見出し画像

#13-1育休後のキャリアを諦めない!働く女性の毎日をもっと笑顔にー西平 睦美さん

こんにちは。「ワーク・ライフチャレンジ〜未来をひらく私たちの働き方〜」13話目前編は、公務員を退職後、様々な資格を取得しながら2013年に 社会保険労務士事務所を開業された、にしひら社会保険労務士事務所 代表 西平 睦美(にしひら むつみ)さんをお迎えし、福岡県よりお送りいたします。

🔽プロフィール
西平 睦美(にしひら むつみ)さん
にしひら社会保険労務士事務所 代表
活動拠点:福岡県を中心に関東、中部、関西、中国、四国、九州・沖縄地方にて対応可能

長崎市出身、久留米市在住。
高等学校卒業後、公務員として長崎大学歯学部で教室事務、教授秘書に従事。
働きながら、長崎大学商科短期大学を卒業する。
第一子の出産で退職後、2人の子育てをしながら専業主婦生活を送る。
10年間のブランクを経て、医療事務のパートから再就職しPC・簿記等の資格を取得。
2011年 社会保険労務士試験に合格
2013年 個人事務所を開業
「仕事と育児・介護の両立支援」「育休取得者の復帰支援」「女性の再就職支援」の3本柱で活動を行う。
2018年 任意団体SoraProjectを設立。
令和3年度 久留米市男女共同参画社会づくり表彰を受賞。

所有資格
* 社会保険労務士
* 産業カウンセラー
* 株式会社ワーク・ライフバランス社認定 上級コンサルタント
* 公益財団法人21世紀職業財団認定 ハラスメント防止コンサルタント
* 育休後コンサルタント山口理栄認定 育休後シニアアドバイザー
* キャリアトランプ®ファシリテーター


自己紹介

──それでは、本日お話をいただきます西平さんのプロフィールをご紹介します。

前川 福岡県久留米市在住、公務員を退職後、10年のブランクを経て、様々な資格を取得しながら2013年に社会保険労務士事務所を開業されました。人に寄り添う支援をモットーとし、年間200件の子育て女性の就業相談経験をお持ちです。

ワンオペ育児と実母の介護のダブルケアを経験し、「仕事と育児・介護の両立支援」「育休取得後の復帰支援」「女性の再就職支援」の3本柱で活動を行っています。

社会保険労務士としての業務、仕事と家庭の両立支援プランナーとして育児・介護と仕事の両立支援、 雇用促進アドバイザーとして人材採用、人材定着支援を行った経験をお持ちです。

2018年に仕事と子育ての両立を応援する任意団体 Sora Project(ソラプロジェクト)を設立され、育休後カフェ®を開催。イベントに参加しながらSNSでも配信されています。


ワーク・ライフバランスとの出会い

「公務員を退職したこと」から繋がった現在の活動

──具体的な西平さんの活動内容、お伺いできますでしょうか。

西平さん ご紹介にあった通り、長崎で生まれ育って、高校卒業後、公務員となりました。長崎大学歯学部というところで教室事務として働いていました。出産を機に退職をして、子育てに専念しました。

10年のブランクの後、医療事務のパートとして働き始め、社会保険労務士の資格を取得して独立をしました。公務員時代、働きながら大学を卒業したことで、短大卒の学歴が得られたことが、社会保険労務士としてのキャリアに繋がっています。

長女を出産時、勤めていた職場には育休制度はありましたが、自分も周りの人も制度について、よく知りませんでした。このままでは、職場に迷惑をかけてしまうのではないかと思い、退職した経験が、今の活動の原点となっています。

──いまお伺いした育児休業のお話なのですが、現在では育児休業制度が一般的になりましたが、第1子をご出産された当時は、制度が法律化された2年後ぐらいでしょうか。

西平さん それぐらいだったと思います。


前川
 社会全体の中で「女性は家庭を守るべき」という考えが、根強かったのではないかと思います。女性が働き続けることが、とても難しかったように思います。

出産を機に退職。夫の転勤を経て、再就職へ


西平さん
 そういう感じでした。10年近く働いた職場を、出産を機に退職をしました。夫が転勤族だったので、その後、沖縄へ行きました。引越しの時は、生まれて6ヶ月の娘をおんぶして、すごく大変でしたが、官舎生活はすごく楽しかったです。

そこでは「一生の友」との出会いもありました。そこから、熊本に転勤になりました。熊本では、息子を授かり、子育てに奮闘していました。さらに、いま住んでいる久留米に引っ越して、医療事務の仕事に出会いました。そのころ、子どもたちが、頻繁に耳鼻科や皮膚科に通っていました。

受付の方がすごく笑顔で対応してくださって、子供の病気で、落ち込んだり、イライラしたりしていましたが、こちらの気持ちもあったかくなりました。患者さん一人一人に丁寧に接している姿に、「私もこんな仕事に就きたいな」と思いました。

久留米は、お医者様がすごく多いので病院がたくさんあって、仕事もたくさんあるかなと思い、医療事務の資格を取ろうと決めました。


前川
 久留米は、お医者様の多い街なのですね。


西平さん
 そうですね。久留米大学の医学部があり、そこの出身のお医者さんがすごくたくさんいらっしゃいます。熊本で子育てをしていた時は、小児科を探すことが、大変でした。しかし、久留米は、そのようなことはなく、子育てしやすい街だと感じました。


前川
 近くに病院があるかどうかは、本当に大事ですよね。


西平さん
 とても大事です。転勤の度に、病院と美容院をいつも探していたことを思い出しました。子育ての合間を縫って、医療事務の資格を取得しました。週2日、調剤薬局で午前中のパート勤務から働き始めました。

そこから、「ワンオペ育児、仕事の両立」と悪戦苦闘が始まりました。子供たちが成長し、少しずつ手が離れるようになって、勤務時間を少しずつ伸ばし、その後、総合病院で医療事務として働きました。しばらく勤めた後、私自身が病気を患い、辞めることになりました。

生涯の仕事、社会保険労務士との出会い

失業保険をもらいながら、Word・Excel・簿記2級の資格を取得し、 税理士事務所で働き始めました。そこで社会保険労務士という資格を知り、私自身の「生涯の仕事として使える資格」として挑戦することにしました。

試験に合格するまで、2つの社会保険労務士事務所で実務経験を積んだり、ハローワークでパート勤務をしたりして、ある程度、社会保険労務士の仕事への理解を深めることができました。

3回目の挑戦で、ようやく合格することができました。既に実務経験も積んでいたので、「これなら自分でやっていけるかもしれない」と、2013年に起業しました。


前川 
旦那様の転勤の中で、二人の子育てをされて、その後、久留米に戻られたということですか。


西平さん
 夫が最初の勤務地が久留米で、夫にはすごく馴染みのある土地だったようです。


前川
 では、旦那様の一番馴染みのある久留米に戻って、医療事務の資格を取得し、お仕事を始められ、ご自身の病気をきっかけに退職された後に、社会保険労務士という資格に出会われて、勉強されたということで、常に挑戦され続けてきているところが、大変励みになるなと思いながら伺っておりました。


西平さん
 ありがとうございます。幼い頃から、突拍子もないことにチャレンジしていた気がします。そこは私の強みであり、気をつけるところであるというのは感じているところです。


ワーク・ライフバランスの取り組み

                                     

活動の原点「働く女性を支援したい」という想い

──社会保険労務士のお仕事について、詳しくお伺いしたいです。

西平さん 社会保険労務士は、会社の中で働いている方が、入社した時や、退社した時、お子さんが生まれた時などに事務手続きを行います。また、会社の給与計算のお仕事も行います。あとは、会社のルールブックである就業規則を作ったり、助成金の申請をしたり、会社の労務管理を経営者様と一緒に行っていくという形で、お仕事を受けています。

 
──社会保険労務士のお仕事に出会われて起業したということですが、どのような想いをお持ちだったのか、詳しくお伺いできたらと思います。

西平さん 夫が、国家公務員だったので転勤が多く、10年間で6回の転居を経験しました。周りに頼れる人がいない中での子育てというのは、楽しいながらも心身ともに、疲労することが少なくありませんでした。

出産や子育てで仕事を辞め、ブランクのある女性がもう一度働こうとすることや、子供を育てながら働くことに対する理解が、職場でも家庭でも、進んでいなかったので、働き出した時は孤独で、苛立ちを感じることがすごく多かったです。

その経験が、私を強くしてくれたと思っていますし、あの頃の苦労があったから、今の自分があると感じています。社会保険労務士は、人の採用・定着・育成などにも関わる仕事をしているので、もっともっと女性が働けるようになったらいいなという想いをずっと持っています。


前川
 いまお話しされた出産や子育てで仕事を辞めて、ブランクがあるといことで、もう一度働くことへの難しさというのは、いまでもあるのかなと思いました。 私もずっと働き続けていますが、やっぱり子育てしながら働くということへの理解は、まだ薄いように感じます。どんな状況でも、常に前に進んでこられている西平さんのお話は、働きながら育児をする立場として大変励みになります。

──そのご経験がある中で、にしひら社会保険労務士事務所を開業されたと思いますが、その後の取り組みについてもお伺いしたいです。

西平さん 起業当初は、お客様もいない中で、しばらく不安な日々が続いていました。創業塾で知り合った方から、ご依頼をいただいたことをきっかけに、少しずつ仕事が広がっていきました。

やはり、夫の収入があったことで経済的に安定した状態で社会保険労務士の仕事を始められたことは、本当に夫に感謝しています。子育てしながら働くことの難しさを経験したことから、「働く女性の支援がしたい」という強い想いがありました。

特に「育児休業制度の理解を広めたい、女性が働きやすい環境作りに貢献したい」と、社会保険労務士の事業の核を女性労働にしようと決めました。私自身は、育児休業を取らずに退職したことを、ずっと後悔していませんでした。

起業した後に、福岡県の子育て女性就職支援センターで、県の職員の方と一緒に仕事をしていた際に、私より少し年下の女性が、既に管理職として活躍しているのを見て、衝撃を受けました。

もし、私があそこで育児休業を取って働き続けていたら、彼女のように、キャリアを築けていたのかもしれないなと思いました。もしかしたら、子供たちの教育にも、もっと力を入れてあげられていたかもしれないなと思いました。


育休後のキャリア形成を支援する活動


前川
 西平さんのご活動の3本柱の1つの育児休業取得者の復帰支援という活動が、今お伺いしたご自身の経験に基づいているのだなと思います。


西平さん
 ちょうどその時に、育休後コンサルタントの山口理栄さんという方の「さあ、育休後から始めよう」という本を読んだことが、転機になったと思います。育休後コンサルタントというのは、育児休業を取得した人が、職場復帰した後のキャリア形成の困り事を解決していくという仕事です。

山口さんの講座を受けるために、東京まで行って、育休後シニアアドバイザーや、育休後カフェファシリテーターの資格を取りました。今は、育休後シニアアドバイザーとして、育休後の社員が持てる力を発揮し、継続して働き続けられるように、職場や地域の中で、悩んでいる方々の相談を受けたり、研修を行ったりしています。

さあ、育休後から始めよう


ちょうど同じ頃に小室淑恵さんの講演から「ワーク・ライフバランス」を知り、「ワーク・ライスバランス認定コンサルタント」の資格を取得しました。現在は、「認定上級コンサルタント」として、男性育休推進のための研修や、本人と上司、それから職場とのコミュニケーションギャップを解決するための 研修などを行っています。


前川
 私も、育休後、職場復帰がコロナ禍での復帰だったこともあり、子育てと仕事の両立が想像以上に大変でした。特に、身近に相談できる人がいなくて、孤独を感じました。

友人の多くは、遠くに住んでいて、SNSで、「育児が大変だ」というような、悩みの声を聞いていました。今、お伺いした育休後コンサルタントの活動は、西平さんにお会いして初めて知りました。

「育児休業を取得した本人だけではなく、上司・同僚を巻き込んで、コミュニケーションギャップを解決し、お互いにより良い環境・職場を作っていく」という西平さんが行っていることが、多くの企業に広がってほしいと思います。

「男性育休をデザインする」D&Iジョブデザインラボセミナー


──女性だけではなく、「男性育休をデザインする」という男性育児休業についてのお仕事もされていて、「D&Iジョブデザインラボセミナー」を開催されているとのことですが、どのような内容でしょうか。

西平さん 「D&Iジョブデザインラボ」は、職務を分析し、職務を明確化することで、職場でのダイバーシティ&インクルージョンの推進を目指すために結成された社会保険労務士のメンバーによる活動です。

育児・介護・障害・治療などで、制約のある働き方を選択せざるを得ない方々がいます。一方で、テレワークや短時間正社員、職種限定正社員、地域限定正社員など多様な働き方を選択できるようになってきました。

その多様な人材を活かし、多様な働き方に合った公平な人事評価、賃金制度を構築するために、職務分析、職務設計を行うことを提唱しています。そしてそれは、企業にとっては、人材の離職防止や、優秀な人材の採用に繋がることもお伝えしています。

そのひとつで「男性育休をデザインする」をテーマとして開催しました。メンバーの中に、子育て中の男性社労士が2人いましたので、私がファシリテートしながら、子育てで個人にはどんなことが身につくのか、子供との関係性、妻との関係性などリアルに答えてもらいました。

また、企業に関わり、実際に現場を知る社労士だからこそわかる、男性育休が進まない課題などに、参加された方々も興味津々でした。ちなみに、前川さんは、男性育休が進まない理由について、どんなことが考えられると思いますか。


前川
 やはり育休からの復帰が、不安だからでしょうか。


西平さん 
なるほどですね。キャリアというとこですよね。もちろん、そのような理由もありますが、「休んだ時の業務を誰が行うのか。自分が休んでしまうと職場の業務が回らないのではないか。人材不足により、代替要因の確保が難しいのではないか。周囲へ業務負担が増えるのではないか。」

ということですよね。あとは、先ほど前川さんがおっしゃっていたように「昇給や昇進に響き、キャリアに影響するのではないか。収入が減ってしまうのではないか。」等、本当に様々な理由で男性育休が進んでいないという現実があります。

誰が休んでも仕事が回る職場の仕組み作りをスタートすることで、男性育休を推進し、企業の生産性の向上に繋げるために、職務分析による仕事の見える化、細分化した方がよいということを、セミナーでもお伝えしています。

前川 「男性育休をデザインする」というテーマは、私も大変興味があります。夫とも男性育休についてはよく話をしますが、夫の会社は製造業の男性主体の会社で、男性の育休取得は少しずつ進んでいるものの、まだまだ課題は多いのが現状のようです。

それを感じたエピソードですが、夫が会社から持ち帰った、男性育休を取得する若手社員からの手土産に、奥様の手書きのお手紙が添えられていました。そこには、職場の皆様への感謝の気持ちと共に、育休中の業務負担へのお詫びが綴られていました。

一人一人にその手紙を添えるという気遣いは素晴らしいなと思ったと同時に、育休取得は本人だけでなく、家族全体が抱える課題であることがよく分かりました。誰が休んでも仕事が回る仕組み作りのような育休取得を促進する仕組みづくりが整えば、社内に定着していくのだろうと思うと、この活動もぜひ多くの企業に知ってもらいたいと思います。


西平さん
 育休を取得した方の分を、どなたかが代わりにお仕事をされているので、そこに感謝の気持ちを持つことは大事だと思っています。


前川
 そうですよね。企業での育休取得者の復帰支援についてお伺いしてきたのですが、育休後カフェ®の取り組みにも大変興味があります。次回は、育休後カフェ®の取り組みについてお伺いいたします。


西平さん 
ありがとうございます。では次回もよろしくお願いします。

育休後カフェ®のご案内

育休中の方、一緒にお話しませんか?少人数でオンラインで行います。
声だけ参加も大歓迎です(^^♪

仕事と子育て、家事、育児、小1の壁、パートナーとのこと、話したいことは何でもokです。

2月は社会保険労務士のにしひらが担当します。
2/8(土) 2/20(木)いずれも10時~11時 参加費無料

育児休業制度について知りたいな~という方、大歓迎です。
🔽お申込みはこちらから
お申込みフォーム

🔽お便りフォーム

ワーク・ライフチャレンジではリスナーの皆さんからのお便りをお待ちしております。お便りフォームをご用意しておりますので、感想やゲストの方への質問などお気軽にお寄せください。

お便りフォームはこちら

🔽応援
株式会社ワーク・ライフバランス 
経営戦略としてのワーク・ライフバランス福利厚生の一環ではなく、企業業績向上のために。 現代の社会構造に適応し人材が結果を出し続ける環境を構築する「サスティナブルな働き方改革」のプロフェッショナル集団です。

🔽似顔絵イラスト
大家 三佳
東京在住、京都造形芸術大学卒。子育てをしながら、水彩画、ドローイングを中心に人、食べ物、動物を描くイラストレーター。パッケージやポスター、グッズなど幅広い分野で活躍中。透明感のある優しいタッチで、日常の風景や人物を描く。ペーターズギャラリーコンペ2014 宮古美智代さん賞受賞など。



編集、プロデュース、インタビュー:前川美紀(ワーク・ライフチャレンジ プロジェクト代表/ブランディングディレクター)
note編集:松本美奈子(次世代こども教育コンサルタント/認定ワーク・ライフバランスコンサルタント)


いいなと思ったら応援しよう!