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津軽三味線 奏者事典 #3 上妻 宏光

No.1 津軽三味線プレイヤー 上妻 宏光

  • どんな人?                津軽三味線としての演奏技術のみならず、他ジャンルとの親和性、経験・実績、全てにおいて最高級レベルに到達しており、現代津軽三味線プレイヤーとしての完成系と言えるのではないだろうか。「三羽鴉」の括りがあるのであれば、間違いなくその一人に数えられるであろう人である。                演奏は、曲によって異なるが、厳しさよりも伸びやかさや心地よさを感じる事が多い。                 

  • 活動領域                 古典   :☆☆☆☆☆☆☆☆☆★   /9  現代曲  :☆☆☆☆☆☆☆☆⭐︎★   /8.5  前衛度合 :☆☆☆☆☆☆☆☆★★   /8           コラボ  :☆☆☆☆☆☆☆☆☆★   /9     認知度  :☆☆☆☆☆☆☆☆★★   /8

  • 生い立ち                 1973年、茨城県の生まれ。津軽三味線を演奏していた父の影響で興味を待ち、6歳の頃に佐々木光儀に弟子入りする(※1) 。物覚えは良く、10歳の頃には地元の天才ちびっこを取り上げるテレビ番組に出演するほどの腕前となる。15歳の頃に全日本津軽三味線競技大会(金木大会)にて優勝し、プロの道を目指し上京することとなる。                その後は、津軽三味線奏者として民謡を追求するとともに、コラボバンドの六三四(Musashi)として活動するなど早期に他ジャンルとのセッションの道を開拓することとなる。     後のインタビューでは、特定の会派に所属しておらず自由の身であった事、姉が洋楽を好んで聞いておりロックに馴染みがあった事を他ジャンルと積極的に演奏したことの背景として述べている。大会での優勝実績、その後の活躍、活動の幅等、どれもとっても文句のつけようがない、比類なき津軽三味線プレイヤーである(※2)。                            ※1:彼を取り上げた文献には弟子入りしたと記載があるが、インタビューでは独学と述べている。詳細確認次第加筆します。      ※2:純粋な津軽民謡以外も幅広く手がける事から、自身では津軽三味線奏者ではなく津軽三味線プレイヤーと名乗る事が多い。     

  • 活動および受賞歴             1989年 津軽三味線日本大会(金木)      優勝1995年 津軽三味線全国大会(弘前)      優勝   1995年 津軽三味線全国大会(弘前)      二連覇 津軽三味線全国大会は「津軽じょんから節」での優勝が一般的だが95年大会では「よされ」を演奏し優勝を勝ち取る。          翌、96年大会も出場し万雷の拍手を得るが優勝には至らず、大会結果について一部の人からは地元贔屓の判定であったとされている。  2001年 アルバム「AGATSUMA」にて、  2007年 アルバム「○ -エン-」にて、日本ゴールドディスク大賞(純邦楽アルバム) 受賞   

  • 作品紹介

1、津軽よされ節(曲弾き)           上妻宏光の代名詞的な一曲。全国優勝を勝ち取った曲であり、他の奏者よりも好んで演奏することが多い。よされ節の語源には諸説あるが、飢饉となった当時「こんな世は去れ」と人々の思いが唄われた曲と言われている。             コロナ禍に上妻によって演奏されたこの曲では、儚くも物悲しい三の糸の音色に、「早く平穏は日々が戻って来て欲しい。」との願いを感じることが出来る。

2、紙の舞
弟子である志村けんがこよなく愛した一曲。  冒頭から同じフレーズが、撥の位置、叩く強さ、間を変化させることにより異なる音圧、音色、リズムで繰り返し演奏される。その様はまるで数枚の紙吹雪が空間を漂いながら不規則に舞うようである。中盤では、三の糸の叩き、スクイ、弾きを多様し音数を増やすことで、先ほどよりも多くの紙吹雪が乱れ舞う様を想像することが出来る。一曲を通して侘び寂びを感じる事が出来るが、地元日立市の水木や河原子の海岸で作曲されたことから、寄せては返す、波の有様からそのインスピレーションを得たのかも知れない。

 

3、 月影
侍ギタリストMIYAVIとのフューチャー曲。   津軽三味線を海外の人に紹介する際、便宜的にJapanese Guitarと話すことがあるが、両者は似て非なるものである。             ギターは電子楽器としての開発が進んだが、三味線はその路線の成長は基本的には行われなかった。津軽三味線は撥で皮を叩くことから打弦楽器とも呼ばれパーカッションの音も兼ね備えるが、ギターは基本的には弦楽器として演奏される。 しかし上妻はエレキ三味線の第一人者であり、音にリバーブや歪みを持たせることを行っている。一方、MIYAVIは、スラップやギターをクラッピングすることによりパーカッシヴな演奏を行う。
各楽器の「基本」を破る方向に成長を見出した2人がコラボを行うことで、異なる楽器がそれぞれの特徴に寄り添い、阿吽の呼吸でパフォーマンスが披露されている。




  • 活動領域について             古典:民謡や和楽器が主軸かどうか。     現代曲:オリジナル現代曲が主軸かどうか。  前衛度合:ストリートカルチャー、サブカルチャーとの親和性。              コラボ:他ジャンルや他アーティストとのコラボ頻度。                  上記について、筆者の視点でまとめました。

参考文献
津軽三味線 まんだら(松木宏泰 著)      国際合流基金 上妻宏光インタビュー   

上妻宏光 オフィシャルウェブサイト


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