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想いはツナガル~補助金コネクト~

ビジネスとしてスケールすることを目的としていなかった場合でも、思いもよらぬところからビジネスに発展することもあります。今回はその具体的な事例として、補助金コネクトというサービスが生まれた経緯について記載しています。

実際にビジネスを運営されている方、これから新しくビジネスを始めようとされている方に是非読んでほしい内容です!

困っている人に届け!有志で立ち上げた補助金検索サイト

時は2020年、コロナ禍真っ只中の時代、あるスタートアップのCTO(Cheif Technology Officer)の岩井は悩んでいた。コロナ禍で当初想定したビジネスモデルの再構築にも苦戦していたが、それ以上にとある友人からの相談にどう対応したらよいかということに心を砕いていた。

その友人は音楽教室でドラムの先生をしており、コロナ禍での自粛によって教室に生徒が来られなくなり、ドラムのレッスンがすべてキャンセルになってしまったのだ。このままでは資金繰りに困り教室を閉鎖しなければならなくなる、と。友人の相談を受け、岩井は助ける方法がないかを考えた。

何か良い手はないかと、必死に探しているうちに、国からの補助金が使えるのでは?という答えにたどり着いた。これは友人の助けになると安堵したが、一方で別の疑問も浮かぶ。こんな大事な情報がなぜ必死に探さないと見つからないのか?ということに。
そして、実際に友人にその情報を伝えた後も補助金について詳しく調べるようになった。

すると、国や自治体の情報が乱立していてどこに必要な情報があるかがわからないと強く感じた。知れば知るほどこの情報が検索しにくい、わかりにくいことへの疑問が募った。「全国で必要な人にきちんと届いているのだろうか?」そう思ってスマホを手に取り、省庁に勤めていた友人に電話をした。

「対象者になかなか認知されないから、事業者にはわざわざ使ってくださいと『営業』に行っているんだよね」

省庁勤めの友人からはそんな言葉が返ってきた。やっぱり必要な人に届いてないじゃないか!そう思うと、いてもたってもいられなくなった岩井は、学生時代の友人に声をかけた。
そして個人・事業者が自力で補助金や助成金を調べられる仕組みを作るために、有志のエンジニアグループ「令電会」を立ち上げた。

岩井の課題意識は、事業者が資金繰りに困った際に必要な情報が必要な人まで届かないことだった。官庁や地方自治体が出している情報もバラバラで検索性も非常に悪い。そこでチームに「より情報の受け手目線でまとめられ、かつ検索性が良いサイトを目指そう!」と伝えた。

学生を含む5人で構成された令電会のアクションは早かった。さっそく検索サイトの作成に着手した。ビジネスとしての収益性は一旦度外視し、ボランティアで対応した。困っている人を助けたい、その一心でチームは働いた。そしてサイトが無事に立ち上がった。

しかし今度はこの検索サイトの認知度が低いという課題に直面した。せっかく仕組みがあっても認知されなければ意味がない。補助金と同じだ。岩井含め、チームメンバーは焦り始めた。
そこで知人友人にこのサイトの拡散を頼み、自分たちもTwitterや他のSNSで情報を発信し始めた。それが何人かのインフルエンサーの目に留まり情報が大いに拡散された。いくつかのメディアからの取材もあり、あっという間にサイトへのアクセス数がうなぎ上りで増えた。

見やすさを維持するためサイトには広告を表示しておらず、メンバーが資金を持ち寄って運営、完全ボランティアで実施していたことが反響の一因となった。

「これでようやく必要な人に情報が届けられる」岩井含め令電会のメンバーはこの結果に満足していた。

神戸新聞NEXT|総合|コロナ補助金情報まとめて検索 阪大生らがサイト (kobe-np.co.jp)

検索サイトに寄せられた声から見えたニーズ

2022年の始めになり、この検索サイトは以前のバズりが発生した時ほどの大きなアクセスはなく、岩井はこのサイトの未来について試案していた。
必要な人にもある程度届いたであろうという思いと、コロナの影響も落ち着き始めアクセス数が減っていることや手弁当で運営していたサイトのサーバー代等の費用も掛かっていたからだ。

もし使命を果たしたなら、サイトを閉鎖するのも一案かと思いながら、問い合わせフォームに目を通していた。その中で、目にした1つのメッセージに心を動かされた。

「助けてください!」

という悲痛の声が届いたのだ。内容をよく読むと、補助金の情報は見つけたものの、公募要領を理解して申請するのが難しいというものだった。また、補助金が該当するかどうかも判断できないという声もあった。

このメッセージをきっかけに、岩井は検索サイトだけでは、つまり情報提供だけでは、本当の支援になっていないのではないかと痛感した。全ての人が自分で情報を探し、補助金を申請できるわけではないからだ。

また、数年間のスタートアップのCTOとしての岩井の経験からも、今の検索サイトだけでは特に事業者向けには必要なニーズに応えきれないのではという問いが生まれた。

スタートアップをはじめ事業者の悩みの1つが資金調達だ。事業を続けていく上では欠かせない重要な取り組みである。資金調達の手段にはそれぞれメリデメがある。例えば、補助金は確かに資金調達に寄与する手段の1つだが、補助金は審査があって、計画を出して採択されてからでないと事業がスタートできない。スタートアップのような常に計画が柔軟に変わる会社には補助金は正直言って「使いづらい」。
またスタートアップ界隈では補助金はVCからの資金調達に比べると少額で経営へのインパクトが低いものと捉えられていた。そのため効果が薄いと考えるスタートアップ経営者が多く、補助金の認知度が低い。
一方でリスクを取って新商品やサービスの開発を進めるスタートアップは本来補助金との相性が良いはずだ。そこで、「誰か」がその中継ぎをしてスタートアップが資金調達ばかりでなく事業に専念できるようにするニーズは確かに存在する。

またスタートアップを運営する中で、資金調達以外にも経営に関する様々な悩みがあることを理解した。経営やマーケティング等のノウハウが体系的に得られにくいことも事業者目線での悩みがあると気づいた。

こうしたニーズをうまく組み合わせて事業者向けのビジネスモデルを立ち上げれば、より困っている事業者の助けになるのではないか?岩井は確信を深めた。

そこで岩井は令電会のメンバーにコンタクトして、このサイトを岩井が買い取ってよいかを確認した。メンバーは快諾してくれた。持続的な支援をするためには、手弁当ではなく新たなビジネスモデルを設計する必要がある。真に事業者に必要なサービスを立ち上げたいという思いが岩井を突き動かした。

新事業に生まれ変わった検索サイト、「補助金コネクト」

2022年に岩井は補助金のコンサルティング、申請支援のサービスを開始、その名も「補助金コネクト」。事業として成り立たせるため、事業者向けにターゲットを絞りビジネスを開始した。まずは岩井自身のコンサル会社のサービスとして始めてみた。小さく始めて大きくする、ビジネスの鉄則だ。

補助金コネクト | 会社や事業に合った資金調達支援メディア (financeinjapan.com)

サービスを開始する中で事業として成り立つことが確認できたので2023年の秋ごろから独立した事業として「補助金コネクト株式会社」を開始。

この補助金コネクトでは以前の検索サイトよりも以下の点をアップデートした。

  • 検索サイトとして、ターゲットである事業者に合わせて、制度情報を自動&手動で日々収集

  • 事業者向けに補助金申請や資金調達のノウハウをコラムとして提供。資金調達のみならずマーケティングや経営に関わるノウハウも提供

  • 一方的な情報提供ではなく、申請希望者のための問い合わせ窓口を設置

  • 特にIT化やデジタルマーケティングについては補助金申請に関する会話をきっかけにITコンサルやスタートアップCTOとしての岩井の経験をもとにしたコンサルテーションを実施

  • M&A特に事業継承に関するサービスも追加で立ち上げ

補助金コネクトでは、一人一人、一社一社に対して誠心誠意対応することを心がけサービスを提供し続けてきた。

信頼と実績のある外部事業者と提携し、事業規模や内容に対するカバー範囲を広げている。岩井の専門とするIT以外の領域では、財務会計ファームの事業責任者や製造業の技術開発を事業化する専門家等、豊富な経験を持つ支援者と連携をしている。

こうしたサービス拡充の結果、年間問い合わせ数は1,000件を超え、サービス開始後約1年半で補助金調達の支援実績として5億円以上の実績を上げた。

善意で始めた補助金検索サイトが、持続的な事業者支援を行う新しいサービスに生まれ変わった瞬間だった。

終わりに

今回の記事は、補助金コネクト株式会社の岩井代表へのインタビューをもとに作成しました。

最初に補助金コネクトを立ち上げた経緯から実際のビジネスモデルが出来上がるまでの流れが1人のビジネスパーソンとしても大変興味深く感じました。

当初想定していなかった声からニーズが明らかになり、そのニーズからビジネスを広げていくことの重要性を改めて感じました。また、ビジネスとして立ち上げるうえでの情熱の大切さも。

この記事を読むあなたも補助金に関する情報を必要としているかもしれません。補助金コネクトがあなたのビジネスに役立つかもしれません。そんな方にこの情報が届くと幸いです。

あなたのビジネスの今と未来にコネクトする。


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