【No.1450】少しの言葉遣いが大きな変化
先日、かかりつけの歯医者さんで、マウスピースの提案をされましたが、即座に断ってしまいました。おそらく無意識の判断だったと思いますが、その場で「ないな」と思ってしまったのは営業の視点から見ると、もったいない状況です。もしかしたら、もう少し買いたくなるような話し方があったのかもしれません。
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その場の状況を振り返ると、治療が終わり「他に気になることはありますか?」と聞かれました。僕は「最近歯を食いしばってしまうことがあります」と相談しました。
それに対して、すぐに「マウスピースを作りましょう」と提案され、続けて「シリコンで柔らかくフィットしますよ」「多くの人が使っています」など機能面の説明と宣伝がありました。最後に「保険適用で約3000円です」と費用の説明まで一気にされ、僕は瞬間的に「考えてみます」と断ってしまいました。
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本業で営業をしている僕にとって、この「考えてみます」という断り文句は聞き慣れたものです。なぜ自分もそう言ってしまったのかを振り返ると、教訓を得られるかもしれません。
結局のところ、【必要性を感じなかったから、無意識に断ってしまった】のだと思います。
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もし、歯医者さんがもう少し僕の状況に寄り添い、詳細を丁寧に説明してくれていたらどうだったでしょうか。
例えば、「もう少し詳しく教えてもらえますか?」「なるほど、それならまずは〇〇して意識的に歯を食いしばる習慣を改善してみましょう」と提案しつつ、「それが難しいようなら、3000円くらいのものでいいので、マウスピース作ってみてもいいかもです」といった順番ならどうだったでしょうか。
「歯を食いしばることは、歯や顎に負担をかけるので、将来的に〇〇の危険があります」といった危機感をあおる言葉や、「実はこういう悩み多くて、結構みんなつくってるんです」などと伝えるのも効果的かもしれません。そして最後に「うちでも〇〇分くらいで型取りできますけど、やってみます?」とクロージングされていたら、僕は違った反応をしていたかもしれません。
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僕は、そもそも歯を食いしばるのにマウスピースが有効なことを知っていましたが、まだ買おうと思っていなかったです。そんな状況でマウスピースを買えと言われても不要としか思えません。また、たとえ本当にマウスピースしか解決手段がなかったとしても、即座に提案するのでなく、営業トークの順序や内容がもう少し工夫されていたら、少なくとも瞬間的に断らず、もっと積極的に話を聞こうとしたかもしれません。
もっと言えば、営業の場面では、顧客に「このひとは分かってくれてる。それがしたかったんです」と言わせるような聞き方や話し方ができれば、その場では契約に至らなくても、後々戻ってきてくれる可能性があります。
今回の僕で言えば、マウスピース以外の解決方法があるのかを聞きたかったのです。だから、どういう状況で食いしばるのか聞いたうえで、少し対話をしてほしかったです。
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今回の経験を振り返り、営業マンとして学べる教訓がいくつか浮かび上がってきました。
最も重要なのは【顧客の気持ちを引き出すこと】です。営業トークが一方的でなく、対話の中で顧客が「それが自分にとって必要だ」と感じるように導くことがカギです。今回の歯医者さんとのやり取りでは、もっと僕の状況や悩みに耳を傾け、その上で提案があれば、僕自身も納得していたかもしれません。
もう一つの教訓は【顧客に選択肢を与えること】です。今回のように、最初から「マウスピースを作りましょう」と直接的な提案をされると、あまのじゃくの僕は提案を突っぱねたくなってしまいます。顧客が提案を受け入れる準備ができていない段階で押しつけられると、反発してしまうということです。逆に、「まずは試してみて、気に入らなければ他の方法を考えましょう」といった柔軟な提案があれば、顧客は選択肢を自分で決められると感じ、心理的な余裕が生まれます。
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とはいえ、提案のタイミングも重要です。顧客にはそれぞれタイミングがあります。タイミングが悪ければ、どんなに良いトークを展開し、どんなに良い提案しても顧客に響きません。
そのため、その場で決まらなくても、後で欲しいと思った時に問い合わせてもらえるような「種まき」としての営業トークのほうが有効な場合もあります。営業マンとしてはそういう心の余裕をもって営業してもよいかもしれません。
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以上こんなことを書いてきたのは、実はマウスピースは作らなきゃなと薄々は思っていたからなのです。それにも関わらず瞬間的に断ってしまった。
顧客に購買意欲があるにも関わらず、営業マンの言葉遣いや言葉の順番によって、即決を勝ち取れないことがあるのではないかと思うのです。
商談なら営業マンも気合いいれるかもしれませんが、今回のように何気ない相談から売り込みチャンスを得る場合もあります。営業としては1人のお客さんの単価があげるほうが新規のお客さんを取るより楽なことが多いですね。そういった場面でしっかり即決してもらえるような営業マンとして改めて意識しようと思った次第です。
■■今日の教訓(ポイント)■■
たとえ顧客に購買意欲があっても
営業トークの展開で断られることはあるだろう。
特に相手がすでに顧客の場合、
何気ない会話から顧客単価をあげようという意識で
相手の状況を探って提案するという姿勢を保ちたいものだ
■■以上■■