自分を愛するように、ありのままの隣人を愛しなさい
住み始めた頃、
「なーんも無い、この街には。」
友だちに会うたびに愚痴っていた。
一年前、転勤により縁もゆかりもない土地にやって来た。
生まれてこのかた都会暮らしだった私。
この街に足を踏み入れた初めての感想
「三階以上の建物が無い…。」
「チェーン店がコンビニとガソリンスタンドぐらいしか無い…。」
「夜まで空いているお店がほとんど無い…。」
無いものばかり目に付いて、
『こんなつまらない田舎で若さを消費するのか。』
と憂鬱だった。
*
でも、1年間住んでみて気がついた。
建物が低いから空が高く見える。
朝は眩しい太陽光と鳥のさえずりで目を覚ます。窓を開けると澄んだ空気と目に飛び込む緑。
街灯もなく星の煌めきを便りに、しんと静まりかえったあぜ道を歩く夜は気持ちがいい。
スーパーではなく、八百屋さんやお肉屋さんで「これが今旬だよ。」
と言葉を交わしながら買う食べ物は、なんだか命の温かみを感じる。
見ようとしていなかっただけで、「無い」中には、沢山の幸せが潜んでいた。
そして、そんな小さな幸せを見つけられる自分のことが前よりも好きだ。
何より自然が豊か。
私の住む町には、海も山もある。
春には海沿いに桜が咲く。
薄桃色の世界の隙間から見える、海の鮮やかなコバルトブルー。
見つめていると、心が優しくなる気がする。
こんなにも美しい世界があったとは。
便利さ華やかさだけを追求していれば、きっと「辛い」ままだった。
でも1つ付け足せば「幸せ」になる。
詩人の星野富弘さんが言っていた。
「自然は一番の先生だ。」と。
花も海も空も人も、ありのままが一番美しく、存在しているだけで価値あるものだと教えてくれた。
そして、その美しさを感じ取れるのは自分の心次第。
ありのままを愛するということは、自分の感性を大切にするという事だと思う。
自分だって特別飾る必要はない。そのままの自分でいていい。
ここは、随分息がしやすい。
自分を愛するように、ありのままを愛することのできる街。
私の住むところはそんな幸せな街です。