ボーは恐れている ネタバレ含む

賛否が分かれると話題のボーは恐れているを観に行ってきた。

この記事はネタバレを含む個人的見解のためまだ観ていない方は読むのをお勧めしません。


アリ・アスター監督の最新作「ボーは恐れている」
ミッドサマーから新しいホラーのジャンルとして気になってしまい、ホラー苦手だがつい観にいってしまった。

映画好きの界隈で大変話題になっているにも関わらず上映時間はとても少ない。
本日伺った映画館でも朝9時からの1本しか上映していなかった。
それでも人は私含め5人ほどしかいなかったので話題にはなるが映画館まで足を運ぶほどではない、と感じる人が多いのだろう。

映画好きの友人達との会話の中で話題にあがり、ひとまず調べてみようとネタバレが含まない感想などを見ていると”3時間の地獄”や”お金を払って何をみせられているのだろう”といった言葉がたくさん並んでいた。
その中に一つ、”でっかいち〇こ!”と書いてあり映画館のバカでかいスクリーンに映し出されるでっかいちんとは何事かと興味をそそられた。


冒頭2時間はとにかく主人公のボウにイライラする。
優柔不断でいつも何かに怯えているので早起きをしお金を払って何を観ているのだろうと私も思った。

主人公の住む町はありえないほど荒れており、薬物をやっていそうな人たちがたくさんおり道端に人が死んでいても誰も気に留めず、怒号と銃声が鳴り響く。そんなところに住んでいてはいつだって落ち着かないだろう。

主人公ボウの母が死んだと聞き葬儀のために実家へ帰ろうとするも様々なトラブルがボウを襲い帰れなくなる。
実家に帰りたいだけなのになんて不運なんだろう…と途中からかわいそうに思ってきた。

母の訃報を聞き傷心で風呂に浸かり見上げると知らない男が天井に張り付いている。
驚いてパニックになったボウは素っ裸のまま路上にいた警察官に助けを求めるも不審者はボウの方で撃たれそうになる。
逃げたボウは車に跳ねられしかも偶然居合わせた殺人鬼に刺されてしまう。

車を運転していた医者の夫婦に助けられ治療してもらうがこの夫婦もどこかおかしい。
親切なようだが娘や一緒に暮らしている精神疾患を患った男がなんとも不穏で最初は普通に見えたもののだんだんと狂気じみたものを感じさせる。

アリ・アスター監督は人間の狂気的部分をとてもうまく表現する。
何とは言えないが何かが変で不安になってくるのだ。

私はわくわくしながらでっかいちんを心待ちにしていたがいまのところチラ見えするものはあれどでっかいと表現できるほどのブツは映っていない。

よくわからない怒涛の展開ので情報の波に押し流されているとところどころに有名映画のオマージュのような表現が使用されいる。
それがなんとも意味深でいかにも重要ですよと言わんばかりの撮り方だが意味があるのかないのか私の頭では到底理解できなかった。
夢のような映像がずっと流れている。
つながっているようで別の夢のような不思議な感覚に襲われてしまう。


そしてラスト1時間で怒涛の伏線回収が始まる。

これは本当に賛否が分かれるのにも納得する。
登場人物全員おかしい。
人には勧めにくいが観た後はなんとも言えない気持ちが心に残る。
不快ではないが爽快でもない。
だがでっかいち〇こは存在した。気なるならぜひ。





※ここからネタバレ含みます。

途中でこれはボウが見ている世界でありきっとボウは発達障害を抱えており強迫観念に縛られているのではないか、という意識が浮上する。

とすればありえないほど荒れた世界にも納得する。
よく考えれば銃声鳴り響きおかしな人間がうようよする町で鉄格子もないアパートメントやお店はありえない。
警察がいるのに道路の真ん中で死んでいる人間に気にも留めないのもおかしい。

車に引かれて病院に搬送されず医者の家で療養することも変な話だ。
医者の家では監視カメラがつけられており、誰かが監視していた。

なんとか実家にたどり着くも葬儀は計らったかのようにすでに終わっており、棺の中には頭のない遺体が横たわる。

母の功績を称える展示物を見てボウはすべて理解した。

母の会社の従業員の顔写真で作ったモザイクアートにアパートの前をうろつく頭のおかしな人間や手当してくれた医者や初恋の女の子までいる。

すべて母の仕組んだことだったのだ。

母は生きていてずっと監視されていたのだ。

母親の異常な愛と発達障害の息子。

母親がすべて悪いかと思えばよく考えるとボウはすべてにおいて受動的でなにも自ら決めることはなかった。
だから悪いことが起きてもすべて周りのせいであり自分は悪くないという自己愛で武装している。

今までの不運も本当は何も悪いことなど起きていないが強迫観念ゆえに思い込んだボウの妄想の可能性だって存在する。

母も息子も行き過ぎた自己愛で破綻へと向かう悲しい物語だと私は解釈する。


母の葬儀の時に流れていた代表スピーチに「モナ(母)はリスが嫌いだった。」とあったが観終わった後よく思い返すと「Mona hated squirrels.」
は「Mona hated scared(モナは怯えが嫌い)」つまりタイトルのボウはおそれているの皮肉だったのではないかなとおもったり。


いろいろ書き出したいことはあるが文字にすると支離滅裂になりそうなので友人達と感想会を楽しみにしておこうと思う。



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