、ペルソナになりきって連想マップを作成します。連想マップから抽出したキーワードをもとに、ポジショニングマップを作成し、それを言語化することでポジショニングの方向性を確定させます。
実際には、競合分析や自社分析、さらには外部環境分析も行なって、自社の強みやUSP、追い風となる外部環境などをうまく生かすことができるのかなどより複合的に整合性を図っていく必要があるのですが、今回は割愛しました。
あとがき
今週も最後までお付き合いいただきありがとうございました。
「中の人」はポジショニングの言語化ってすごく大事なんだと思っているのですよ。どんなに戦略をコネコネしても、戦術との一貫性がなければ絵に描いた餅に成り果てますよね。ポジショニングをしっかり言語化しておくと、例えばウェブサイト制作時に、制作スタッフと共有してポジショニングを体現するようなデザインやUIを検討することができるかもしれません。そんな風に、プロジェクト内の共通言語・目指すべき方向性として言語化って大事だなぁと思います。
それではまた来週お会いしましょう。
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