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東京ディズニーリゾートのマーケティング

今週もウェブ解析士のnoteをご覧いただきありがとうございます。
唐突な自分ごとなんですが、「中の人」は来週東京ディズニーリゾートに行く予定なんですよ。で、予習しておこうと思ってディズニーリゾートのマーケティングについて調べてみました。
予習するとこはそこなのか?という疑問はさておいて、調べたTDRのマーケティングについて記していこうと思います。

テーマパークのマーケティング

テーマパークのマーケティングといえば、有名マーケターの森岡毅氏が手がけたUSJが有名ですよね。森岡氏の手腕によって2015年にはUSJの来場者集が東京ディズニーランドを超えたと話題になりました。
しかし、実際のところ東京ディズニーリゾートは、ディズニーランドとディズニーシーの2つのテーマパークを擁しています。2015年時点でも、USJの来場者数1390万人に対してTDR(ディズニーランド+ディズニーシー)の来場者数は3019万人と、実は大きく水をあける結果になっているのは意外と知られていません。
そんなTDRも実は結構マーケティングに苦労してきた歴史があるのだとか。
従来、テーマパークはサービス・マーケティングの視点で語られることが多いのですが、今回は、マーケティングの基本「4つのP」をベースに見ていこうと思います。

Product

ディズニーリゾートの商品はなんだと思いますか?
豊富な種類のアトラクション?魅力的なキャラクター?季節イベント?それともショーやパレードでしょうか?
ディズニーリゾートの商品に関して、公式見解が存在します。
東京ディズニーリゾートの製品はゲストの幸福(ハピネス)なのだそうですよ。
すごいのは、この商品・提供価値を社員に徹底して浸透させる制度ですね。
新入社員研修の初っ端に「うちの売り物は幸せですよ!」と宣言するそうです。自分達の商品を「ハピネス」、売り場を「世界一幸せな場所」と掲げ、それを実行する組織力は素晴らしいですね。
「ハピネス」を届けるために、どんな施設が必要か・どんなサービスがあればいいかという視点で一貫してTDRは出来上がっているそうですよ。
また、この「ハピネス」を届けるためのHOWが「テーマショー」なのだそうです。下記は公式サイトの記述です。

ディズニーの世界を演出するために、園内の建物から音楽にいたるまで、あらゆるものがテーマを持って設計され、非日常的な空間を創りだしています。
東京ディズニーランドや東京ディズニーシーは、訪れたゲストに様々な体験を提供するための「青空を背景とした巨大なステージ」であり、パーク内のあらゆるものがテーマショーという観点から考えられ、構成されています。

https://www.olc.co.jp/ja/tdr/profile/tdl/philosophy.html

テーマパークを形作る上で、「そこに存在するすべてがテーマに従う」という基本が徹底されていることが読み取れます。その辺りが、お客様を「ゲスト」従業員を「キャスト」と呼ぶことに表れてくるのですね。

Price

みなさんもご存知の通り、TDRは価格戦略において、ワン・デー・パスポートを採用しています。なぜだか考えたことはありますか?
東京ディズニーランド開園以前の遊園地は、入園料を支払ってパーク内に入り、アトラクションを楽しむには乗り物チケットなどを別途購入するというパターンが主流でした。
しかし、ワン・デー・パスポートは、一度購入してしまえば、入園後はアトラクションを楽しみ放題です。
これは、パーク運営の基本理念である、ウォルト・ディズニー氏の「あらゆる世代の人々が一緒になって楽しむことができる“ファミリー・エンターテイメント”を実現したい」という思いからできている制度なんです。
どういうことかというと、アトラクションを利用するたびに支払いが生じると子供を連れてきた親はヒヤヒヤします。子供はまだ遊びたいのに、予算の都合上これ以上は無理!なんてことも起こるかもしれませんね。
その点、ワン・デー・パスポートは、どのアトラクションを何回利用しても価格は変わらないので、子供に対して「好きなだけ乗っておいで」と安心して遊ばせることができます。親も子供の笑顔を楽しむことができますね。
こうした、価格に対する安心感を持たせる工夫があるそうなのですよ。

もう一点、価格政策で採用されているのがダイナミックプライシングです。これは、2021年の3月20日から採用された(TDRでは)比較的新しい制度です。
ダイナミックプライシングは旅館や飛行機など旅行業で多く採用される価格形態です。需要が増す時期に価格を上げ、需要が減る時期に価格を下げるという施策ですね。
この価格方式は、需要が高い時期に高くても買いたい層を最大限取り込む一方で、需要が低い時期にはこの価格なら買おうという購買意欲を刺激して、売り逃しを最小限にするというサービス提供者側に大きなメリットがあります。一方で、消費者としてもタイミングさえ選べば、お得にサービスを受けられるというメリットがありますね。

ただ、価格が高くなると、顧客の期待値が上がる傾向があるため、高価格帯シーズンは相対的に顧客満足度が下がるそうです。
同じ品質のサービスを提供しているのに、価格が違うのですから当然といえば当然です。高い水準で顧客満足を獲得しているTDRだからこそ採用できているのかもしれませんね。

Place

現在、TDRの入園パスポートは公式サイトの他、ディズニーストアや提携ホテル、旅行代理店などで入手することができます。
ここでは、旅行代理店を介した流通戦略を紹介しましょう。
TDRが大切にしているのは「売上イメージの訴求」と「売り場の人とのリレーション強化」だそうです。要は、「これは儲かる」と思ってもらうことと、「これを売りたい」と思ってもらうことを狙っているということですね。

前者においては、「TVCMがいつからいつまで流れる」とか「雑誌やテレビ番組で特集される」「新聞広告を出す」といったお客さんが増えそうだとイメージできる情報を旅行代理店に提供しているのだとか。
そうすることで、売り場の中で目立つ場所を確保していくことができるのだそうです。

後者において特徴的なのが、「ファムトリップ」という取り組みです。
これは、全国の旅行代理店の店頭販売員を同じ日に一斉に招待して、今後開催予定のイベントや新規導入予定のプレゼンを行なった後に、パークを体験してもらうイベントだそうです。しかも、参加する旅行代理店側の費用負担を極力かけないようにしているそうです。
で、実際にゲストとしてパークを体験した視点で各店舗のキャンペーンを企画してもらうそうです。

Promotion

最後は、プロモーション戦略です。これ、語り出すとめちゃくちゃ沢山の事例が上がってくるので、リピート施策・既存拡大・新規獲得の3つの視点で一つずつ事例を上げてみようと思います。

リピート施策

テーマパークのリピート施策って結構難しいのですよね。TDRの場合首都圏にあるので、首都圏外からのユーザーはいつ再訪問してくれるかわかりません。そこで、TDRがとった施策は「購入前にリピートを約束させる」ことだそうです。
そんなことができるのか?と思ったりするんですが、これは価格戦略と絡んでくる「パスポート戦略」で実現しています。
首都圏外からの訪問者に対して有効打となるのが、「2デーパスポート」や「3デーパスポート」というマルチデーパスポートです。お分かりですか?次の来園予定が読めないのであれば、翌日にリピートしてもらうという発想です。TDRでは自分がリピートしていることすらゲストに意識させずにリピートしているということですね。
たしかに…。「中の人」も何も考えず2デーパスポートを買っていました…。(笑)

潜在需要

潜在需要の掘り起こし路線で一番有名なのは、1月ごろ〜3月ごろに実施される「春のキャンパスデーパスポート」通称春キャンです。
海外への卒業旅行が定番の女子大生をターゲットに、TDRでのプレ卒業旅行を提案して、卒業を控える学生の需要拡大に貢献しています。
現在では、卒業を控えた学生同士だけでなく、他の学年も交えてサークルや部活の送別旅行的なポジションを確立しています。
かつ、ターゲットの女子大生へのヒアリングから得られた「ディズニーに行くことが目的ではなく、みんなと楽しく盛り上がって思い出を作ることが目的」という情報をもとに、TVCMやポスターではキャラクターのカチューシャをつけた学生が記念撮影するビジュアルを訴求しています。

顕在需要

ここでは、ディズニークリスマスの事例をあげてみます。
TDRのクリスマスシーズンのコアユーザーの属性ってなんだと思いますか?「中の人」は若者カップルだと思っていました。しかし、首都圏外からのユーザーという点においては「幼稚園児ぐらいの子供を持ったファミリー」なのだそうです。
このユーザーの来園動機は4点だそうです。

  1. 小学校に通い出すと、学校を休む必要が出てくる

  2. 子供が小さいうちは、風邪をひくと困るから夜のイベントは控えていた

  3. 小学生になると交通費や宿泊費が上がる

  4. 記憶が残り始める頃なので一生忘れないクリスマスを経験させたい

どれも納得の理由です。子を持つ親として共感しかないですね。
そこで、ディズニークリスマスを経験した方のユーザーボイスを広告配布物に掲載するという手法で、自分ごと化できるイメージを形成していったそうです。

クリスマスでファミリー層ターゲットかと思ってみたものの、森岡氏が手がけたUSJのクリスマスも確かそうでしたよね。「子供と本気で楽しめるクリスマスはあと何回もない」というインサイトをついてファミリー層に働きかけて成功した事例です。

まとめ

いかがでしたか?強大なブランド力を背景に集客に困っていないように見える東京ディズニーリゾートも、マーケティング活動はしっかりと行われており、マーケティングの基本がしっかりしているからこそ、そう見えるものなのだと気付かされますよね。
4Pって基本的なことですが、実務をしているとおざなりになりがちです。
こうして基礎から固めていくことで、ブランド力が強化されたり、集客力の向上に繋がったりするのですね。

あとがき

今週も最後までお付き合いいただきありがとうございました。
ネタが思いつかなかったので、勢いに任せて東京ディズニーリゾートのマーケティングを紐解いてみました。調べているとホスピタリティやおもてなしに関してはかなり言及数が多いのですが、意外とマーケティングへの言及って少ないのですよね。
マーケティング活動していることすら気取られずに、夢の国に誘い込むのはさすがですね。「中の人」も自身の事業の4Pを見つめ直してみようと思いました。(笑)
それではまた来週お会いしましよう。

今週の参考文献


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