自分を愛するように、ありのままの隣人を愛しなさい

住み始めた頃、
「なーんも無い、この街には。」
友だちに会うたびに愚痴っていた。

一年前、転勤により縁もゆかりもない土地にやって来た。
生まれてこのかた都会暮らしだった私。
この街に足を踏み入れた初めての感想

「三階以上の建物が無い…。」
「チェーン店がコンビニとガソリンスタンドぐらいしか無い…。」
「夜まで空いているお店がほとんど無い…。」

無いものばかり目に付いて、
『こんなつまらない田舎で若さを消費するのか。』
と憂鬱だった。

でも、1年間住んでみて気がついた。

建物が低いから空が高く見える。
朝は眩しい太陽光と鳥のさえずりで目を覚ます。窓を開けると澄んだ空気と目に飛び込む緑。
街灯もなく星の煌めきを便りに、しんと静まりかえったあぜ道を歩く夜は気持ちがいい。
スーパーではなく、八百屋さんやお肉屋さんで「これが今旬だよ。」
と言葉を交わしながら買う食べ物は、なんだか命の温かみを感じる。

見ようとしていなかっただけで、「無い」中には、沢山の幸せが潜んでいた。
そして、そんな小さな幸せを見つけられる自分のことが前よりも好きだ。


何より自然が豊か。
私の住む町には、海も山もある。
春には海沿いに桜が咲く。
薄桃色の世界の隙間から見える、海の鮮やかなコバルトブルー。
見つめていると、心が優しくなる気がする。
こんなにも美しい世界があったとは。

海と山と桜


便利さ華やかさだけを追求していれば、きっと「辛い」ままだった。
でも1つ付け足せば「幸せ」になる。
詩人の星野富弘さんが言っていた。
「自然は一番の先生だ。」と。

花も海も空も人も、ありのままが一番美しく、存在しているだけで価値あるものだと教えてくれた。
そして、その美しさを感じ取れるのは自分の心次第。
ありのままを愛するということは、自分の感性を大切にするという事だと思う。
自分だって特別飾る必要はない。そのままの自分でいていい。
ここは、随分息がしやすい。



自分を愛するように、ありのままを愛することのできる街。
私の住むところはそんな幸せな街です。

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