Our Branding 01 - ブランディングとは? Wikipediaから深読みする
こんにちは。ワヴデザインでStrategic Plannerをやっている岩永です。
ワヴデザインのクライアントワークでは、いわゆる「企画」を主に担当しています。この「企画」という言葉、業種業態によってさまざまな捉え方をされていると思いますが、ざっくりいうと、下記のようなことをクライアントニーズや市場ニーズに合わせてカスタマイズしながらやっています。
リサーチ
分析
コンセプトづくり
戦略づくり
仕組みづくり
ワヴデザインのブランディングプロジェクトでは、これらのプロセスは省くことができません。そもそもこのプロセス自体がブランディング活動そのものであり、ロゴや名刺、Webサイト、広告といった成果物はあくまで目的を達成するための手段というスタンスだからです。
そこで、本連載「Our Branding」では、ワヴデザインのブランディングプロジェクトで私たちがやっていることを少しづつご紹介することにしました。
ブランディングに対する姿勢や意見、現場で対面する課題、そしてその実践的な解決方法、フレームワークなど、事業者視点/顧客視点を行ったり来たりしながら「ブランディング」を語れるきっかけになればと思います。
Wikipediaによるブランディングの定義
初回でいきなりですが、そもそも「ブランディング」とはなにか?について触れておきたいと思います。定義の話をするにあたって、まずはWikipediaにおけるブランディングの定義を引用してみます。
この定義が何を示唆しているかというと、
「顧客にとっての価値」を高めていくことが目的
マーケティングはブランディングを包含している、あるいは部分重複している
現状認識の分析からスタートする
「計画どおりに」認識されることを目指す
ということが読み取れます。
そしてこの定義に対して、「そのとおり!」と素直に思えるひとと「ちょっと違うかな?」と違和感を覚えるひとに分かれると思います。職種や立場、読んできた本、現場での使われ方、などで人それぞれブランディングの定義が違うのでそれは当然です。
後者の「ちょっと違うかな?」と思うひとたちにとっても、旧来的なブランディングの定義(つまりCambridge Dictionaryに載っているような下記の定義)と比べると大きくアップデートされてはいるので、少なくとも「まあ間違いではないか…」とは思えますよね。
説明するまでもありませんが、上記のような行為は「ブランディングの選択肢のひとつ」でしかなく本質を定義する言葉ではありません。「宣伝する」ことが目的でもありませんし、「デザインやシンボルを与える」ことは手段のひとつに過ぎません。
差別化は必須ではない
Wikipediaの定義について、私が「いいね!」と思った点は、「差別化」や「競合優位性の確保」という言葉を使って表現されていないところです。
もちろん「競合と違うことをやって、勝てる市場で戦う」というのはマーケティング戦略的には王道であり、ブランディングの本質は「差別化による優位性の獲得」にあるとも言えます。しかしWikipediaのブランディングの定義は、「共感・信頼など」によって「顧客にとっての価値」を高める行為、と定義されており「他と違うことをして優位であること」が必須条件であるとは書かれていないのです。
つまり、製品やサービスの「品質」「価格」などの競合優位性で価値提供するだけがブランディングではなく、顧客との共創関係・信頼関係を築き上げ、競合とも共存共益関係を目指すというのも、ブランディングのひとつのあり方なのでは、という考え方を示唆されているようにも思えます。(ただの深読みかもしれませんが)
ここ数年、国内メディアでも「共創ブランディング」という言葉を目にするようになりました。ブランディングというのは、企業から一方的に価値を提供するものではなく、ともに価値を創り上げていくものでもあるという、示唆に富んだ良い定義なのかなと思います。
偶然性すらもブランディング
いっぽうでWikipediaの定義中に「う〜ん」と思う部分もあります。
ブランディングプロジェクトにおいては「計画」というのは間違いなく必要で、「いまが◯◯だから、N年で△△を目指す」という目標や指標がないと、がむしゃらに、なんとなく突き進むことになりがちです。計画がなくてはプロジェクトは成功しません。
一方で、今は「VUCAの時代※」と言われる予測不可能な時代と言われています。すべてを計画どおりに運ぶのは難しく、何をやっていても必ずどこかに偶然を伴い、思い通りに行かないことが起きます。
ブランディングを推進するうえで、私たちが特に気をつけなければならないことは「変えないほうがよいこと」と「環境に合わせて変わってもよいこと」の線引きをするということです。
例えば、このように線引きされている場合でも
環境変化に伴い、このように変化を加えるべき状況もあります。(コロナ禍やDXなどの転換期にいる企業は今まさに直面していると思います)
VUCAの時代におけるブランディングとは、偶然性を想定した「余白」をも含めた計画をし、より適応性の高いブランドを目指す。偶然性すらもブランドの強みとして取り込めるブランディングを実施すべきと考えます。
よって、Wikipediaの定義のこの部分については、
「計画どおりに」と断定する必要はなく、修正を加えるとしたら
みたいな感じでしょうか。
予測不可能な時代においては、ゴールとなる「認識」を固定せずに、常にアップデートできるようブランディングを推進していきましょう、ということですね。
定義している暇などない
これまでWikipediaの定義をベースに、ブランディングのある側面を切り出してクドクドと書きましたが、これはあくまで私自身の定義の一部であり、人によって定義は違っていて良いと思います。元も子もありませんが、誰かが「これが決定版です!」と判を押してしまうことでもありませんし、定義は常に変わっていくもので、異なる定義を寄せ合って無理に折衷するものでもありません。
ただ、はっきりと言えるのは、ターミノロジー的な論争やポジショントークに時間を使うぐらいであれば、いま私たちが現実に向き合っているブランドに何が必要かを考えることに時間を使うべきです。
市場トレンド、フレームワーク、書籍や最新事例から先人たちの経験則をインプットし、机上の空論ではない「生の」ブランディングプロジェクトでアウトプットし続けて価値をアップデートしていく。それがワヴデザインのブランディングと考えています。