#206 基本に宿る非凡さをどう見極めるか
子供の頃の私の夢はずっと科学者でした。今はベンチャーキャピタルのファンド・オブ・ファンド・マネージャーとして働いていますが、科学というテーマへの興味は今でも残っています。関連本やドキュメンタリーは今でも私が楽しむエンターテイメント手段の一つです。 去年のこの時期、サンフランシスコにある科学博物館エクスプロラトリアムにメンバーシップに入りました。先週末も子供たちと一緒に行きましたが、ここは一人で来て一つ一つゆっくり読んで体験しても面白いほど興味深い展示がたくさんあります。長女がもう少し大きくなったら、展示内容をもとに科学的な原理についても話し合いながら、より深く体験できたらと期待しています!
第一印象には、言葉では説明しきれない直感的な要素が含まれることがあります。6ヶ月前、私はあるベンチャーキャピタルのファンドマネージャーと初めて会いました。正確に説明するのは難しいのですが、彼には特別な何かがあり、引き続きフォローアップすべきだと感じました。数ヶ月後、彼が新しいファンドを設立するとの連絡を受け、その詳細を評価する機会を得ました。そして最終的に、彼のファンドに投資することを決断しました。
【theLetterでニュースレターを購読 & ポッドキャストで聞く】
この数ヶ月間で多くのリファレンスを取り、深く検討した結果、私は彼の「スーパーパワー」はその慎重さと思慮深さにあると結論づけました(thoughtfulness)。その慎重さと思慮深さは、彼の投資戦略、投資案件へのアプローチ、創業者や投資家との関係構築のあらゆる側面に浸透していました。
ただし、ここで一つのパラドックスに直面します。慎重さや思慮深さは、投資家にとって基本的な能力とされています。多くの投資家が自分を慎重で思慮深いと形容するでしょうし、それは間違いではありません。私自身も同様にそう言えます。しかし、誰もが主張するこれらの基本的な能力を「特別なもの」として証明するには、何が必要なのでしょうか?
慎重さや思慮深さには、さまざまなレベルがあります。すべての投資家が持つ基礎的なレベルがある一方で、さらに深く、徹底的で、意図的な次元も存在します。この高度なレベルの慎重さは、一種の重力のようなもので、表面的には認識しにくいものです。その真価を見極めるには、時間とリソースを投じて、その人を深く理解する必要があります。
私の場合、直感が確信へと変わるまでには、数ヶ月間の観察とリファレンスの収集が必要でした。特に興味深かったのは、彼から投資を受けた全ての創業者や長年彼と仕事をしてきた他の投資家たちが、彼を評する際にまず「思慮深い」という言葉を挙げたことです(he is very thoughtful)。この特徴は単なる形容ではなく、彼との関係を定義する最も重要な要素となっていました。このような一貫性と強調が見られることは、非常に稀です。
とはいえ、私が彼のファンドに投資した理由は慎重さだけではありませんでした。その慎重さや思慮深さが、関係構築や投資戦略の設計、さらには利害関係者に価値を生み出すシステムへと昇華されていたからです。これらは単なる特徴ではなく、長期的な成功の基盤となるものでした。
この経験を通じて、基本的な能力に関する重要な真実を再認識しました。それは、基本的な能力を「スーパーパワー」として証明することの難しさです。「賢い」「慎重」「共感的」といった資質だけでは十分ではありません。同様に、ベンチャー投資家としてのネットワークも基本的な能力の一つですが、本当に質の高いネットワークを持っている人とそうでない人には明確な違いがあります。しかしそれを短時間で証明するのは難しいです。基本的な能力を驚異的なレベルへと引き上げるためには、それが実際のインパクトと成果に結びつく必要があります。
投資家であれ創業者であれ、基本を過小評価するべきではありません。また、表面的なものだけで満足してはいけません。平凡の中に非凡が隠れていることもあります。それを見つけ出し、他者以上に磨き上げる努力こそが鍵となります。
【theLetterでニュースレターを購読 & ポッドキャストで聞く】
References:
n/a