駅伝回 東洋大学「その1秒をけずりだせ」の言葉の力
今回、取り上げようと思うのは、男子の大学駅伝の強豪、東洋大学です。
今年の箱根駅伝では、青学、東海、国学院 、明治大学に遅れをとって10位に沈んでしまいましたが、その前年までは、11年連続で3位以内に入るなど抜群の安定感を誇っていました。
今シーズンの挽回を私も信じたいと思います。
さて、本日は、東洋大学のスローガンである
・「その一秒をけずりだせ」という言葉に込められた思いや
・その言葉が周りにどんな影響を与えているかについて、
考えていきたいと思います。
このnoteはVoicyの過去の放送を文字に起こしたものです。
東洋大学の駅伝チームの特徴について
まず、このチャプターでは東洋大学駅伝チームの3つの特徴について触れていきたいと思います。
1)戦国駅伝と呼ばれる時代においても安定して好成績をおさめている。
強豪校になったのは、箱根駅伝初優勝を果たした、翌年度の2009年に酒井監督が就任してからです。
就任してからの箱根駅伝での実績はこちらです。
優勝3回、準優勝5回、3位2回と常に3位以内に入る好成績を記録します。
東洋大学を”強豪チーム”にした名監督と言えるのではないでしょうか。
近年は群雄割拠と呼ばれる戦国駅伝と呼ばれ、大学駅伝という特性上、選手が変わっていき通常では浮き沈みがあります。
そんななかで、11年連続3位以内というのは、とてもすごい偉業です。
今年の箱根では、冒頭でお話したたとり、10位に沈んでしまいましたが復活を期待している駅伝ファンも多いのではないでしょうか。
2)卒業後の選手も実績を残しています。
その実績を表すもう一つのエピソードとして、東京マラソンへのチャレンジするために選ばれたものだけが出場するMGC(マラソン・グランド・チャンピオンシップ)では、他校を抑えて、大学最多の5名を排出しました。
そして、東京五輪の内定選手は長距離陸上だけで、3名もいます。
マラソンで服部勇馬選手、競歩で池田選手、川野選手です。
ちなみに、池田選手、川野選手 ともに現在大学4年生です。
これは、陸上で世界で戦えるように選手を育てたいという酒井監督の考えによるものが大きいようです。
監督自身も、実業団の選手としてコニカミノルタで活躍しますが、現役時代にケガをし、「学生時代のときから、しっかり身体をつくって置くべきだった」という後悔からこのような言葉を残しています。
学生時代に心と身体の基礎をつくり、体力のある20代に良い動きで豊富な運動量を積み重ね、勝負できるようにする。世界に出ていくためにはそれが必要だったと感じました
また、服部勇馬選手などのケースでは、在学中に、リオオリンピック代表への挑戦を後押しするなども支援していました。
このような取り組みが、卒業後も活躍し続ける選手が多い理由に繋がっているのかなと思います。
実際、近年では「卒業後に、実業団で競技を続けたいから東洋大を選んだ」という理由で、東洋大学を選ぶ学生も多いようです。
このように、監督の実績 や ビジョンを掲げているから、東洋大学は強豪とよばれ、安定した成績を残せているのだと思います。
3)他校が再現したくてもできない力強いスローガン
安定して好成績を残せる強さの源泉は、「その一秒をけずりだせ」というスローガンにもあるのかなと思いました。
キーワードは、「再現性」「”その”という指示語の絶妙さ」「一秒という言葉」です。
次のチャプターでは、このスローガンが生まれたきっかけ や この言葉の何が強さを生み出しているのかなど、酒井監督の著書「怯まず前へ」を中心に更に掘り下げていきたいと思います。
『その1秒をけずりだせ』が生まれた経緯とこの言葉の持つチカラとは?
さて、当チャプターでは、東洋大学のスローガンになっている「その一秒をけずりだせ」について考えていきたいと思います。
まず、このスローガンですが、2011年1月の箱根駅伝で三連覇に挑むも、早稲田大学に惜しくも敗れて、総合優勝を逃したことがきっかけでした。
その差はなんと21秒の僅差。
2日間にかけて、10区間合計の総距離が217.1キロに渡って行われる箱根駅伝。ホントに、あと一歩届かなかった準優勝でした。
当時について、酒井監督の著書「怯まず前へ」の第一章のチーム作りを中心に深堀りしていきます。
まず、この年度は、設楽兄弟など優秀な一年生が入部した一方で、当時の3年生エース柏原選手は不調でスランプに陥った年でした。
柏原選手ですが、箱根5区の山登りで、4年連続区間賞を誇り、「山の神」という相性で有名な方です。
・1年生の時は、8校をごぼう抜きして、約5分の差を大逆転し総合優勝に貢献
・2年生の時は、6校をごぼうぬきして、4分26秒の差を逆転して、逆に2位に3分36秒差をつける圧巻の走りをしました。
さて、話は戻ります。スランプに陥った柏原選手ですが、それでも少しずつ、箱根駅伝に向けて調子を取り戻していきました。
しかし、例年通りの走りまでは行かず、5区で3位のたすきをうけて、3分の差を逆転して優勝はするのですが、昨年までの圧巻の走りまでは発揮できずに2位につけた差はわずか27秒でした。これでも、ぶっちゃけ凄いんですけど。
この僅かな差が致命傷になり、6区で早稲田に逆転を許してしまいます。東洋大も最後まで粘ったのですが、わずか21秒の差で敗れてしまいました。
当時を酒井監督はこのように振り返っていました。
「エースを活かすチームとエースに頼るチームでは全く違う」
エースの柏原に頼ってはいけない、改めてそう知らされた敗戦でした。
敗戦後、選手から「全員が1秒、1秒を大切にしていれば」と言った言葉が出てきました。
21秒は1人でもなんとかできる差ですが、みんなで背負おうという思いから
「その一秒をけずりだせ」というスローガンが誕生しました。
この、スローガンの凄さについて、私なりに分析しましたが3点あるかなと思いました。
1)他校と差別化出来る、唯一無二のスローガンであること
・他校が真似したくても出来ません。
・でも東洋大学では再現性を持って、全員が取り組める
・東洋大学の在校生が同じ思いで、共感できるストーリーとなっている。
それが、強みであるなと私は感じました。
そして、東洋大学のらしさは、きちんと定着して引き継がれています。
東洋大学の選手の、腕にはマジックで力強く「その一秒をけずり出せ」と書かれています。言い過ぎかもしれませんが、一つのブランドにまでなっているのではないでしょうか。
2)「その」という指示語の絶妙さ
当初は「一秒をけずり出せ」だったようですが、最終的には「その」という指示語を付け足しました。
「一秒をけずりだせで」も充分に理解できる言葉だと思います。それは一秒というキーワードが、具体的な数値であるからです。
しかし、抽象度の高い「その」という指示語を加えるだけで、各自が考える余白を与えたんだと思います。
私の主観も入りますが、「一秒をけずりだせ」と言われても、時間が立つと標語的になってしまって、聞き流されて風化される危険性があります。
しかし「その」って加えるだけで、「じゃあ自分はどうしようか?という主体性が生まれる」のかなと思いました。
例えば、
・終盤のラストスパートが課題であれば、一秒を意地でもけずりだす
・全体のペース配分に課題があるのであれば、各ラップを一秒上げてみようとか
・最初の5kmで積極性が足りないのであれば、突っ込んでみよう
とか、各々が、課題に対して、何をしようかというアクションに結びつけられます。
3)1秒という言葉に表される、がんばればできる手の届きやすさ
なんとか手に届きそうなことなので、毎日実践してみようと思わせる、スローガンなのかと思いました。
ちょっと脱線するのですがこれは、1.01の法則と考えても面白いです。
この法則は何かというと、毎日、自分の力の1%を上積みする努力をすると、1.01×1.01が365日分掛け算されて、37倍になるという考えです。
37倍というのはいうのは極論ですが、
毎日これを意識していて、着実に堅実に実践できているので、東洋大学は、10年以上も3位以内という抜群の成績を残せて、これがチームカラーになっているのかなと思いました。
次のチャプターでは仕事に役立つTipsについて考えていきたいと思います。
Tips 言葉の解像度を意識しよう
今回のTipsはこちらです。
「言葉の解像度を意識してみよう」です。
普段何気なく使っている言葉ですが、解像度を意識してみてはいかがでしょうか?
例えば、この言葉は
・誰のためにとか
・どのように使われるのかとか
・どう思ってほしいのか
・どうなりたいのか
などの意識が大切なのかなと思いました。
ただ、だからといって、常に解像度を高く持つのではなく、
時と場合によって、抽象的な表現に留めるとか、あえて余白を与えることで、相手に感じてもらうとか、そういった事を意識してみてはいかがでしょうか?
このnoteはVoicyの過去の放送を文字に起こしたものです。
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