昔の道具 其の1 菱餅の型
実店舗を閉めてから約2カ月経過。
やっと少し落ち着いてきたので
少しづつ記事を投稿していきます。
片付けで見つけた昔の道具 其の1
これは『菱餅』の型です。
かつてはひな祭りの内祝用に多く使われた菱餅
これも消えた和菓子の一つですね。
昭和期に初節句のお祝いのお返しとして
『内祝』の返礼品といて多く使われました。
小さなものはおひな様と一緒に飾る装飾品に多く利用。
使い方はピンク 白 緑と重ねた3色のお餅を
①幅に合わせて帯状に切る。
②帯状に切ったお餅の上に型を置いて切る
お餅の切り落としは『つき直し』をして
大福餅などに使ったりする場合もあるのですが
菱餅はお餅を色付けしてしまうので切り落としを
再利用することが出来ません。
切り落としは自宅用として売られたりしてたのかな?
(うちでは『菱餅は縁起物』なので切り落としは
販売していなかった記憶。非常に昭和的な拘りですね。)
そして層になっている色ごとに収縮の割合が
変わるので乾燥すると割れたりはがれたりしやすく
見た目重要商品なので切り口も美しくなくてはならず
手間と技術が必要な贅沢なお餅でした。
(そしてその分価格も高い。)
この型に書き込みをした職人さんの数名は
まだご存命なので落ち着いたら
1枚づつお渡ししたいと思っています。
叔父や叔母にも渡したい。
大きさ的に嵩張らないのも嬉しい。
私も1枚永久保存する予定。
そしてこの型を見つけた時に
幼いころに見た工場の光景が思い出されて
懐かしくとても嬉しかったのですが
同時にすごく悲しく寂しい気持ちになりました。
店を閉めるとか職業が変わるとかよりも
実はずっと悲しい。恐怖に近い。
『あの頃の日々はもうどこにも存在しない』ことに気づき
『記憶の中の過去の日々とお別れすること』は
とても悲しいことなのだと約60年間生きてきて
初めて気づきました。
現在は過去になるから毎日、毎時間を
これからも大切に生きて行きたいと思います。
これからもどうぞ宜しくお願い致します。
石原商店
石原マサミ