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アパレル業界の環境問題に対する取り組み〜生産から再利用までどんなトレンドがあるのか?〜
皆さんこんにちは。VRC note編集長の八重樫です。
SDGs、サステナブルなどが社会のキーワードになってしばらく経ちますが、今サステナブルの取り組みが進んでいるのがアパレル業界です。
アパレル業界は大量生産・大量廃棄などが問題になったり、服の製造工程で大量の水が使われることなどが問題視され、環境汚染が著しい業界だと言われており、そのイメージを払拭すべくさまざまな取り組みが行われるようになってきました。
アパレル業界においてサステナブルファッションの取り組みは、生産工程から販売、その後の再利用までさまざまあります。ここで全てを取り上げることはできませんが、今回は服の生産から再利用についてVRCの取り組みと関係させながら考えてみたいと思います。
■バリューチェーンからみるアパレル業界の環境への取り組み
アパレル企業のバリューチェーンを考えると、
商品企画→サンプル制作→原料調達→製造→マーケティング・営業→カスタマーサポート
という流れでみることができます。
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この工程をもとに環境対策について考えてみましょう。
まず商品企画の段階では、デザイナーがたくさんの服の案を作り、パタンナーがそのデザインの型紙を作ってサンプル服を作るわけですが、そのサンプル服制作の段階でもたくさんの布地などが廃棄となります。全てのデザインが採用されるわけではないですし、採用になるまでに作り直しなども発生するので、カットした生地や、出来上がって不採用になったサンプル服などが廃棄になってしまいます。
デザインが確定したのちも、服を作るための原材料調達では輸送コストがかかりますし、服の製造にはたくさんの水やエネルギーが必要になります。そもそも布など服の原材料を作るために綿花栽培に水が必要だったり、化学繊維を作る場合にも工場などでの二酸化炭素排出なども環境負荷になります。つまり、服を大量に作れば作るほど、こういったことが起こり環境汚染に繋がっていくのです。
ではどうすればいいのでしょうか?
今の製造工程を続けるのではなく、新しい製造工程を取り入れて環境負荷を少なくしていけばいいのです。
例えば、デザインやサンプル服を作る際に3DCGを利用して、実際の布地の使用を減らす取り組みなどもあります。まだ取り入れている企業は限られていますが、デジタルファッションも徐々に注目され始めている今、服のデータ化はニーズが高いのでそれを専門にサービスを始める企業も出始めています。服のデータ化はこれからどんどん事例が増えていくと思います。
マーケティングの観点ではデータ化した服を使って、実際に服を作る前にどのくらいユーザーニーズがあるかを調べることも可能でしょう。事前にニーズ調査をすることで製造数もニーズに合わせることができ、余剰生産を避けることができます。それにより無駄な製造コストもなくなりますし、無駄な廃棄も減ると思います。
VRCでも服の3DCG化などを進めており、今は3Dファッションデザイナーが1着ずつ服を作っていますが、ゆくゆくは制作コストを減らして、簡単に実際の服を3DCG化できないかという研究開発も進めています。低コストで服のデータ化ができれば取り入れるアパレル企業も増えていくと思いますし、今後アパレル企業は実際の服だけでなくデータ化された服も持つのが当たり前になっていくかもしれません。
■服を持たずにサブスクを利用する、中古品を購入するなどユーザーのトレンド
服が製造された後の、ユーザー側の服の購入や所有についてはどんなトレンドがあるでしょうか?
先日、服のサブスクサービスを提供しているエアークローゼットが上場したというニュースがありました。
エアークローゼットは2015年のサービス開始から順調にユーザーを獲得し、7周年を迎えた今年2月には会員数70万人を突破したそうです。
調べてみると、服のサブスクサービスはさまざまあり、⼤丸松坂屋百貨店も参入しているそうです。
パーティドレスを結婚式参列のために借りたり、卒業式、成人式用に着物を借りたりなど、ハレの日に特別な服をレンタルするというのは私も経験がありますが、日常的に服を借りる人が多いことに驚きました。
今は服を購入する際にも、店舗で新品を買うのか、ECを使うのか、はたまた店舗で古着を買うのか、フリマアプリを使うのかなどたくさんの選択肢がありますが、さらに服を所有するのではなくレンタルするという価値観も育ってきているようです。
服の流通を考えると、
1次流通:新品を販売する(店舗・ECなど)
1.5次流通:新古品を販売する、新品・中古品をレンタルして使う
2次流通:購入した服を古着屋、フリマアプリなどで販売する
という流れがあることが想像できます。
アメリカの古着ECサイトを運営する「スレッドアップ(thredUP)」は2021年のレポートで、古着市場は今後5年間で倍増し、770億ドル(約8兆4550億円)にまで拡大するだろうと予測しています。
(レポートの全文はこちら。このレポートも興味深いです。)
日本国内はどうかというと、矢野経済研究所の2020年のレポートによれば2019年の国内ファッションリユース(中古)市場を小売金額ベースで、前年比116.1%の7,200億円と推計しています。(レポートはこちら)
レポート当時の予測では、2022年には9,000億円の市場規模になるのではないかと予測していました。
このように中古市場が盛り上がっている背景には、
・コロナ禍で外出なども減り服を購入すること自体が見直された
・メルカリなどのフリマアプリも一般化し中古のものを買うことに抵抗がなくなっている
・若い世代を中心に環境への配慮意識が広がっている
ということが理由としてあげられると考えられます。
Shienのようなスーパーファストファッション企業も話題になっていますが、その裏で服をサブスクで使う、古着を買って着るという文化も着々と根付いているのです。そして、新しい古着の買い方として、WEARや海外のDepopというアプリのように、コーディネートを参考にしているインフルエンサーからいいなと思ったアイテムを買うという方法も若者を中心に始まっています。ただ服を買うのではなく、その背景も含めて買うというストーリー重視になり始めているのは面白いと思います。
■将来的にどうなっていくのか?VRCの考える未来
ただ、店舗で試着して買うならばサイズや見た目が自分にマッチしているのかよくわかりますが、アプリやECサイトを利用すると結局インフルエンサーやモデルのように着られず、ミスマッチが起こることもあるでしょう。購入した服を着ないのであれば、それは輸送コストも無駄になりますし、サステナブルとは言えないですよね。
では、どうすればミスマッチが減るのでしょうか。私たちVRCが考えるのは、自分の身体サイズをデータ化することと、服のサイズをデータ化する取り組みが進むのではないか、ということです。
服のデータ化については先ほど述べましたが、見た目のデータだけでなく寸法などの情報もデータに含まれていくでしょう。
現状服のサイズはS/M/Lなどと分かれていますが、メーカーによって差異があり、同じMサイズでも体型によって大きいものや小さいものがあります。
これが服の寸法サイズがわかるようになれば、同じMでも自分の好みの物を選びやすくなるはずです。データ化した服をアバターに着せることで見た目もわかり、より実際の試着体験に近くなると考えています。
さらに自分の体型サイズがわかっていれば自分の好み(ゆったり着たい、ピッタリ着たいなど)と、マッチさせることができます。
VRCのボディスキャナでは、採寸も可能であり3DCG化した服と合わせるバーチャル試着ソリューションも提供しており、今後ECサイトなどと連携できるように改良を進めています。簡単に撮影したデータをスマホアプリなどで保管し、服を買うときなどに簡単に利用できるというのがVRCの目指す未来です。
また、他にもオンラインの AI採寸サービスもいくつかあり、ECサイトに組み込まれているところもあるようです。(ユニサイズなど)
こういった簡易な採寸サービスが広まり精度も上がっていくことで、誰でも簡単に自分のボディサイズを知ることができる日が来ると私たちは信じています。
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将来的には各自が自分のクローゼットにある服のサイズデータを持ち、それをもとにアプリなどを使って販売するようになるのではないでしょうか。そうすれば欲しい人も自分の身体データと見比べて服を購入することができるようになり、服の無駄な購入も、無駄な廃棄も、無駄な運送も減るので、二酸化炭素の削減などに繋がっていくと思います。
私たちも現在行っている自動採寸や服のデータ化にさらに取り組み、バーチャル試着のサービスを提供していきます。今後はバーチャル試着で試着した際の見た目を確認するだけでなく、サイズ情報とも合わせてよりオンラインでの服の購入体験がよくなっていくことを目指していきます。私たちのサービスを利用することで、アパレル業界の環境問題対策に貢献できるよう開発を進めていきたいと思います。
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