サンマルコ広場にいた日本語がペラペラのイタリア人とベネチアンガラスの話(旅行の備忘録#3)
ベネチア滞在中、サンマルコ広場は何度も通った。その広場から少しはずれたところで一人のイタリア人男性に声をかけられた。
背が高くて、やせ型の体形。淡い栗色の髪が天然パーマでクリクリになっている。デニムのつなぎをはいていたと思う。
とても流暢な日本語で彼は「千葉県木更津市」の出身とか、東京ではどこそこへ行ったことがある、というようなことを言っていた。
えっ?
千葉県?木更津?
その話し方が妙に軽くて馴れ馴れしくて怪しい。
外国でそんな風に話しかけられたら、ドギマギしてしまってその後の話はなかなか頭に入ってこない。
彼が言いたいことは、要するにベネチアの近くにある離島のムラーノ島やブラーノ島へ行かないか、行くなら舟(たぶん水上タクシーのこと?)を出しているよ、ということだった。客引きだった。
でも怪しすぎて何だか彼の後について行くことはできなかった。
本当はムラーノ島でベネチアンガラスを見てみたい気持ちがあったのだが、水上バス代をふっかけられるとか、買いたくもないお土産を買わされるとか、何かありそうで適当なことを言って断った。
ベネチアンガラスは離島へ行かなくても扱っている店があったので、ベネチアで見てみることにした。
一軒の店に入る。店主らしき男性とその家族なのか従業員なのか友だちなのか、わからないけれども楽しそうに談笑している男性が2、3人いた。
店に入るなり、「日本人か、日本人ならテレフォンカードは持っているか、何枚持っている、どんな図柄だ」と矢継ぎ早に質問が飛んでくる。
「持っているなら、見せてくれ」
当時、日本のテレフォンカードがなぜかイタリアで人気を博していて、集めている人も多かった。
私と夫が財布から何枚か出して見せると、そこにいた男性が皆、興味津々という表情でカードを覗き込む。
そして、2枚ほど手に取り、
「これを譲ってくれたら店の物なんでも安くしてあげるよ」と言う。
私と夫は顔を見合わせて、「えー」となった。
ずいぶんと前のことなので、あまりはっきりしたことは憶えていないのだけれども、夫が出したテレフォンカードはまだかなり度数が残っていた。
だから、ちょっと渋々ではあったけれども「安く」なるというセールストークに惹かれ、私たちは店内をあれこれ言いながら見て回った。
割れ物を海外で買うのは、これが初めてだったと思う。
割らずに無事に日本へ持ち帰ることができるのか心配だったが、色が綺麗で思い切ってこれに決めた。
今にして思えば、テレフォンカードの残りの度数と割り引かれた額との差は、お得だったのか、損だったのかわからない。
思い出も一緒に買ったのだと思う。
それにしても、千葉県木更津市出身の彼について行っていたらどうなっていたのか、私は今でも時々思い出す。
昨年末に書いた記事にその後もぽつぽつとスキをいただいております。
とても嬉しいです。ありがとうございます。
この旅行にはいろいろな思い出があるので、備忘録として記事にしようと思いました。小分けにして投稿しようと思っています。
そうそう、額縁の話↓こちらもこの時の旅行の思い出のひとつです。
最後までお読みいただきありがとうございます。
また次のnoteでお会いしましょう。
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